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1:洞穴

 ゲームセンターからの帰路のことだった。

 大体20時頃かな。

 家の近くの路地裏から奇妙な紫色の光が差していたんだ。


 普段誰も通らないような場所から普段見ないような色の光。

 好奇心に駆り立てられた僕は光源を探しに路地裏へと入っていった。


 通りから光が見えるくらいだったからその源もすぐに見つかるだろうと踏んでいたんけど、何故かすぐには見つからず、僕は路地の奥へ奥へと進んでいくことになった。


 道に転がるゴミを足で退かし、吐瀉物を大股で越えて、祭りの後の通りのような、体調に影響を及ぼしそうな臭いの充満している路地を先へと進んでいった。


 1分程経った頃、袋小路で光源を見つけた。

 妖しい紫色の光を発しているのはサイバーパンクな雰囲気の扉だった。


 形状はまさしく扉であるのに、ただそれだけがぽつんと立っていて、扉としての機能は一切果たしていないようだった。

 電子回路のような意匠が施されていて、僕が惹かれるまま(おもむろ)に手を伸ばすとそれが強い白色光を放って────


「────気がつくとここにいたんだ。ちょっと長くなったけど、結局のところこの場所についてはほぼ何もわからないってことだね。僕が話せるのはこのくらいかな、君の方はどうしてここに?」


 僕は記憶にあることを包み隠さず話し終えてから女の子との会話に備えて練習した笑みを浮かべ、目の前で立ち竦む少女の発言を促した。


「い、いえ、私も同じで、気がついたらここに」


 混乱しているのか、少々たどたどしい口調で返される。

 表情のコントロールも上手くいっていないようで、所々顔の筋肉の動きが不自然だった。


 まあ平常心ではいられないだろう。

 普段通りの生活を過ごしていたはずなのに────いきなりこんな仄暗い洞窟の中に放り出されてしまったら。



 目を覚ますと僕たちはおよそ現代の埼玉に存在するとは思えない場所に居た。

 苔生した灰色の岩肌が視界いっぱいに広がっており、天井からぴちゃぴちゃと垂れている雫が作ったのであろう、違和感を感じるほどに透き通った水溜りがところどころに存在する。

 これだけならまあどこかしらの鍾乳洞にでも拉致されてきたのだろうと考えられなくもないのだが、そのような考えを点在する松明が払い除けていた。

 松明だ。

 どこにだって電気が通っているような今時分、誰もこんな前時代的なものをわざわざ利用しようとは思わないだろう。

 僕らを除けばまるで人の気配がないにもかかわらず、一つとして火の灯っていないものがないのも不気味な点だ。


 この場所がいったいどこなのかという問いはここで黙って考えていて答えがわかるようなものでもなさそうなので、僕は洞窟内を探索することに決めて奥の方へと歩き出した。

 後ろ側は行き止まりになっているので、今のところは一本道であり、進む道に迷うことはない。


「あっ、行っちゃうんですか?」


「ずっとここにいてもしょうがないしね。君も一緒に来る?」


「……行きます」


 表情には決して出さないが、その言葉を聞いて僕は内心狂喜乱舞していた。

 なんなら覚醒した瞬間からだ。


 なぜならこの少女が、端的に言ってかなり可愛いから。

 こんな状況であるが、僕が人間として生まれ持った欲望、その性の部分が今の僕の思考をほとんど支配していた。


 制服こそ着ていないが歳はおよそ高校生くらいだろう。整いすぎた顔立ちにそれを引き立てる肩までの艶やかな黒髪。髪質からか眼光からか、俯瞰すると鋭さが感じられる。

 身長は僕より10cmと少し低い160くらいだろう、女の子としては少々高めだ。胸のサイズはCくらいだろうか。

 大きいものも勿論好きだがこのくらいの、それなりの大きさでありながら慎みの感じられるサイズも悪くはない。むしろ年齢を鑑みればこのくらいの大きさが一番興奮するかもしれない。

 黒を基調とした服から覗く痩せすぎていない健康的な長く白い肢体は僕の情欲を掻き立てる。

 誰が見たって可愛いだろうが、僕の好みとも完全に合致する。


 今すぐ襲ってしまいたい、力尽くで、暴力で、取り返しのつかないことをしてしまいたいという衝動が僕から溢れかけていたが、それをおくびにも出さず、誤魔化すように紳士的な笑みを浮かべておいた。


 こんな状況だ、仮にここで襲ったとしても誰からも咎められないかもしれない。彼女自身もあまりそういったことに抵抗できそうな女の子には見えない。

 そんな中で僕が彼女に襲いかからないのは僕の倫理観がしっかりしているからだとかいうご大層な理由でもなく、単純に趣味趣向の話だった。まあモラルもそれなりにあるほうだとは思うが。

 僕は和姦が好きなのである。


 欲望をさらに強い欲望で上書きするような俗な思考を重ねている僕に、少女が声を掛ける。


「ここは扉の中の世界……なんでしょうか?」


 扉に触れる、ということがここに至るきっかけ(フラグ)であったのは間違いないだろうが、何分情報が少なすぎて、今はそういったことを議論できる段階にない。

 それがわからないようにも思えないので、彼女としても不安を紛らわせるために世間話として問いかけた、くらいの感覚なのだろう。


「さあね。そういうファンタジックな世界なのかもしれないし、ドアに触れた瞬間気絶してどこぞの私有地にでも連れてこられたのかもしれない。もしかしたらドッキリでも仕掛けられているのかもね。何もわからないんだ、他に人の気配もないし、とにかく先に進まないことには始まらないと思うよ」


「そうですね……」


 普段は積極的な意思決定を行うタイプでもないのだが、頼れる男を演じながら進んでいく。

 実際に頼れる男に見えているのかどうかは微妙なラインだがこんな状況だ、吊り橋効果だなんだも手伝ってここを出る頃には僕に惚れ込んでるに違いない。あまり女性経験があるほうではないが、どこからか自信が溢れていた。

 この少女は怯えている。客観的に見れば、どちらかというと洞窟に放り出されたこと自体よりも、面識の無い男──生物の構造として肉体の持つ力において自分を凌駕する存在であり、生物の構造として自分に欲望の矛先を向けてくる存在──と二人っきり、という状況のほうに怯えているような気がしなくもない。

 しかし、僕の顔や体躯はあまり恐怖感を与えるようなものでもないはずだ。

 彼女が僕に向ける視線にどこか僕という人間、あるいは男性への嫌悪や怯えが含まれているように見えるのはきっと杞憂だろう。そのはずだ。

 世の中結構なことが見た目の印象で決まるはずだ。僕が以前読んだ雑誌にはそう書いてあった。あまりに希薄な根拠に思えるが、そう思っている人間が一定数いるからこそその雑誌の記事が掲載され、僕の目に留まったのだろう。それを考えれば、あながち馬鹿にできたものでもないはずだ。

 仮に杞憂でなかったとしても、状況的に多少仕方ない部分はある。



  あらゆる生物の気配が感じられない、先の見えない暗い洞窟の中を、一歩一歩進んでいく。

 舗装などされていない、荒れた道を歩くという行為は、それだけでインドア派である僕の体力を恐ろしい速度で消耗させていく。


 最初こそ僕もなかなか気が動転していたが、非現実的な目覚めに反してそれ以降何も起きず、加えて隣に可愛い女の子もいるので緊張のほうは解れてきた。

 僕の至上目的のため、この子とのコミュニケーションでも進めておくことにする。


「君、高校生? 名前は?」


「埼川女子高の2年生で、伊丹千紗(いたみちさ)って言います。……あなたは?」


「千紗ちゃんね。僕は佐藤マイケル、大学生だよ」


「……マイケル?ハーフなんですか?」


「母がイギリス人でね、どうしてもこの名前を付けたかったみたいだ」


 これは僕の本名ではなく、今考えた偽名だ。

 マイケルがイギリス人の名前なのかどうかも知らないが、ハーフであるということが女の子を口説く時に役に立つということはよくよく知っている。


「言われてみれば……そんな顔してますね」


 ちょろい。勿論僕は純日本人だ。……もしかしたら朝鮮あたりの血が紛れているかもしれないが。


 千紗ちゃんがあの女子校の生徒だった、ということは、少しだけ扉についての真実に迫ることのできる情報だ。

 埼川女子は僕の自宅付近にある県立高校だ。別々の場所で別の扉に触れたのかもしれないとも思っていたが、それを聞くに同じ場所から飛ばされてきた可能性が高い。


 また僕の好みの話になってしまうが、あの高校はなかなか頭のいい子が多いところだ。彼女も相応に勉強ができるのだろう。

 ますます魅力的に思えてきた。


 和姦だとか言っている場合じゃないんじゃないのかと心の中の悪魔が囁きかけてくるが、地元の不良に皮肉混じりとはいえ歩くモラルとまで呼ばれた僕がそんな誘惑に屈するはずはなかった。

 そういえば夕方ゲーセンで粉々にした対戦相手をチンピラみたいに散々煽っていた気もするが、あれは心を折ってもっとまともな事に時間を使わせるためであり、非常に道徳的な行為だと言えるだろう。



 歩くうち、地面に小さなクレバスのような隙間を見つけた。幅は精々2メートルといったところだろうか。

 何の障害にもならない。軽く飛び越える。

 千紗ちゃんもスカートをはためかせながら難なく飛び越えていた。女性の身に付けた衣服が靡く様子というのはどうして僕の目にこうも魅力的に映るのだろうか。


 雑談を交えながら更に先に進んでいく。


「女子校での生活ってどんな感じなの? 少女漫画のお嬢様学校みたいな光景が広がっているのかな」


「動物園にいるオランウータンを想像してください。あれが一部屋に30人集まっているような状態です。慎みや上品さなんて欠片もありません……私としては色々気楽なのでむしろ助かっているんですけどね」


「そこまで言われると逆に興味が湧いてくるね」


「想像している以上に汚いですよ」


 オランウータンの群れの生活を結構正確に想像していたつもりだったのだが、これ以上となるとさすがに僕の出来の悪い頭では処理できない。念を押すあたり余程なのだろう。


 既に10分くらいは歩いただろうか。ほとんど変わらない景色に少し飽きさえ感じた頃。


 通路の先に何かの影が見えた。


 はっきりとは確認できないが、少し異様な形をしているように思える。


「何かいる。隠れて」


「へっ、んっ!?」


 囁くと同時、僕は千紗ちゃんの腰に左手を回して抱き寄せ、右手で口を塞ぎ、壁の窪みに隠れる。

 正直これがやりたかっただけであり、本当に隠れる必要があったのかどうかは微妙なところだ。

 やや汗ばんではいるが、それ故か、多少の遺伝子情報を含んだ女の子特有の匂いが僕の鼻に届き、少々の多幸感をもたらす。若干興奮してきてしまった。

 千紗ちゃんのほうは少し赤面している。

 薄々感付いてはいたが、その優れた容姿にもかかわらず、あまり男慣れしているわけではなさそうだ。


 その影はゆっくりと近づいて来るが、こちらに気付いている様子はない。

 そして、その姿が顕になる。


「なんですか、あれ……。ゴブリン……?」


 千紗ちゃんが小声で言った通り、現れたのはまさに物語に出てくるゴブリンのような姿をした生き物だった。

 体色は深緑色で、醜悪な子供のような見た目をしている。

 小柄な割に異様な筋肉が付いた体躯には腰巻きだけが身に付けられており、その手には棍棒が握られていた。


 棍棒。

 何かを撲殺するための得物。殺意剥き出しの装備だ。


 ここが誰かの意図によって作られた電脳空間なのか、無意識の集合が生み出した超常現象なのか、そんなことまでは僕には知りようがなかったが、しかしそいつを見た瞬間に、現代のあらゆる娯楽に染まった僕にはおおよそこの場所がどういうものなのか理解できていた。


 少なくとも、僕に非日常のファンタジーを齎してくれる場所なのだ。

 洞窟で目覚めた時点ではそこまでわからなかったわけだが、ゴブリンなんていう異物の存在をこの目で捉えた今、この高揚は必然だった。


 繰り返すが、僕は興奮している。

 もしかしたら千紗ちゃんを抱き寄せた時よりも。

 現在進行形で抱きしめてもいるので相乗効果で非常にハイになっている。

 服越しに伝わってくる彼女の早い鼓動も僕の感情を掻き立てる。


 ゴブリンの聴覚がさして鋭くないということにはこの静かな洞穴で先程彼女が出した声に反応しなかったことからおよそあたりをつけていたが、音を立てないに越したことはないので『君の胸が高鳴ってるのは僕に恋をしてるからなんだよ』などと譫言を述べて錯覚を導くのはやめにしておいた。

 命あっての物種だ。

 ゴブリンに僕らの命を刈り取るほどの戦力があるのかどうかはまだわからないが、あのこの世の理に則っているとは思えない馬鹿げた筋肉量である、僕らの頭蓋なんて林檎みたいに握り潰されたとしてもなんらおかしくはない。


「ちょっと待っててね」


「……は、はいっ」


 呼吸を乱しながら千紗ちゃんが答える。

 それを見るとまた体に熱が巡ってしまうが、劣情を振り切り、ゴブリンの方へと意識を向ける。


 僕の覚悟はとっくに決まっていた。

 既に僕らから4mほどの距離まで近づいていたゴブリンの視線が逸れた瞬間、床を思い切り蹴り、壁の窪みから勢いよく飛び出す。

 ゴブリンはひどい悪臭を放っていて、三歩ほどの距離まで肉薄したところで僕は思わず顔を顰めた。


「ギイッ!?」

 

 反応された。金属が擦れる音のような不快な鳴き声を漏らす。だが遅い。僕はそのままの勢いで足を前に突き出し、その低身長からちょうどいい位置にあったゴブリンの顔面に靴底を打ち込んだ。所謂ヤクザキックのような形になる。

 あまり格好のいいものではないが、元々体を動かすような人間でもないし見栄えは犠牲になっても仕方がない部分だろう。


 プギュッと呻き声を上げたゴブリンは2mほど吹き飛び、床に触れるとゴムボールが如く派手にバウンドしながら転がっていった。

 筋肉質なその体躯から想像していたより大分軽いようだ。

 いや、これは僕の体が変になっているのだろうか。

 力が漲っているような感覚がある。


 床に突っ伏して呻き声を上げるゴブリンにはもう既に動く気力がないようだが、まだ息はある。


 落としていった棍棒を拾うと一歩、二歩とゴブリンの元まで歩いていき、それを大きく振りかぶり脳天に打ち付けた。

 体表と同じく緑色の脳漿が散乱する。


 地面が砕けたところも見るとどうもおかしいのは僕の力のほうみたいだ。

 ゴブリンの手足はまだピクピクと痙攣しているが、既に命はないだろう。


 周りを見渡しても次が出てくるような気配はないので、ひとまず安全が確保されたとみて僕は千紗ちゃんに声をかけた。


「終わったよ」


「ひっ……」


 露骨に怯えている。僕としては僕の有用さを見せたくらいこつもりだったのだが、さすがに人型の生き物の頭を躊躇もなく砕くのはやりすぎだったらしい。

 勢いに任せてやってしまったが僕としてもここまでグロテスクな現場にするつもりはなかったし、自分でも若干引いている節はある。


 それと、今の僕からはひどい悪臭がするということも千紗ちゃんの顔を顰めさせることに一役買っているだろう。

 ただでさえ臭いゴブリンの中に詰まっていた血肉はとんでもない異臭を放っていた。

 しかし、そこには変な現実感もある。その現実感は僕に更なる高揚を齎す。


「あっ……いや……ありがとう、ございます、助けてくれて」


「どういたしまして」


 あっさり終わってしまったので礼を言うほどの危機という感じもなく、言葉から取ってつけた感じが見えなくもない。しかし、近所のおばちゃんみたいな評になってしまうが、お礼をちゃんと言える子はいい子である。

 素敵な気分になれる飴でもあげたいところだったが生憎今は持ち合わせがなかった。


 いや、口では感謝を示すような素振りを見せてはいるが、その目から感じ取れる怯えは悪化していた。やはり少々野蛮すぎたかもしれない。

 何か言った方がいいだろうか。


「えーっと、色んな創作物でゴブリンは人を殺すのに躊躇いがないって設定を与えられてることが多くてね、棍棒を持ってたし危険だって判断したんだ」


「そう……なんですね、私ゲームとかもあんまりやらないし、よくわからなくて」


 こちらへの視線に若干だが柔らかさが戻ったように見える。

 後から考えた適当な判断基準を述べるだけの適当な釈明だったが効果はあったようだ。

 僕も最近はあまりゲームをせず、活字もあまり読まないため、ゴブリンの生態なんて検討もつかない。

 人間の女を苗床にして繁殖するみたいな話はよく聞く気がするが僕はデリカシーのある人間なのでこの場では言わないでおくことにした。



 本当に敵対しているのかどうかもわからないゴブリンに躊躇なく襲いかかった理由。


 それは、自分の身や千紗ちゃんを守りたいという感情以上に、ゴブリンが人間に害をなすような生き物だと根拠もなく感じたから、殺していい生き物だと思ったから、興奮を抑えられなくて飛び出してしまったというのが実際のところなのだと思う。


 どうにも自分にはそういう嗜好があったようだ。

 思い返せば、小さい頃は蟻を解体することをとても好んでいた気がする。猫を殺すなどといったところまではいってなかったが。


 よく聞く話だ。

 誰にだってある衝動なのだろう、なんらおかしな話ではない。


 ゴブリンを殺したくなるという事はゴブリンなんてものが普通存在しないという点を鑑みなければ至って普通の衝動に違いない。


 かつてプレイしたRPGの中でレベリング作業をするのも好きだった。

 格下の怪物を蹂躙する作業だ。

 その延長のような感覚でもあるのだろう。



 フィクションのゴブリンはなどと言ったが、そもそもここはこのリアルな感覚からしてゲームだとかではなさそうだ────と、そんなことも考えていたのだが、ゴブリンの痙攣が止まった瞬間鳴り響いたファンファーレとゴブリンの血肉の蒸発に僕の思考は覆された。


「えっ、何?」


 隣で驚き、訝しげに虚空を見つめる千紗ちゃんをよそに僕は視界の中央に浮き上がってきたウィンドウに目を凝らした。



 『Lv0⇨1 SP +5』と表記されている。



 ゲームかよ。



 いやまあゲームそのものではないのかもしれないが、かなりゲーム的なシステムだ。


 普段無意識にブレーキをかけていた衝動を解放した快感に浸っていた僕はそれを見て一気に自分の熱が冷めていくのを感じていた。先程まで感じていたはずの現実感が薄れてきている。


 潰したゴブリンも消えた。僕は今人生で一番落胆してるだろう。幼馴染に振られたあの時より志望校に落ちたあの時より落胆している。


 肩を落としたが、何が見えているのか隣で可愛らしくころころ表情を変えている千紗ちゃんを見ていると少し気が紛れた。

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