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第三話☆意識☆

あの日から先生を意識し始める。けど友達から単なる“憧れ”と言われそうなんだと思った。しかしそれは違った。先生はちゃんと私のことを見てくれてました。暖かく支えてくれました。



たった1つの出来事で


私は先生に


恋をしました



でも憧れなのかな?


わからない


だけど…


あなたは


私を見てくれてた


ちゃんと


わかってくれてた



やっぱりこれは…


“恋”なんだと…


叶わない恋をしたんだと


気が付いた――




-意識-



何も変わらない毎日の学校生活


夏にちょっとだけ


明かりが照らされた


あなたに…


先生に…


少しずつ、少しずつ


先生を意識し始める



あの体育準備室の出来事からの授業


そう、先生に恋をしてからの最初の授業


今にも心臓が張り裂けそう…


――ドクドクドクッ…



そのとき


――ガラガラガラ


『席につけ〜始めるぞ〜』


いつもと変わらない


先生の声


いつもの様に出席を取る


『……東原〜』


私の名前が呼ばれた


『……はぃ』


緊張してか


小さな声で返事をした



『東原〜?東原〜?』


聞こえてないみたい…


何回も先生は私の名前を


呼び続ける


『はい、はい!』


名前が二回呼ばれたので


私は二回返事した


それにやっと気付いた先生


私を見る


『…返事は大きくな!』


そう先生は笑いながら


私に注意をする


こんな注意初めてだ


いつも言わないくせに…


こんなことを思いながらも


実はとっても嬉しかった


私を見てくれた


先生の瞳に


私が映った…


単純だけどホントに嬉しかった



ニヤケ顔を抑え


私は授業に集中する


相変わらず面白い授業


笑いもおこる


先生が黒板に書き始める


それと同時に私もノートに書き始める


だけど


黒板に書いてる先生の後ろ姿に


見とれてしまった


背伸びをしないでも


黒板の上まで届く背の高さ


多分前の席に先生が座ってたら


黒板が見づらくなるであろう肩幅の広さ


頼もしい背中


鍛えられた身体


長すぎず短すぎない黒髪


チョークを持つ大きくな手


見れば見るほど


私は魅了されてく


全てが完璧だった


なんでもっと早く


好きにならなかったんだろう…


早すぎる後悔…


あなたに恋をするのに


4ヶ月以上も経ってたとはね…



そう思いながら


もう黒板の半分を埋め尽くした文字を


急いでノートに写した





書いてる最中


『じゃあ聞いてみよ』


誰かを当てようと先生がキョロキョロする


『……東原!』


『……っ!!』


私かよ…


そう思いながら先生を見る


『この間の授業内容覚えてるか?』


私の目を見ながら言う先生


『……。』


やばい、やばい


何やったっけ…


わからなくて首を斜めにする私


『忘れちゃった?』


その先生の言葉に即首を縦に頷く私


『じゃあ…ヒント!』


―― …ヒントっ!?


クイズですか?先生…


ヒントを黒板に書いてく先生


―― あっ!思い出した!


しかしバンバンヒントを書いていき


しまいに先生は


答えを言ってた…


『ごめん、東原。答え言っちゃった』


そう言って笑う



―― 先生 その笑顔ズルイです


その後の授業では私を当てることは一度もなかった




『今日はここまで!』


その一言で皆が片付けを始める


『挨拶っ!』


始めの挨拶と終わりの挨拶はちゃんとしないと気がすまない先生


― 起立


皆が立つまで待つ


『ちゃっと立って』


男子に注意をする


― 礼っ



皆が礼をし終わると


一斉に椅子に座る


それと同時に先生が教室を出ていく


先生の横顔……


鼻高いな〜


―― 素敵……


また見とれながら


教室を出ていく先生に


サヨナラする



『愛美っ!』


理穂が私を呼ぶ


『えっ!?』


二秒遅れで気付く


『何考えてんの?何よ!』

ニヤリと笑い私に攻める


『なんでもないよ〜』


わかりやすい誤魔化し方


多分もう気付かれてると思う


『顔赤いよ、愛美』


指を指しながらまたニヤリと笑う理穂


小さいころからいつもそうだ


顔に出やすい性格…


何かがあるとすぐ顔にでる


『恋でもしたの?』


次は昼食時間だったので机を動かしながら理穂が訪ねる


『……。』


言うべきか、言わないべきか…


そう悩んでたところ


『てか…斎藤先生、愛美に優しいよね〜』


お弁当を開けながら理穂言った


『えっ!?そんなことないじゃん』


私もお弁当を手にする


『だって当てても普通ヒントとかださないよ!』


お弁当に入ってる唐揚げを食べながら理穂が言った


『それは……。分からなかったからだよ!』


今度は自分でもわかるくらい身体が暑くなって赤くなる


『ふぅ〜ん…』


理穂が私を睨む


『なにさっ!』


お茶を飲みながら理穂を見る


『愛美わかりやっす!まぁ可愛いけど〜』


からかう理穂


私は何も言えなくなってしまった


『どこがいいの?』


箸を置いて私の目を真剣に見る


名前なんて出さない


そこも理穂の優しさ


出さなくても誰のことを言われてるのかわかった


『……優しいとこってか…全部…?』


またお茶を飲む


『全部?ってなんで疑問系なのよ』


箸を持ち始めまた唐揚げを食べる理穂


『うーん…良くわかんないな…』


そう誤魔化す


ホントはあの日の出来事で私は恋をした


でもあの日の出来事は誰にも話したくなかった


たとえ仲の良い友達でも


先生との秘密にしておきたかった



―― どこに惚れたの?


―― どこがいいの?


こんなこと聞かれても


答えられない


一目惚れではない


ただ急に恋をした


体育館の前で…



『まぁ憧れなんじゃない?』


お弁当を食べ終えたのかしまいながら言った理穂


―― “憧れ”


好きになった理由も述べられない


やはり憧れなのか…


『わからないよ…』


ホントにわからなかった


憧れと恋との境目


よく好きな芸能人は憧れと言えるが目の前に居る人を憧れと言えるのか…


『結婚してるんでしょ?』

理穂のこの一言にへこむ


『応援したいけどさ、辛くなるだけだよ。憧れで止めておいたほうがいいよ』


理穂の言うことは確かに間違ってなかった


頷く自分がいた


ホント間違ってなかったから


これ以上になると自分が辛くなる


先生にも迷惑がかかる


これは憧れだ


先生は“憧れの人”なんだ


そう自分に言い聞かせた


でもその日の放課後


確実に“憧れ”から“恋”に変わった







慣れてきたせいか六時間授業も短く感じてきた


掃除が終わり帰る準備をしていた


『東原〜』


担任が私を呼ぶ


『なんですか?』


教師からは優等生と思われている


授業中も静かだし成績も悪くはない


『ちょっと職員室に来てくれないか?』


学級日誌を持ちながら私に言う


『……はい』


恐る恐る返事をしてカバンを持ち職員室へ向かう


職員室前に着いて


担任が言った


『E組の担任が東原に聞きたいことあるらしいから』


『……E組?』


わけがわからなかった


『E組の田部先生。説教ではないから安心しろ』


説教じゃなかったら何を聞くのか…


恐る恐る職員室へ入った


田部先生は私のクラスの情報の先生


中年のオジサンで眼鏡をかけてるからすぐにわかった


『なんですか?田部先生』

プリント整理をしていた田部先生が振り向く


『あっ東原。聞きたいことあってさ』


と言って私を職員室のソファーに招く


『夏目のことでさ』


夏目…


夏目あかり (ナツメアカリ)


私の中学時代からの友達


親友と言ってもいい


私は第一希望の学校を落ちて


へこんでたとき


あかりが支えになった


“私がいるから楽しくなるよ〜一緒に頑張ろう!”


そう言ってくれた


落ちても親友と一緒の高校に行ける


そう思えた


もちろん朝と帰りはいつも一緒


部活も一緒だった


だけど入学して3ヶ月経ってあかりは急に学校を休むようになった


どうしたの?とメールで聞いたらちょっと体調良くないんだっときた


体調か…早く治して学校一緒に行こうね!と返信した


それが最後のメール


来ると思ってたから


あかりが学校に来なくなって早1ヶ月過ぎた




『あかりまだ来てないんですか?』


『あぁ…』


即返事をする先生


『…。』長い沈黙


それを破ったのは田部先生だった


『実は今日…退学届けだしてきたんだ…夏目』


驚きを隠せず先生の目を見た


『嘘ですよね?』


椅子から身をのりだし


田部先生に尋ねる


『嘘じゃな…『なんで?』』


田部先生の話を聞く前に私はパニックになってた


『なんで……?』


『どうして……』

独り言のように囁いた


職員室だから泣くのは我慢した


『…理由は家庭の事情としてる。真実はわからない』

腕を組み直し話す田部先生


――わからない…


なんでこの先生は知ろうとしないのか…


そう言おうと思ったが人のこと言えなかった


私も知ろうとしなかった


毎日メールすれば良かったのに


会いに行けば良かったのに


自分のことしか考えてなかった


今この高校に居るのはあかりのお陰なのに


『何か知らない?』


知るはずない


知ろうとしなかったから


体調が悪いと思ってたから


『何も…知らなかったです』


『そうか…』


足を組み直す先生


『……。』


頭が真っ白になった


『ありがとな、もう帰っていいぞ』


そう言いソファーを立つ田部先生


『はい…』


そう言い職員室を出る


帰ろう…そう思いカバンを持ち玄関に向かう



上靴を脱ぎロッカーを開ける


外靴を出し履こうとしたとき


涙が溢れ出た…


なんで?


どうして?


何も言ってくれなかったの?


何か出来ることがあったかもしれないのに…


私が悪い…


私が支えるべきだった


聞くべきだった……



玄関に座り込み


放課後の静かな玄関で


声を抑えながら独りで泣いた


『ッ…クッ……ッ…』


溢れる涙


遅すぎる後悔


久しぶりに泣いた




『東原?』


神は私を見てくれてるか


こんなときに


あなたが私の前に現れた


急いで涙を拭く


そして現れた人を見る


間違えなかった


そこに居たのは…


『……斎藤先生…』


小さな声であなたを呼ぶ


先生は玄関を左右に見ながら


私の横に座り始めた


『なした?』


足を伸ばし私に尋ねる


『…なんにもないですよ』

笑いながら外靴を履く


『なにもないのに独りで泣けるのか?』


私を横目で見る先生


履くのをピタッと止める


見てたんだ…先生


でも迷惑かけられないよ


そう思いまた嘘をつく


『…独りで泣くの特技なんですよ!…ほらっ!演技の練習!!』


アホだ…自分アホだ…


なんてわかりやすい嘘


そう思いながらも笑って見せた


『……素晴らしい特技だな』


そう微笑みながら答えた先生


『……すごいで『いやっ……』』


自慢しょうと言いかけたとき先生が止めた



『……素晴らしい嘘だな』


また私を横目で見る



口をポカーンと開き先生の方を見る


そこに居たのは“教師”をしている斎藤先生ではなかった


“父親”の顔をしていた


優しい目をして心配している


『………。』


すぐに目を反らし下を向く私


何も言えなくなった


『はぁ〜…なぁ東原?』


溜め息をつき私を見る


『…俺は頼りないか?……頼りないか??』


二度も聞く先生


私は先生を見る


静かに横に首を振る


私の目には涙がすでに出てた


何度も何度も


首を横に振った


違う…違うのぉ……


『東原……』


囁くように


優しく優しく


包み込むように尋ねる先生


『言って?迷惑なんて思ってないから。頼れよ。』


先生の目力は半端じゃない


キリッとした先生の目


その瞳に涙を浮かべてる私が映ってる…



『先生…』


ついに私は先生に甘えた


甘えてしまった


さっきの話を先生にして


先生は頷きながら真剣に聞いてくれる


『うん……うん……』


自然と涙が止まらなくて


先生の前で小さい子供のように涙を流した


『私が悪かったんだよ、話聞けたのに…』


オデコに手をつき下を向く


そんな私に先生は今までの経験の話をしてくれた


友達でも親友でも言えないことはある


家族の事情で辞めてく生徒もいる


そして先生は最後にこう言った


『自分を責めるな、東原が悪いんじゃない!友達が自分自身で決めたんだよ』



誰かにこの言葉を言ってほしかったのかもしれない



スッと何かが抜けた気がした


『なっ??』


先生が私を見る


それに小さく頷いた私


『ありがとうございます…』


先生の黒いジャージの袖をちょっとつまんで


お礼を言った


『……友達思いだな』


そう先生は言いながら


私の頭に手をおき


ポンポンと優しく叩いた


あなたの大きな手が私の頭に…


やめて…


そんなに優しくしないで…


あなたの手が暖かくて


離れたくなかった


でも昼に言われた理穂の言葉が頭をよぎった


“自分が辛くなるだけだよ”



……もう遅いよ、理穂


このとき


私は気付いた


あなたに


先生に


憧れではなく


ホントの恋をしたんだと


あなたが必要なんだと



『ホントにありがとうございます、先生』


頑張って笑顔を作って見せた


『あぁ…また何かあったら…『いいえ、もう大丈夫です』』


今度は満面の笑みで先生に返した


外靴をちゃんと履いて立った


『帰ります、先生』


『おっおぅ!俺も部活行かなきゃ』


そう言って先生も立った


『さようなら』


『さようなら』


先生が手を振る


私は控えめにお辞儀をしてサヨナラをした




帰り道…


もう夏も終わりに差し掛かり


日が暮れるのが早くなって夕日が出ていた


ねぇ…夕日さん


いいですよね?


叶わない恋をしても


私はあの人がいないとダメなのかもしれません


ねぇ…


いいですよね??



返事なんて返ってこないのはわかってる


でも問い掛けてみた


恋は自由なんだ


自由なんだ



誰も認めてはくれないから自問自答で言い聞かせる



夕日が応援してくれてるかのように


今まで以上に明るかった夕日が私を照らしていた


照らされている私の目には


光る一粒の涙が流れていた




読んでいただけたらぜひコメントください。寂しいです…(笑)

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