表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/43

賭けの清算

15話目

 戦闘後、自分の場所に戻ってきた。

 外に出れるのはいつになるかな。

 後7つだけど、結構面倒だ。それに、精神的にキツイ。

 最初のゴブリン? みたいなのなら罪悪感は感じないんだけどな。

 今回みたいにヒトは少し罪悪感を感じるかもしれない。


 少ししたらレンさんが来た。どうしたんだ?

「先に今日のお前の勝ち分を渡しておく」

 そうか、俺自身に賭けていた金貨が倍になって返ってくるんだ。

 革袋を手渡され、中身を確認。

 1、2、3……よし、20枚入っているな。

「コウとの賭けの金額は少し待ってくれるか」

「ある程度は待つよ。具体的にはどれくらいかかりそうですか?」

「アイツ自身に結構借金が有るみたいでな……それの返済もしながらだと……1年はかかる」

「前言撤回、流石にそんなに待てないよなぁ……」

「ココの給料から毎月返済していく予定、では有るんだか」

「知ってる? 普通は賭けでの貸し借りの期限は一晩限りだよ?」

 思い切りふっかけてやろう。

「明日全額払えたなら、払う金貨は15枚。それ以上かかるんだったら、利子払ってもらうから」

 ヤミ金より酷い利子をふっかけよう。なんせ騙された被害者だからね。

 だから、レンさんには利子のパーセンテージは言わない。

 俺の被害額の数十倍は覚悟してもらわないと。

「明日払えないのであれば覚悟して置くように、って伝えておいてもらえるかな?」

 よし、言いたいことは言えたし、もう良いかな。後はレンさんの交渉次第だ。

「とりあえず、明日までは待ってあげるから」

 最高に悪い顔してるかもしれないが、こっちは狼だ。

 何時の時代の物語でも狼は狡いもんで、悪役が多い。

「それじゃあ、明日。良い返事を待ってるよ」

 これくらいでいいかな。会話をコッチの都合で切り上げさせてもらう。

 さて、明日持ってくるかなぁ?


「おい! 起きろ!」

 寝ていたらいきなり起こされた。何だよ、良い気持ちで寝てたのに。

 鉄格子の方を見るとレンさんと包帯まいたコウのやつがいた。

「コウが話したいことがあるそうだ。対応を頼む」

 寝起きに何なんだよ。面倒だな。

「全額払う気になったんだな?」

 俺は今、滅茶苦茶不機嫌だ。睡眠を邪魔されたからな。

「ああ、払う」

 じゃあ、全額払え。金貨15枚だからな。

 コウのやつが恐る恐る手を出して、鉄格子内に金を置いて行く。

 5枚置いたところでコウの手が止まった。足りてないだろ?

「これで全部だ」

 コウが信じられないことを言ってきた。足りてない。

「足りてねぇだろ?」

 後10枚足りてない。さっさと払え。

「俺がお前から受け取ったのは5枚だ。だからお前の損失分を払う」

「おい、賭けの清算だろう? 後10枚足りてないだろうが」

「そんなものはした覚えはない!」

「なあ、レンさんからも言ってやってくれませんか? 約束、しましたよね?」

「そう、だったな……」

 レンさんが少し困った顔をしてから答えてくれた。

「コウ、払うんだ、後10枚」

 静かにコウに告げてくれた。うん、約束は守るもんだよな。

「俺はお前達の賭けの立会人だ。コウは全額、あと10枚払え」

 よし、レンさんがコッチ側についてくれた。

 お、コウのやつが何か悔しそうな顔をしてる。さあ、早く出せ。

「今は……全額は払えない」

 そうかぁ、全額は払えないか。それじゃあ、条件をつけて払わせるか。

「それじゃあ、月金貨3枚で4回払いにしておいてあげるよ」

 にこやかに告げてやろう。できるだけヒトが良さそうな声音で。

 4回全部で金貨12枚。少しだが利子をツケさせてもらおう。

「金貨の払う枚数が増えてないか?」

 なんだ、簡単な計算は出来るんだな。

「それはそうだろ? 普通は出来ないローンを組んでやってるんだから」

「ろおん?」

 何だよ、コッチにはそんな言葉が無いんだな。

「借金に利子がつくのは当たり前だろ? 信用貸をしてるんだから少しばかり色つけて貰わないと」

「ぐぅ……月2枚までなら払える……」

「それじゃあ、6回払いだな。約束を守ってくれてるレンさんに免じて、本来なら7回のところを6回にしておくよ。これなら払えるだろう?」

「……払える」

「よし、ならコレで成立だな。レンさん、ちゃんと聞いていてくれました?」

「ちゃんと聞いていた。略式だが、借金の証書も作成しておいたほうが良いか?」

「いや、そこはレンさんとコウを信用します。支払いはレンさんが受け取ってもらえますか?」

「わかった。毎月俺が徴収すると約束しよう」

 レンさんなら安心だな。なんせ奴隷の俺との約束を守ってくれてるんだから。

 それなら、この件は終わりだな。コウが何かぐったりしてるが気にしない。

 レンさんが俺の側についたのが少しショックだったんだろう。

「それでは、我々は仕事に戻る」

 レンさんがそう言って立ち去ろうとしている。

「レンさん、ちょっといいですか。レンさんと少し話をさせてもらいたいんですけど」

「俺、だけか?」

「そう、レンさんだけ」

「わかった。おい、コウは先に戻ってろ」

 コウは無言で頷くと先に戻っていった。

「奴隷との約束を守ってくれてありがとうございます」

 素直にお礼を言わないと先に進めない。

「当たり前のことをしただけだ。それに、お前が先に俺との約束を守っただろう?」

「あれは、うん、俺がヒトを殺したくなかっただけなんですけどね」

 俺の中身は人間だ。見た目が獣でも、やっぱりヒトを殺すのは抵抗がある。

 何だ? レンさんがすごい不思議そうな顔してるぞ?

「お前は変な奴だな」

 変とは何だ? ヒトを殺したくないのは普通じゃなのいか?

「そんな不思議そうな顔をしないでくれ。この中に入っているのは訳ありな連中ばかりだから、お前のような考えを持ってる奴が少ないんだ」

 そういうもんなのか? まあ、ヒトじゃないのも出てきたし、そうなのかな。

「害獣は森から捕まえて来た奴だが、ココの多数は犯罪者、それも重罪な奴ばかりだ」

 なるほど。見世物として使って、殺してしまおうって腹か。

「人殺しに忌避感の無い奴が多くてな。

 檻の中のやつが普通のヒトの感覚を話すもんだから面食らってしまった」

 そういうことか。

「お前の前の相手、アイツも変わりもんだ。志願してココに来たからな」

 志願して入れるんだ、ココって。

 まあ、そんな奴らに普通の感覚は無理が有るか。

「まあ、お前の相手はしばらくは出てこないだろ? なんせ巨人殺しだからな」

「ちょっと待て、俺はクロを殺してない。なんでそんな物騒な名前になってんだ?」

「噂が大きくなってるんだろ? 多分これからは看守殺しもつくぞ」

 うぇ……不名誉な二つ名がついてしまう。

「素手で戦う奴が少ないんだ。拳闘なんて付いているが、今じゃ武器を持つのが普通だな」

「何で名前変えないんだろうな?」

「昔は素手での格闘だけだったらしい。詳しいことは俺もよく知らないな。まあ、そんな中で武器を使わないで戦いをするお前は珍しいし、嫌でも注目されてしまうってことだ」

 う〜ん……名前に騙されたか。

 拳闘なんてつくもんだからボクシングみたいなもんかと思ってたのに。

「そういえば、話したいことが有るんじゃなかったのか?」

 そうそう、話が脱線した。話しておかなきゃいけないことが有ったんだ。

「そうでしたね。さっきのコウのやつの借金の話なんですが」

「何か不都合でも?」

「いや、不都合じゃ無い。俺のワガママ」

「ワガママ?」

「そう、ワガママ。コウからレンさんが金貨の受け取りをするようにしたじゃないですか」

「そういう話にしたな」

「俺に渡すのは3回分で良いですから」

「何でだ?」

「後の3回、金貨6枚はレンさんの好きにしていいですよ」

 最初からこう考えてたんだ。15枚全額俺に賭けた時の勝ち分位を取れれば良い。

 まあ、1枚余分にもらうのはご愛嬌だ。

「なら、3回分の支払いだけで良いんじゃないか?」

「それは、駄目です。コウには少し痛い目を見てもらわないと」

「そういうものなのか?」

「そういうもんです。全額支払い終えたら、6枚分の金貨はレンさんの好きにして下さい」

 俺に渡しても良いし、コウに返しても良い。レンさんの財布に入るも良しだ。

「俺の好きにして良いんだな?」

「そこまで念を押さなくても、約束は守りますよ」

「約束、ね……」

「それとも契約って言い換えますか?」

「商人じゃあるまいし、約束で良い」

「それじゃあ、約束です」

 よし、話したいことは全部話せたな。

「これで話したいことは全部です。時間取ってもらえてありがとうございます」

「うむ、では仕事にもどる」

 うん、これで心配事は無くなったな。レンさんなら信用できる。


 次の戦闘はどんな奴が来るかな? ヒトじゃないほうが良いんだけどな。

読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク、PV数、ともに作品制作のモチベーションとなっております。

ついでに評価もしていただけるとかなり嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ