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宝箱と 恋の成立

闇を 浄化し、祖国を 再建する。

そう決意したものの、いまだに ぐずぐずと ここに とどまっていた。


しかし 転機は 突然訪れた。



その日は 酒場を訪れる客も少なくて 珍しく 暇だった。

カウンターを陣取る 女性客もなく、変わりに 酒好きの給仕係が 酔いつぶれていた。


「そろそろ 店じまいに するか」


暇を 持て余した店主が そう声を かけたとき、ひとりの 女性客が ふらりと入ってきた。


「すみません、もう店じ・・・」



そう 言いかけた店主の声が 途中でとまる。

青銀色の髪は 美しく腰までなびき、暁の前の群青の瞳は みるものを 深い感情の泉へと いざなう。

すらりとした 肢体からは 想像できないほどの 力強い声が 発せられた。



「ここに “銀鈴(ぎんれい)の 姫御子が おいでか?」

「ぎんれい?それは 何で…」

「います。ここに います!」



店主の 問いかけを 遮り、凛とした 声が 響く。


「アーニャ、おまえ、 何か 知っているのかい?」

「ごめんなさい、おやじさん。実は 私は」


「だめだ!もう どこにも 行かせないぞ!!」


叫び声とともに、二人の間に 割り込んできたのは、近頃 女性客を 騒がせている 無愛想な若者だった。


「イオ!」

「こいつは 俺の 婚約者だ。だれにも 渡さない!」

「そこを おどきください、ライオネリアス様。私は ウォリアル様とともに 参ります」

「さすが、巫女姫殿。私のことを ご存知だったのですね」


ウォリアルと呼ばれたその人は、にっこりと 微笑んだ。



「ウォリアル?誰だ おまえは!エスフアルダ国のものか?」

ふーっと 深いため息とともに、耳元で 甘く 囁かれた。


ー健やかなる 深き眠りへと 誘わん。

 (まなこ)閉じたまえ



どさっ。


立ちふさがっていた 若者が、床に 崩れ落ちた。

「ゴメンナサイ、若様」


しゃがんで そっと 声をかける。


「さすがですね、もう 覚醒したのですか?」

「ええ、やっと 力を操れるように なりました。」

寂しげに微笑むと、すっと立ち上がって 呆然としている 店主に向かって 真実を 告げる。


「私は エスフアルダ国の姫巫女アニィーアングレイシアです。

 これから 使命を果たしに いかなくてはなりません。

 おやじさん、 本当に お世話になりました」


優雅に お辞儀をして、にっこりと 微笑んだ。

言葉がでない 店主に向かって、寿ぎの言の葉を 送る。


「皆様に 心やすき日々が 続きますように」


リーンリリン、リーンリリン。リーンリリン、リーンリリン。


涼やかなる 銀鈴(ぎんれい)の音が響きわたり、心と体が 浄化去れてゆく。




ふっと 気がついた時には、二人の姿は 消えて、銀の光粉が 輝きの名残を 残すのみであった。



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