3回目の対戦
対戦に入れた。
今回、多少、暴力表現を含みます。
苦手な方はご注意下さい
反対側の鉄格子が開いた。
まだ相手は出てこない。
早く出てこいよ、待ちくたびれちゃうぞ。
お、出てきた。
アイツの得物は片手剣かな?
ー家のツケ返せ!ー
おぉう、いきなり金返せコールかよ。
それはそれは、俺みたいなのから金を取ろうと考えるくらいだからな。
「うるせぇ、コレに勝ったら返してやるよ!」
コウも言い返してる。俺に勝って返せると良いね。
ー巨人殺しに殺されちまえ!ー
あれぇ? 何よ、その物騒な二つ名。
殺してないから! クロは死んでないから!
「はぇ? 巨人殺し?」
ほら、コウも何か面食らってるじゃん。
ん? 何か表情が強張ってるような……
あれ? 青褪めてる? どうした? 来ないのか?
それじゃあ、コッチから行くか。
ココに来たからには、覚悟してきたんだよね。
コウに向かって走りだす。
「ちょっと待て!」
いやいや、ここは戦う場所だよ。ちょっと待ては無いんじゃない?
「待って下さい! お願いします!」
言い方変えても駄目だよ。待たない。
「やめて! マジで!」
待たないし、やめない。怯えたフリしても騙されない。
「たの……」
はい、あと数メートル。
「チクショウ!」
今更身構えても遅い。とりあえず、レスリングのタックルしてみるか。
うん、レスリングとかやったこと無いけど、体が勝手に最適に動く感じ。
格闘スキルって、格闘技全般を指すのかね? 便利だな。
足を取って、相手を転ばせる。
「ぐぇ……」
なんかカエルが潰されたような声が聞こえた。
おい、受け身取れよ。
まあ良いや。相手の両足を持って、と。
とりあえず、ジャイアントスイング。
「フンッ!」
コウの両足を持って回す。
1回……2回……3回…………5回!
「オリャ!」
コロシアム中央方面に投げ飛ばす。
おお、3〜4メートルは飛んだ。凄え。
「ガッ!」
やっぱり受け身取らないでやんの。それじゃあ痛ぇだろうに。
「うぇ……お願いします……待って下さい……」
「待たねぇよ!」
ヨロヨロと立ち上がるコウに向けて言い切る。
なんだよ、弱いものいじめしてるみたいじゃないか。
とは言っても、やめないよ。
懐に走りこんで、手と胸ぐらをつかむ。
そのまま体を回転させて、一本背負い!
やべぇ、オリンピック狙えるかも。
背中を思い切り地面に打ち付けるコウ。受け身とれって。息できなくなるだろ。
少しスッキリしたし、言い分を聞いて少し待ってやろう。俺って器がデカイね。
「ゲホッ…ゲホッ…」
「ホラ、少し待ってやってるんだから、早くしろよ」
「……お前が巨人殺しなんて聞いてない……」
俺も初めて聞いたからね。そんな物騒な二つ名ついてるとは思いもしないよ。
「金は返す……金貨5枚……」
「足りてないよね?」
「賭けの金額はなかったことに……」
「イヤだ。払いたくなければ勝てばいいじゃん。
たかが2回勝っただけだよ、俺」
「勝てるわけないだろ! 俺はゴブリンくらいしか相手したことないんだから!」
「言いたいことはそれだけ?」
「やめ「それじゃあ、続きをしよう」
うん、なんかいい感じに絶望した表情してくれてる。
楽しくなってきた。
足技も確かめてみるか。
とりあえず、ローキック。恨みを込めて思い切り蹴ってやれ。
よし、クリーンヒットしたみたいだ。
痛みに気を取られて、目線が下に行ってるな。
それじゃあ、一気に懐まで入って、頭に手を回して、と。
こちらに思い切り引き付けつつ、膝を顔面に入れる。
グシャ……っていう効果音が聞こえてきそうなくらい、もろに入った。
凄ぇ鼻血出てるし、鼻の骨折れたかな?
コレもかなりスムーズ。格闘漫画に出てくるイメージそのものだ。
何かヨロヨロしてるし、次は殴打系だ。
左手で力は入れない。ただただ速いだけのパンチを出す。うん、ただのジャブ。
パンッ! 平手で叩いたような音がする。相手の顔が上がった。
ジャブ、ジャブ、ジャブ……何発も入れてみる。
かなり速いんじゃねぇかなコレ。やっぱりイメージ通りだな。
反撃されるの嫌だから、片手剣飛ばしとくか。
相手の右手を狙って蹴り。コレもイメージ通りだ。
片手剣が吹っ飛ぶ。ついでに右手も上に上がる。
一気に懐に潜り込んで、肝臓打ち。
入れた後に、少し距離を取る。あ、吐いた、汚ねぇな。ちゃんと鍛えておけよ。
キックやボクシング系統の動きも何の問題もないか。
気は失ってない。気を失うまでやめないから。死ぬほどつらい目にあってもらおう。
よし、次行ってみよう。漫画で読んだあれ行ってみるか。
後ろに回りこんで、確か、こう、脱力して……平手で思い切り、力入れないで……
パァァァン!
背中を叩く。
お、いい音した。なんて言うんだっけコレ? あ、鞭打だ。
「痛ぇぇ!」
凄え痛そうにしてる。おもしれぇ。
こんなのまで再現可能なら、48の殺人技いけんじゃね?
ちょっとやりすぎたかな? いや、まだスッキリしないな。
もう一回鞭打。
パァァァン!
もう一回。
パァァァン!
もう一回。
パァァァン!
もう一回。
パァァァン!
もう一回。
パァァァン!
ふう、スッキリした。多分背中が真っ赤になってるんだろうな。
次は世界中の子供の憧れ、変身ヒーローの必殺技をやってみよう。
「とーう!」
距離を取ってから思い切りジャンプ。前宙をしながら蹴りの体勢をとる。
「ラ●ダーキック!」
あ、技名叫んじゃった。まあいいや。
左肩目掛けて急降下。やべ、相手の鎖骨に当たりそうだ。
着弾。
ーボキッ!ー
あ、折れた。
「あぁぁぁああぁっぁぁ!」
悶絶してるなぁ、かわいそうになってきた。
こうなる原因を作ったのはコイツだけど、この結果出してるのは俺だしな。
仕方ない、そろそろ終わりにしてやろう。
後ろに回りこんで、腰に手を回す。
どっかの偉いヒトが言ってた。
バックドロップは……ヘソで投げる!
「おりゃぁぁぁあ!」
ドンッ!
あ、いけねぇ、後頭部と背中を思い切り地面に打ち付けちゃった。
コウのやつが静かになった。コロッセオ内もかなり静かだ。
どうした? バックドロップ決めた体勢を崩して立ち上がる。
あたりを見回す。ココはコロッセオだよね?
ヒトはいるけど何も言葉を発しない。
コウは白目向いて泡吹いてる。
何でまわりは静かなんだ?
ほら、お前らいつも言ってるじゃないか。
それに近いことしたんだから盛り上がれよ。
俺が勝鬨を上げないから静まってんのか?
よし、勝鬨を上げるか。
「ウォォォォーン!」
右手を上げて思い切り遠吠えする。
ーワァァァァ!ー
お、ようやっと歓声が戻ってきたな。
俺が入ってきた方とは反対側の鉄格子が開く。
看守さんっぽいのが担架運んで慌てて入ってきて、さっさと運ばれていった。
俺の入ってきた鉄格子が開く。さて戻ろうか。
準備室まで戻ってきた。グローブとすね当てを外して、と。
お、レンさんがいるね。
鉄格子の前に来て手を出す。
「結果は……聞くまでもないか……」
「殺してはいないよ。約束だからね」
「そうか、すまなかった」
謝る必要なんか無いんだけどな。
「そういえば、俺の倍率っていくつだった?」
「? お前は……はぁ……2倍だ」
なんだ、俺とコウの実力が同じくらいだと民衆には思われてたか。
これで、俺の手元に20枚の金貨と、コウから15枚の金貨が払われるわけか。
かなり儲けたな。あれ、そういえばこれって、連勝数に含まれるのかな?
「そういえばさ、これって連勝数に含まれるんですか?」
「含まれるぞ。これで3勝目だな」
「そっか。あと7つ」
「10連勝するつもりなのか?」
「するよ。10連勝すればここから出れるんでしょ?」
レンさんは会話をしながらも手錠の取り付け、鉄格子を開く等の作業を続けてる。
「一応はそういう決まりだ。
ただ、出れたやつなんか歴史上2人らしい。
俺は一度も見たこと無いがな」
「じゃあ、俺が3番目だな。ちゃんと見といてくださいよ」
俺のストレスも解消されるし、金は増えるし、勝数もひとつ増えるし良いことばかりだ。
今日は気分良く寝れそうだ。
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