宝箱と 恋の成立
「月光の洗礼って、何ですか?」
若様を お姫様抱っこして歩く 友の後ろ姿を 追いながら、
疑問を ぶつける。
「銀鈴の乙女から、癒やしの言の葉を 授けられることよ♡
闇は 銀鈴の 力を 恐れるから、言の葉が 授けられたものに 防御を
施すの。
でもそれは、完全に 覚醒した時の 話。
今の あの子は まだ 不完全だから、愛する人を 守りきれなかったの。
もっとも 覚醒の条件は・・・」
そこで、群青色の精霊は 黙り込んでしまった。
でも、あたしは 知っている、その 条件を。
月神殿の巫女なら 誰でも知っているというほうが ただしいのかも。
そう、初代の 銀鈴の乙女の 話は そんなに
ロマンチックでは ない。
覚醒する前、その おもいびとは 愛する人を護るため
みずからに 終止符を 打つことを 選択したのだから。
“愛する人の 犠牲があって、初めて 覚醒する力”
それこそが 闇を 断つ 力を 目覚めさせるのだ。
もちろん、覚醒すれば 愛する人も 救えるのだけれど。
こんな 中途半端な 結果の場合、
どうしていいのか だれにも わからない。
ーアルテイナ様。
あなたは 何を お考えなのでしょう?
見上げた月は 満ちるまで あと 少し。