第4章 星と謎 古びた館 その4
入り口から時計回りに回る。ちょうど奥まで行ったところだ。
「何かあった?」
星桜が探し歩きながらママに聞く。
「んーー……、ここには無いのかしらね」
宝石が見つからなくても、言葉の書かれた紙が見つかるかもしれないと思っていた。しかし1周してもそれらしきものは見つからなかった。
星桜は落ち込むことなく大浴場を出る。そして、改めて脱衣所を探した。
……結局、巳の座で見つけたものはビニール袋のみだった。
2人は巳の座を出て考える。この広い館に部屋はあと何部屋あるのか、宝石はあと何個あるのか。
結果、別れに繋がるとも知らずに……。
とりあえず、端から順番に部屋を見ていくしか無い。2人は巳の座の向かいにある、亥の座に向かう。
「亥の座……は何があるんだろう」
ランタンを持っている星桜が先に部屋に入る。
照らされた亥の座はL字型の部屋になっていた。物が多い部屋だが、置いてあるダンボールを見るとここがどういう部屋なのかが分かる。
入浴剤やシャンプー類、掃除道具など巳の座で使われている物が保管されていた。
2人は入り口から右へ右へと進み、部屋の奥まで行く。
奥の壁にはカレンダーが画鋲で止められていて、日にちのところにメモが書かれている。
ここからいつ、何を、どれくらい持って行ったかのメモだ。
よれよれのそのカレンダーは4年前の12月のままだった。
星桜は自分が持っているランタンを、ママが持っている懐中電灯と交換してもらう。
懐中電灯の方が1点を集中して照らせるため、暗闇の中の捜し物には便利だ。
星桜はそれで辺りを丁寧に照らす。今の星桜の目はどんなに小さなものでも見逃さない、鋭い目となっていた。
ランタンを持ったママは、棚の高いところを探す。位置的に、ランタンを置くよりママが持って立っていたほうが明るい。
「ママ。……これ見て」
星桜が何かを見つけ、ママを呼ぶ。
「どうしたの?」
ママは棚の上にランタンを置き、星桜に近づきしゃがんだ。
「ほら、ここ……何か変じゃない?」
ママは星桜が指差す床を見つめる。最初は何が変なのか分からなかったが、目を細くしてよく見るとおかしなことに気づく。
「それって、このダンボールをズラした跡よね?」
床に積もった埃に段ができていた。ダンボールを左にズラした跡だ。
星桜は懐中電灯をママに預け、そのダンボールを元あった場所までズラす。
「あ、何か書いてある」
ダンボールを右に10㎝ほど動かしたところで床に書かれた文字を見つけた。そしてママが急いで懐中電灯で照らす。
【祖父そ】
床にマジックらしきものでそう、縦に書かれていた。
「祖父そ……って、どういう意味?」
星桜がママの方に振り返り、首を傾げる。
「待って、星桜。続きがあるみたいよ」
埃が舞わないようにそっと動かしていたため、これで全部だと勘違いしていた。だがダンボールを更に動かすと、3つの言葉が出てきた。
祖母は父と母に
父は娘に
そして娘と母は輝きを見つける
2人はそれを見ても意味は分からなかったが、1つだけ分かることがある。これは鍵となる宝石を見つけるための暗号。
ママはこの言葉を手帳に書き記した。
埃の多いこの部屋は長居する場所じゃない。
言葉を見つけた亥の座にはもう何もないと思い、部屋を後にする。




