第3章 夢と写真 2つ目の宝石 その9
この後星桜達3人は居間に戻り、少し遅目のお昼ごはんを食べる。おばあちゃんの手作りのお昼ごはんだ。
昔から思っていたことだが、おばあちゃんの作るお味噌汁と煮物は格別に美味しい。
そしてこの時、おばあちゃんはとても楽しそうだった。星桜が産まれてすぐにおじいちゃんを亡くし、話し相手がいなくなってしまった。
だからただ話しを聞いてくれる、それだけでおばあちゃんは嬉しかった。
そしてご飯も食べ終わり、楽しい話しをした後、おばあちゃんは玄関前まで見送りに来てくれた。
「また、いつでもおいでねぇ」
「はい。また、星桜と一緒に来ますね」
そう言って、ママは足速に車へと向かう。
星桜はママが離れるのを確認すると、おばあちゃんに話しかけた。
「あのっ、おばあちゃん……」
おばあちゃんは何か言いたそうな星桜を見つめる。
「私が7歳の頃、おばあちゃんの手を叩いたの覚えていますか? その……ごめんなさい。……なかなか謝れなくて」
周りからしたらそんなことで、と思うかもしれない。だけど当時の星桜は悲しみの八つ当たりだった。おばあちゃんだって悲しかったはずなのに……。
その差し出してくれた手がどれほど優しいものだったか、今日改めて分かった。
「なんのことかねぇ。物覚えが悪くてごめんねぇ」
おばあちゃんの目を見て、星桜は答える。
「ありがとう……おばあちゃん」
そして星桜は車に乗り込んだ。
ママは車の中からおばあちゃんに手を振り、星桜達の家に向かって車を走らせた。
車の中、ママは気になったことを星桜に聞いた。
「さっき玄関前でおばあちゃんと何話してたの?」
「7歳の頃に手を叩いちゃったこと謝ったの」
「嬉しそうだけど、許してくれたの?」
謝った時のおばあちゃんの目は優しかった。忘れたふりもバレバレ。
「やっぱりおばあちゃん、優しいね」
ママは一瞬「ん?」と思ったけど、すぐに理解した。
10
家に着くと、星桜とママは今までのことを整理する。
1つ目の宝石は、手紙と一緒に。手紙に書かれている言葉の意味は未だに不明。
2つ目の宝石は、パパの実家の部屋に飾ってあるくまのぬいぐるみの中。そして手紙のとは別の新しい言葉の1部。
宝石が全部で何個あるのかは不明だが、言葉の意味が分かっていないということで最低あと2つあるのではないかと推測する。
2種類の言葉で1つの宝石の在り処を示している可能性も考えられる。
「もう手がかりはないのよね?」
「うん……」
星桜とママは完全に行き詰まってしまった。だけどそれは『今は』の話しだ。
「今寝たらパパが出てくるかもよ?」
ヒントはパパが出てくる夢のみ。
「全然眠くない……」
明るいうちに寝るということは、星桜にとって難しいことだった。
これ以上考えても、いい案が出てくるとは考えられない。
午後7時頃になったら夜ご飯を食べる。
食べ終わったらテレビを見ながらゴロゴロしたりする。
そしてお風呂に入った後、歯を磨きベッドに入る。
極普通の生活だ。
パパが夢に出てこなかったらどうしようという考えはない。
根拠は無いが絶対に出てくるという自身があった。
この先に何が待ち受けているのか。
不安ではなく、ワクワクしながら星桜は眠りに就いた。




