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回想

16話目

盆休み最終日なので、昨日に続いて連日投稿します。

主人公の回想話。

ちょっと? 結構? 重いかもです

 賭けの清算の翌日、俺は自分の檻の中で考えていた。

 何で俺はココにいるんだっけ?

 確かに前世の記憶は有る。ヒトだった。ただのサラリーマンだ。

 33年分の記憶と言ってもたかがしれてる。

 今の所、ラルと名乗った俺の記憶の部分が少なすぎないか?

 まだ13だからとかそんなの関係ない。俺の記憶なんだ。思い出さないと。

 昨日話をした時も、クロと話をした時も、何故か心が疼くんだ。

 そう、約束、この言葉を言う度に何か疼く。

 幸い一人の時間が多いから、考える時間くらい取れる。

 ゆっくりで良い。ちゃんと思い出さないと。


 確か、俺の生まれは、日本の……いや違う、コレは前世だ。

 ラルとしての記憶。あれは、たしか小さな集落だったな。

 父さんと、母さんと……あれ? どっちもヒトの顔してる?

 まあ、どっちかが変身してんだろ。それとも両方変身してるか、だ。

 んで、年の離れた兄ちゃんと、俺、後、小さい妹。

 何だ? 普通じゃないか。いや、俺だけ普通じゃないな。

 俺だけ顔が狼だし。兄ちゃんも妹も普通に人間だ。

 父さんも母さんも人間だよな? 何で俺だけ? もっと深く思い出してみよう。


 あそこの集落は、いいところだったんじゃなかったっけ?

 ヒトも、獣人も、周りにはいろんな種族がいたはずだ。

 森に近いこともあって、たまにエルフもいたっけ。

 でも、みんな仲が良くて、隣近所で助けあいながら生きてた。

 そうだ、確か俺の母さんが人狼だったんだ。

 俺が7歳くらいの時に聞いたんだ。

 何で俺だけ毛むくじゃらなんだ? 犬みたいな顔なんだ? って。

 母さん少し悲しそうな顔してたな。それで、優しくこう言ったんだ。

「犬じゃないよ、オオカミなんだ。母さんもラルと同じだよ」

 そう言いながら、オオカミになったんだ。思い出してきた。

 そう、父さんは人間だ。母さんが人狼だったんだ。

 俺だけが兄弟の中で人狼だったんだ。

 それでも、父さんと母さんは他の兄弟と変わらずに接してくれてた。

 集落のみんなも、俺が人狼でも関係ないみたいだ。

 小さな集落だったからかな? 獣人もたくさんいたからなのかな?

 俺や母さんが人狼でも関係なかった。みんな良いヒトばかりだったな。

 確かに貧乏だったかもしれない。何も不自由してなかったハズなのにな。

 何か有ったのかな?

 そこら辺を思い出そうとしてみても、何故かノイズが入っているみたいにうまく思い出せない。

 しっかりしろ、俺の記憶だろ。ラル、お前も思い出すようガンバレ。

 ノイズが少し晴れたな……そうだ、何年か前に……不作の年が続いたんだ。


 集落の畑から作物が取れなかった。

 森からの恵みも少なかった。

 最初の1年目は蓄えが有ったから年を越せた。

 2年目も、ギリギリだったが集落のみんなで協力し合って越せた。

 3年目、3年連続で不作になるなんて今までなかったはずなのに。

 この年はひどかった、春を通り越していきなり夏が来たみたいで。

 日照りがひどかった。雨がなかった。井戸が枯れた。

 水を持ってくるのは俺の仕事だったっけ。

 井戸から汲み上げていた水が取れなくなったら、近くの川まで水を汲みに行った。

 川の水が少なくなれば、エルフの人に手伝ってもらって森の中の泉にまで行ったんだ。

 それでも足りなくて。年寄りと子供から元気がなくなっていったんだ。

 それで、そうだ、集落の人が倒れたんだ。

 近くに住んでる人だった。

 ソイツと俺は同じくらいの子供だった。

 ソイツはよく笑ってた。家が近いこともあってよく遊んだ。一緒にイタズラもした。

 ソイツと俺とはかなり仲が良かったんだ。

 俺の父さんとソイツの父さんも仲が良かったはずだ。

 イタズラした時は、どっちかの父さんに同じように叱られたっけ。

 ソイツが家から出て来なくなったんだ。

 何だよ、昨日まで一緒に水汲みに行ってたじゃないか。

 大変だけど、一人で行くより、お前と一緒に行けば楽しかったのに。

 ソイツの家に行って寝た状態のソイツに言ったはずだ。

 早く良くなれよ。また遊ぼう。約束だ。ソイツと約束したんだな。

 でも、食料もない、水も少ない。そんな状態で人って生きていけないみたいだ。

 しばらくしたら、ソイツが死んだ。前世で言うなら栄養失調か。

 約束、しただろう? また遊ぶんじゃなかったのかよぅ?

 悲しかった。悔しかった。辛かった。そんな感情がごちゃまぜになって、泣いた。

 それから集落の中に人が少なくなっていったんだ。

 多数は倒れてしまって家から出れなくなった人。

 集落から出て行った人も少しいた。

 後は、日本の昔話に有るような悲しいことが起きたんだ。

 姥捨て、口減らし。働けない奴に食わせるものは無いってさ。

 俺の兄弟はみんな丈夫だったみたいだな。人狼とのハーフだからかな?

 でも、やっぱり、食料が足りなかったんだ。

 家でも口減らしをするって話をされた。

 誰がされるって? 一番下の妹だよ。寝ているときに殺すんだって。

 誰がそんなことさせるか! まだ4歳だぞ! 妹守れないで何が兄貴だ!

 それでも、食べるものがなくてどうしようもない!

 それじゃあ……俺が出て行くよ。

 でも、殺されるのは勘弁な。

 ほら、俺って見た目が狼じゃん。

 この見た目なら、見世物とかに高く売れんじゃない?

 泣きそうになるのを必死にこらえておどけてみせた。

 父さんと母さんは俺の話を聞いて驚いてた。

 妹は寝ていたから知らないだろうな。兄ちゃんはうつむいて何も言わない。

 お前をそんなところに売るために育てたんじゃないんだって。

 そういうふうに言うなら妹殺すなんて言わないでよ。

 父さん、母さん、兄ちゃん、俺が出ていくよ。

 だから妹をちゃんと育ててね。お願いだよ。約束。

 俺は出て行くけど、また帰ってくるから。必ず、必ず帰るから。コレも約束。

 そうか、約束か。何だよ父さん、泣かないでよ。

 せっかくだから笑ってよ。少し早めの独り立ちだよ。

 俺の晴れ姿ちゃんと見届けてくれなきゃ駄目じゃないか。

 兄ちゃん、父さんと母さん、妹を頼むね。

 妹は、母さん助けてやるんだぞ。俺はちょっと長い間出かけるから。

 必ず帰ってくるから、待っててくれな。

 母さん、俺は母さんの息子だから。どこに行っても。

 父さん、俺、頑張るから。頼むよ。悲しそうな顔しないでよ。

 そう、笑って。俺も笑うから。

 みんなそんな悲しそうな顔しないでよ。

 次男坊が少し早めの独り立ちするんだから、笑顔で送ってくれなくちゃ!

 だから俺は、もう一度、みんなと約束するよ。

 必ず帰ってくるから! 元気で! それじゃあ、行ってきます!


 何だよ、こんな大事なこと忘れるなよ。

 全部思い出した俺は檻の中で泣いた。

 必ず帰る。こんな大事な約束してたんじゃん。

 守らなきゃいけない約束を思い出した。

 この中でした約束が1つ増えてる。クロとの約束だな。コレも守らないと。

 初めて、この世界に来た時より一層強い決意を持てた。

 俺はラル。この世界で生きていくと決めたんだ。

 前世の記憶はあるけれど、俺自身の約束を守るため。頑張るよ。

 必ず帰るって言ったしな。約束しちゃってるし。

 妹をちゃんと育てて無かったらぶん殴ってやろう。

読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク、PV数、ともに作品制作のモチベーションとなっております。

ついでに評価もしていただけるとかなり嬉しいです。

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