第3章 夢と写真 2つ目の宝石 その3
どおぞぉ、と言われ星桜とママはお家に入る。そして居間へと案内された。
おばあちゃんはそのまま台所に行き、何やら用意をしてくれている。
星桜とママは居間に敷かれている座布団に座り、本題に入った。
「あれが黒電話だけど、何か思い出せる?」
黒電話は座ったままでも受話器を外せるように、低い台の上に置かれていた。
「うーん……。思い出せない……」
星桜は黒電話だけではなく、居間全体を見渡した。
壁掛け時計、カレンダー、テレビ、特に変わったものはなく、思い出せることは何もなかった。
そこへ、木のお盆を持ったおばあちゃんが戻ってきた。
「何か変わったものがあったかい?」
キョロキョロする2人にそう言いながら、お盆に乗っているお茶とお菓子をテーブルの上に置いた。
いえ……とママは一言。
おばあちゃんはお盆を脇に置き、座布団の上に座る。
それを確認すると、ママはおばあちゃんに説明した。
「今日来たのは、ちょっと訳ありでして……」
言いづらそうなママを見て、星桜が代わりに話す。
「私の誕生日の次の日の今朝、パパが夢に出てきたんです」
おばあちゃんは静かに話しを聞いてくれている。
「それと、これなんですけど……」
そう言って、持ってきていた黄色い宝石と手紙をおばあちゃんに見せた。
これは鍵。鍵は何個かあって、その在り処を示す場所を夢で見せてくれた。ほとんど思い出せなかったけど、黒電話が出てきたということ。
手紙に書かれている言葉の意味は、星桜が見る夢のことだと思うと説明した。
信じてもらえるかは分からない。だが少なくとも、おばあちゃんの家にはヒントがある。だから話す必要があった。
おばあちゃんはその手紙を暫く見つめた後、口を開いた。
「なるほどねぇ。……でもこれは違うんじゃないかい?」
「どういうことですか?おばあちゃん」
すかさずママは聞いた。
「幸翔はそんな無駄になるようなことはしないと思うんだぁ。朱璃さんは何か気づかないかい?」
ママはおばあちゃんの言っている意味がよく分からなかった。
「夢に出てくるのを手紙で教えなくてもいいでしょぉ」
そう言われ、ママはようやく気づいた。
「確かに。私は夢で見たものを追っている。そうなると、手紙の意味が無くなっちゃうね」
星桜の発言に、そうだよぉ、とおばあちゃんが続く。
「おばあちゃんはこの手紙について何か分かりますか?」
ママがそう聞いたが、おばあちゃんは何も分からなかった。
そして少しの沈黙が続いた後、星桜とママが聴きづらかったことを先におばあちゃんが言ってくれた。
「幸翔……パパの部屋も見てみるかい?」




