宝箱と 恋の成立
ぼんやりとした 視界が、一瞬 明るい茜色に 染めあがる。
まばたきし もう一度 目をこらすと それは ヒトの形を とる。
ここは、はざまの森。
精霊界と ヒトの世界の 架け橋となる地。
時の流れぬ この地で、 もう どのくらい 過ごしているのだろう?
守護精霊に 導かれるまま この地に たどり着いたのだけれど・・・
ー久しいな、サロ。
元気だったか?
茜色の髪をした その美丈夫が 深い響きのある言の葉を 送ってきた。
「…あのおう、どなたさんで ござんすか?」
ー・・・おまえ、相変わらず 意味不明なこと 言ってやがる。
おれっちが 分からないのかい?
まあ、獸形解いて この姿で会うの 初めてだから 無理もねえか。
俺だよ、フィラリエラだよ。
「うっそおお、フィーは ひとじゃないよ、わんちゃんだもん」
ーお前!なんつうこと 言ってやがる!
俺のどこが わん公に みえんだー
どすん。ギユウウウウ。
思いっきり 抱きしめて、その胸に スリスリを 繰り返す。
「ふぇえええええん、ふいいいい~!
さみひかったよおお~」
やっぱり おれの 愛すべき守護者は、泣き虫の ヘタレちゃんだった。
頭を グリグリなで回しながら、そっと 謝罪の言の葉を 紡ぎだす。
ーゴメン。
ー感動の再会を 邪魔して悪いが、時間が ないんだ。
いい加減に 離れてくれないかな。
威厳のある 通る声が 聞こえ、思わず パッと 離れる。
声のしたほうを ふりむくと、
見知らぬ 男のひとが 苦笑いを浮かべながら こちらを 見つめている。
「タレ?このしと?」
まだ 涙でぐしゃぐしゃの顔のまま 問うと、苦虫を噛み潰したような顔で
ぼそっと つぶやいた。
ー俺たちの 頭さ。
俺を 強制変換しちまった わるいやろうだ。
ー私の 息子の姿を まねておきながら その言い方は 納得いかないね、フィーりん。
ーその名で呼ぶな、あほう!
「っえ、フィーりん?それが 真名なの?」
ーちげーよ、ぼけ!
男の人は はっはっはっと 愉快そうにわらうと、静かに 語り出した。
ー私は 精霊の王だよ、お嬢さん。
出てくるつもりは なかったんだが 緊急事態が起きてね、
君の力が ひつようになったんだよ、今すぐに。
だから、彼を 強制的に 呼び戻したんだ。
さあ、もう一度 彼女に守護を 与えてもらおうか。




