3回目の対戦 準備
13話目。
少し短めです。対戦までいけなかったorz
「対戦の日取りが決まった、3日後だ」
レンさんが俺の檻の前に来て、開口一番そう言い放った。
「当日は俺がココに来て、お前を連れて行くことになっている」
うん、いつものことだよね。
それにしても俺の対戦ペースは異常じゃないのか?
月1回程度、って言ってたのにほぼ毎週のように行っているよな……
「それまで待機しておくように、以上だ」
「そうですか。連絡ありがとうございます」
一応、お礼は欠かさずに、と。
「ところで、俺がクロに勝ったことはコウ? のやつは知っているんですか?」
「いや、知らないだろうな……知っていたらこんな対戦受けないはずだ」
「その日、俺を連行して行ったのに見てもいないんだ?」
「そもそも、この中での戦闘自体にアイツは興味ないみたいだな。
強いって言われてる奴はなんとなく知っていても、そいつの勝ち負けに関しては知らない」
「そっか、まあそれは良いや。
ところでレンさん、痛い目を見させるとしてどこらへんまでやっていいかな?」
「お前の判断に任せる」
おお、太っ腹だね。俺に二度とムカつく顔見せられないくらい叩きのめそう。
「くれぐれも殺さないでやってくれ」
殺さないけど、日常生活困難になるくらい痛めつけよう。
「あと、噂を聞いたんだが、対戦に勝ったら彼女に告白すると言ってた」
あ、フラグがたった。死亡フラグ? だよ、それ。
「結婚も考えているらしい」
うん、確実に死亡フラグだ。
「俺から頼める義理は無いが、殺さないでくれよ」
いや、無理そうになってきたよ。フラグ立っちゃったもの。
とりあえず、釘を差しておくか。
「相手が俺を殺すつもりで来てる場合は、難しいかもしれないデスヨ」
相手が殺す気で来るなら、俺にも相応の覚悟がいる。
俺を殺す気で来る者を相手に、殺さないように、なんて出来る可能性は低い。
とりあえず、ココの準備室にある武器は本身の武器だ。
剣に当たれば皮膚も肉も切れるし、槍は体を貫通する。
使い方次第だけど。
「やっぱり、厳しいか……」
実力差があれば出来るかもだけど……殺す、殺さないの意識の差はデカイ。
というより、多分アイツは俺達奴隷をかなり下に見ている。
取るに足らない命、と考えていると思う。
だから、殺しに来ると考えているんだけどなぁ……
中途半端にやればコッチが反撃受けるしなぁ、殺してやるって気持ちの攻撃。
何か考えるの面倒になってきた。
そうだな、一方的に殴り続けよう。反撃の気持ちも出ないくらい。
相手の顔やら骨やら関節の後始末は先生に任せてしまおう。
どっか部位欠損させてしまえば戦意も喪失しそうだし。
「片腕、片足位なら良いよな……」
独り言、つぶやくように言った俺の一言は聞かれていた。
レンさんは苦虫を噛み潰したような表情になってしまった。
いや、俺のせいか。
「殺す気で来ている奴を相手にするのに、生かしてやろうなんて気にはなれないものな」
寂しそうな表情だ。
端的に告げておこう。
「殺す気で来る奴に手加減は出来ない。殺さないってのは約束出来ない」
「そうか……無理を言ったな……」
「それじゃあ、当日は頼みます」
「わかった」
そんな感じのやり取りで終わらした。後味が悪い。
多分、3日経ったと思う。レンさんが来た。
「時間だ、向かうぞ」
手かせ足かせを外され、手錠をつけられた。
準備室に向かうんだろう、黙ってついていく。
準備室についた。
檻が閉じられ、隙間から手を出す。手錠を外すためだ。
なかなか外そうとしない、どうしたんだ?
「殺さないと約束してくれなければ……外せない」
諦めてなかったのか、どこまでも人が良い。
「確実な約束は出来ない」
最後通告に近い。覚悟を決めて欲しいんだけどな。
「俺には外せない……一応、俺が先輩なんだ」
はぁ……外してくれないか。仕方ないな、自分で外すか。
「変身」
つぶやいて、変身する。狼(子犬)形態だ。
人狼形態に合わせてある手錠でも、狼(子犬)形態ならサイズが合わない。
輪っかから前足をどかして、元に戻ろう。
「ガゥ(変身)」
人狼形態に戻る。手錠は外した。
「え? えぇ!?」
レンさん驚いてるな。
「俺が姿を変えられるのを知ってるのは、レンさんで二人目。
もう一人は医務室の先生だ。
レンさんを信じて目の前で姿変えてるんだ、周りに言いふらさないでくれよ」
驚いてるレンさんにとりあえず話しかける。
「さっきの約束だけど、俺との約束を守ってくれるなら、確実じゃないけど善処する」
俺も大概人が良い。正確には獣人(?)でヒトじゃないんだけどね。
「俺が勝ったら、コウから必ず金の回収をしてもらえるか?」
「アイツが死ななければ、確実に金は回収する。約束しよう」
「逃げることは許さないで欲しい」
「全部払い終わるまで逃さない。コレも約束しよう」
「分割払いする場合は利子つけるからな?」
「利子はちょっ……いや、払わせる」
「それなら俺も、レンさんとの約束守れるようにしよう。
だけど、少し位俺の腹いせをしたっていいだろう?」
「殺さないならな」
死亡フラグ立ててるんだから、難しいよ、と心の中で言っておこう。
「怪我はさせるから。
後、俺に対して今後ふざけた行動させないようにするから」
「う……それは、程々にお願いしたい。お前の対応に関してはこちらから教育を……」
「それだと意味がないんだ。
アンタたちの教育なんぞあてにするつもりはない。
暴力で屈服させる。聞こえは悪いけどそうしておかないと駄目な気がする」
俺の腹いせを含む今回の戦闘は、相手の心を折ることにしてるから。
「信用ないんだな」
信用しろって言う方が難しい。詐欺働いた奴がいるくらいなんだから。
まあ、これで言いたいことは言ったかな。
「それじゃあ、準備するから」
これで会話は終了としよう。
さあ、準備だ。砂時計はひっくり返された。
前の2回と同じようにグローブとすね当てを装着する。
クロの時はコイツは外しちゃったんだっけ。
素手で殴ると痛いしな、今回はちゃんとつけておこう。
砂はまだ落ちきってない。さて、それじゃあ出るか。
いつもどおりにコロッセオの中に出る。
よし、今日もいい天気だ。空が見えるのは気分が良い。
ーー殺されちまえ!ーー
こんな声援さえなければ最高なんだがな。
それじゃあ、遠吠えでもしておくか。
「ウォォォォーン」
よし、少しは静まった。さて、そろそろ出てくるかな。
反対側の鉄格子が開くのを待つ。
早く来ねぇかな。
反対側の鉄格子が開いた。
さあ、始まるぞ。覚悟はしてきたかな。
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