ある意味最恐の味方がやってきました百人力〜〜
召喚の間にいるのは、陛下と俺。そして女の三人だけ。
召喚できなかった時のことを考えて、臣下は全員下がらせたのだ。
「ではこれより、召喚の儀を執り行う」
陛下の言葉で、床に描かれた魔法陣が光り出した。
「我、ルカリア・マーサントスの名において、我ら王族に近しい者としてロイ・アルバートに召喚の儀を行うことをここに許可する」
ブオッ、と激しい風が室内に巻き起こる。
それに圧倒されまいと、足を踏ん張る。
「さあ、お前の出番だ。アルバートよ」
頼んだぞ、と微笑む陛下に力強く頷いて、俺は召喚の書を高々と掲げた。
そしてーーー。
「出でよ!!異世界の救世主!!!」
声高にそう叫ぶと、途端に風が強くなり、目を開けていられなくなった。そして、一気に魔法陣が輝いた。
暖かな光を放つそれに、俺は一心に願った。
(どうか、どうか救世主を我らにーー)
できることなら筋肉隆々で、強い精神力を持つ、そんな救世主を我らにーー!!!
……風が、止んだ…?
光が静まり、あたりが元の薄暗い部屋に戻る。
(救世主は……!?)
はやる気持ちで目をこすると、ドンッと肩を叩かれた。
「やった…!やったぞ、ロイ!!」
「へ?」
「召喚に成功したぞ!!」
興奮が隠しきれない、といった様子で話す陛下が、魔法陣を指差す。
その真ん中には、俺が一心に願ったまさに理想の権化といっても過言ではない姿の救世主が立っていた。
短く刈られた髪に、一瞬怯んでしましそうになるほどの鋭い瞳。黒のタンクトップから伸びる腕は丸太のように太く、筋肉の山がいくつもできている。
「や、やった…」
全身の緊張が解けて、その場にしゃがみ込む。
やった、やったぞ……!
成功したのだ!
しかも理想の救世主がやってきた!!
これであの女に頼らなくて良いのだ、陛下もきっと目を覚まされる!!
流れそうになる涙を拭いて立ち上がると、俺は新たな救世主に向かって手を差し出した。
「よく来てくれた!異世界の救世主よ!!」
我らとともに、戦ってくれ!!
きっと、きっとこの救世主なら、その黒く健康的な肌とは対照的な白い歯を見せて笑い、「もちろんだ」と熱い握手を交わしてくれる。
そう思った。そう思っていたのだ。
だが、その理想は呆気なく砕かれた。
「やだぁ〜〜〜〜、何事ぉ〜〜〜〜!?!?」
理想の救世主の口から出たのは、甲高い声。
「あ、オネェだ」
隣で女が、そう呟いた。