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第3章   夢と写真 2つ目の宝石 その7



  9



ママが落ち着きを取り戻した後、改めてパパの部屋を調べたが結局何も分からなかった。



そして、部屋を出ようとした時だった。



「ん?……なんかあれ、不思議な感じ……」



そう言って、星桜は本棚の中に置かれているぬいぐるみを指差した。



さっきまでなんとも思っていなかったそのぬいぐるみは、星桜に何かを訴えている――そんな感じがした。



「もしかしてあのぬいぐるみ、夢に出てきたの?」



「分からない……。だけど……。ううん、やっぱり気のせいだと思う」





星桜達3人はパパの部屋を後にし、廊下を進む。T字路になっているこの廊下は、真っ直ぐ行くと右側に居間、左側に台所がある。



T字路を左に曲がり廊下を進むと左側に土間があり、突き当りにお風呂場だ。土間にあるドアは、広い庭に繋がっている。



そして星桜の考えはもう決まっていた。それを察してか、ママが先導を切って土間へと向かう。



「ふふふっ、順番に探せばいいんでしょ?」



手がかりがないんだから、そうするしかなかった。星桜達はそのまま土間へ行き、ドアを開けた。



微かだけど覚えている。おばあちゃんが愛情を込めて作った花壇の側で、一緒にお手玉をやっていた。教えてもらっても星桜には難しく、2つがやっとだった。



星桜は大きく深呼吸をし、花の香りを吸い込む。



「懐かしい香り。いい匂い」



おばあちゃんと遊んでいた時、無意識に嗅いでいた花の香り。そして星桜は思い出す。






――(見えるかい?ここはパパが好きな場所の1つだ。まぁおふくろが作った花壇なんだけどね。ははは)



(私も今、そこにいるよ)



――(パパは男だっていうのに、おふくろは『*』を作ってくれたんだ。最初はそれを好きになれなくて、投げちゃったんだよ)



(駄目だよ、そんなことしちゃ)



――(だけどね、その度におふくろが取りに行ってくれたんだ。そして気づいたら『*』は泥だらけになっていた)



(おばあちゃん、悲しむよ)



――(投げた『*』が花壇の中に入った時は、さすがに怒られたな。でもそれから、なんてことをしてしまったんだって気づいたんだ)



(怒られてから気づくことって、あるよね)



――(そしておふくろに謝ったんだ。『*』を投げてごめんなさい、泥だらけにしてごめんなさいって。そしたら次の日、綺麗になって戻ってきたんだ)



(良かったね、パパ)



――(それからこれはもうパパの宝物だ。だから星桜、鍵はここに隠しておくよ。『くまのぬいぐるみ』の中に)



(ちゃんと見つけたよ、パパの宝物)





とても清々しい。星桜はまた大きく、花の香りを吸った。そして、ママとおばあちゃんに言う。



「探しものはもう終わり。戻ろう、パパの部屋に」



星桜の表情を見て、ママはすぐに気づいた。良いことがあるとそういう顔をする。パパも星桜のそういう笑顔が好きだった。

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