宝箱と 恋の成立
再び もとの 姿に戻ると、守護精霊が 状況を 説明してくれた。
ー仮設の神殿で 月神祭を行うと 噂を流し、闇を 引き寄せ 浄化する予定だったのに・・・
焦ったアイツは 勝手に動きやがった。
おまけに、ひよこ姫に ちょっかいを出しちまった上 思わぬ邪魔が入って 全てが ぱあに
なっちまった。
まったく、恋にいちずなやつほど 厄介なものは ねえというのに。
どいつも こいつも へたれてやがる!
「ひよこ姫?邪魔?ぱあ?
フィー、もっと わかるように 話してくんない?」
その会話を 聞いていた 精霊王が 思わず 吹き出して 大笑いを 始めた。
ー恋にいちずなやつほど ヘタレだって?
よく そんなことが 言えるな、フィーりん。
想いを打ち明ける勇気もなかったくせに、 彼のことを 悪く言うのは 如何なものかな?
精霊王に ズバッと指摘され、スッと 顔色を変え そっぽを向いて フィラリエラは 黙り込んでしまった。
代わりに 苦笑いを浮かべながら、精霊王は 語り始めた。
ーひよこ姫とは、アニーアングレイシア姫のことだよ。
まだ 銀鈴の乙女として 覚醒していないから 半人前という意味で ひよこなんだ。
でも 力は かなりのもので、初代の彼女に匹敵するか、それ以上かもしれない。
しかし、覚醒の条件は 愛するもの犠牲が必要だ。
彼ーライオネリアス君は 彼女のおもいびとだけど、登場してもらうのは 浄化直前の予定だった。
だが、闇の暴走から 彼女を救うため 我が身を 投げ打ってしまったんだ。
「今 覚醒できないのですか?」
精霊王は 厳しい顔つきで 答えた。
ー無理だ。
精霊ならまだしも、ヒトである君たちが 闇を封じるには 満月の力を 利用するひつようがある。
幾ら 力があるとはいえ、所詮 ヒトの力には 限界が
「じゃあ、あなたが 浄化して下さい!!」
突然 大きな声で サイフェリアローズが 叫んだ。
「王様なんでしょう!だったら 何でも できるはずじゃないですか!
精霊って、ヒトを 見護るために 存在しているんでしょう!
だったら 私達を 振り回さないないでくだ」
ぱしん。
一瞬 何が起こったのか わからなかった。
だんだんと 左の頬に 痛みを感じ、叩かれたのだと ようやく 理解した。
叩いたのは・・・
ーいい加減にしろ!
それ以上 こいつを批判するのは 許さない。
これでも 俺達の 王なんだぞ!
きっと 守護精霊を睨みつけ、一言。
「ミムメモ!」
冷たい空気が あたりを 埋め尽くす。
ーふふっ、それ もしかして “まぬけ”って ことかしら?
ひときわ 涼やかな声が フリーズした空気を 解かす。
振り向いた一同が 思わず 目を大きく 見開き、その姿を 目にして 驚きを ぜんかいにする。
その 反応を 楽しむかのごとく、当の 本人は 笑顔を浮かべたまま こちらを
見つめていた。
ー・・・・・・・アルテイナ。
小さく つぶやいたのは フィラリエラひとり。
ーごきげんよう、光の君。そして 我らが長殿。
そこに 立っていたのは、癒やしの力を司り、闇を 浄化出来る 唯一の精霊ーアルテイナその人だった。
ー私が 闇を 浄化しましょう。