第4章 星と謎 古びた館 その1
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『なんでよ……』
星桜が起きてすぐ、思ったことだ。
台所ではママが朝ごはんの支度をしていた。言うまでもない、いつものこと。
今日は月曜日、ママには仕事がある。
鼻歌交じりのママはとてもごきげんだった。星桜の夢に出てくるパパは今度は何を伝えるのか、直接ではないけれど聞けることが楽しみでいた。
2階から聞こえるバタバタという音で、星桜が起きたことに気づく。
ゆっくりと階段を降りてくる音で、昨晩は熟睡出来たんじゃないかと分かる。
そして、眠たそうな星桜の声。
「ママ、おはよー」
台所にいたママはリビングに顔を出し、星桜に挨拶を返す。
「おはよー星桜。……ってどうしたの?」
ママが見た星桜の顔はとても不機嫌そうだった。
「夢……見れなかった」
星桜の夢にパパが出てこなかった、ではなく夢を見ていないのだ。
しかし夢というものは見たか見てないかではない。起きた時に覚えているかどうかだ。
パパが夢に出てきていても、忘れてしまっている可能性が高い。
次に何をすればいいか分からない以上、夢を頼りにするしかなかった。
ママが星桜に声をかけようとした時、インターホンの音がリビング内に響く。
ママは小走りで玄関に向かう。そして、2、3分で戻ってきた。
「何?それ」
「分からないけど、何か星桜宛みたいよ」
どうやら宅配便らしく、ママは小さな荷物を1つ受け取っていた。
差出人不明の……宅配物。これと似たようなことがあったような……。
星桜はリビングのテーブルの上で荷物を開ける。中には鍵と地図が入っていた。
「次はここに行けってこと?」
誰からなのか、なんてことはもうどうでもいい。
「そうみたいね」
パパが関係しているものだと分かっているから。
地図に記された場所は星桜の家から北西の方。駅から西、おばあちゃんの家から北だ。
だけど地図は雑に書かれていて、そこに何があるのか全く分からない状態だった。
そこで星桜が提案する。ママが仕事に行っている間にそこがどこなのかを調べる。仕事に集中してもらうためだ。
ママも納得し、2人は朝ごはんを食べる。そしてママは仕事へと向かった。
星桜は午前中に家の仕事。そしてお昼ごはんを食べてから調べることにした。
どこで調べるかというと、商店街近くにある図書館だ。
星桜の住むこの街の図書館では、手作り新聞というものが置かれている。街の変わったもの、気づいたことなどを手作りでまとめたものだ。
地図に記された場所がどういうところなのかはもちろん、その評判など第3者からの意見も分かるので街の調べ物はここが1番だ。
お昼ごはんを食べ終わった星桜は、少し休憩してから街の図書館へと向かう。




