黒崎加奈子の場合
初投稿なので至らぬ部分があると思います。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9724812
続きはpixivに投稿しています。
俺が誰かって?全く…こっちが聞きたいよ…記憶喪失の自覚があるんなら警察とか病院にでも行けってか?はぁ…それが出来ればいいんだけどねぇ…生憎死んじゃってるんだよねぇ…
ーーーー
巷にはいろんな都心伝説で溢れてる、あるはずの無い駅に降りてしまったとか呪われたCMがあるとか、完全に嘘だと否定された物や妙な真実味を帯びてるものだってある。
最近だとこんなのまである、犯罪とかでもない限り無報酬で協力してくれる幽霊がいるらしい、会いたかったらとあるメールアドレスに依頼すればいいらしい、でも口外すると病院に連れてかれるとか…
幽霊にメール(笑)とか妙にくどい文章だなwwとかつっこみどころが多いため信憑性が低いとされていた。
黒崎加奈子もその一人だった。
ーーーー
ネットサーフィンの最中サイトの隅にある広告を誤タップで偶然見つけたメールアドレス、真っ白なページの左上にポツンと書かれたメールアドレス、噂だと幽霊のメールアドレスは真っ白な画面にポツンとかかれているとも反転文字のように目には見えないとも聞く。
最初はこんなのウィルスかなんかだと一蹴する、ただ加奈子にはあまり誰にも相談したくない悩み事があり藁にもすがりたかった、暫く逡巡の後ウィルスでもなんでもどうにでもなれとポツンとかかれたアドレスにメールを送ったのだった。
すると程なくして近所のレストランの住所を教えて欲しいというので住所を送ると絶対に忘れないでと注意書きをされている合言葉らしき文字列と待ち合わせ時間だけが返信されてきた。
「ほんとなのかなぁ…」
丁度待ち合わせの時間が仕事終わりに寄るのに都合がよかった加奈子は半信半疑だった。
まさかレストランに幽霊が?バカバカしい、無駄足だったのではと思い始める。
黒いロングヘアーと黒を基調としていて一見地味だが決して華やかさを忘れてはいない絶妙なバランスのコーディネートの加奈子
ウェイトレスに後でもう一人来ますと告げて案内された席に座る。
何も注文しないのもなんだか気まずいので加奈子はアイスクリームを頼みちまちまと咀嚼していた、
しばらくすると制服を着た女子高生が一人加奈子の向かいに座り込んだ、肩よりやや下にまで伸びた髪の毛にかかったカールがなんとも可愛らしい。
ただ何の了承も得ずに勝手に向かいの席に座られるのは気持ちの良いものではない、加奈子が注意してやろうとした時であった。
「…ルカ」
「…はぁ?」
低いトーンで呟く女子高生、加奈子は思わず間の抜けた返事をしてしまった。
「…ル、カ」
「…あ…えっと…パチョーリ…」
「…お互い顔も知らないんだから合言葉は忘れないでくださいと言いましたよね…」
「…すみません」
ルカ・パチョーリというのは合言葉だった、加奈子が残りのアイスクリーム食べていると女子高生がウェイトレスを呼んでハンバーグを注文した、程なくして加奈子はアイスクリームを食べ終わり女子高生はちょっと待ってててと囁きハンバーグを見つめる。
食べるわけでもなくじっとハンバーグを見つめる女子高生、無言だが目は燦々と輝いている、そしてほお張る、物凄く幸せそうだ。
まるでグルメ番組をミュートにして見ている気分、一言も発しないが随分と美味しそうに食べていた。
ーーーー
「えっと見た目は女子高生ですけど本当に幽霊…さん?」
「う~ん…幽霊…なのかな…自分でもよく分からない、えっと…とりあえず池谷美緒…だから美緒って呼んでください、本名を名乗らない理由は後で話しますから…」
ハンバーグを平らげた女子高生は鞄から生徒手帳を取り出して自らの名前を述べた。
「ええと…私の名前は黒崎加奈子よ、えっと…本題に入る前に聞きたい事があるんだけど良いかしら?」
美緒はその前に一つだけ質問と言った。
「えーと…私の事…疑わないのですか?」
「え?だってそのための合言葉でしょう?」
そういうことでは無いのだが彼女は疑ってはいないらしい。
「それでえ~と…それで美緒ちゃんは一体なにができるの?やっぱり…呪い殺しちゃったり…する?」
「いやいやいや…そんな物騒な…私幽霊風情が出来るのは憑依位ですねぇ…しかも女性限定…さらに任意の方に憑依出来ません、あはは…」
ちょっと困り顔の笑顔が可愛い。
「ええっ、…ということは今やっぱり…美緒ちゃんは女子高生に憑依してるってこと?」
「はい、身体を少し拝借して依頼者様のお手伝いをしています、こんな私ですが…頼み事はなんでしょう?」
タダで利用できる便利屋では?というのは加奈子の感想。
本当に憑依してるの?とじろじろと見てくる加奈子、いつもの事だが恥ずかしい。
やっと、見つめるのをやめて加奈子がまあ…術なき時の神頼みって言うし…と呟くと本題を話し出す。
「…実は付き合って三ヶ月になる彼氏がいるんだけど…最近お互い休みの日もなにかと理由を付けて断ってくるんだよね…それで男性ってこういうもんなのって友達に聞いたら彼は女ったらしっていう噂があるの…だから真偽を確かめてほしいの」
加奈子が溜め息混じりに言う。
すると美緒がうつむき加減に話す、ただし固い感じに微笑んで。
「…あのー…これ…私である必要…あります…か…?」
「え?」
溜め息混じりの拗ねた顔から一変きょとんとする加奈子
「だって…ほら…浮気調査なら探偵に頼めば…」
「だって…あなた無料なんでしょ?」
「え…ええ…まあ…だいたい…」
「た、無料に勝るものは無いから選んだのよ、浮気調査の尾行は犯罪じゃないわよね?ならやってくれるわよね?」
明らかに動揺してる辺り無料云々は後付けの理由と推測するのは容易であった。
「は、はい勿論やります…やりますから落ち着いて…」
加奈子が発した声のせいで周囲の視線が痛い、そして尾行とストーカーは紙一重なんて言ったらビンタされそうだ、女子高生の体を傷つけるわけにもいかない。
「わ、分かってくれればいいのよ…それで彼デートは明日病院行って検査するから無理っていうのよ、だからほんとかどうか確かめるために私も一緒に尾行するわ、美緒ちゃんも誰かに憑依しといてね」
「えっ、あ、は、はい!」
本人自ら尾行とはいよいよ美緒に依頼する意味がぼんやりしてきた。
「えと…では明日の八時に駅前、合言葉は私がセヨム、と言いますので加奈子さんがメンゲシャと言ってください、それともう二つ」
美緒が一度区切って軽く呼吸を整える。
ちょっと微笑んで
「私の事…知ってますか…?実は記憶喪失で…」
わかり…ます?と小声でさらに一言
「どうりで本名を…今さらなに言われても驚かないけど…その質問ちょっと無理がない…?年はおろか姿すら分からないのに誰って…」
微笑んだ顔に軽くキュンとしながら加奈子は言う。
「いや、そうですよね…自分が誰なのか分からなくて…こうして困ってる人を助けつつ手がかりがあれば一石二鳥かなと思ってまして…」
随分親切な幽霊だなと加奈子は思ったが浮かばれずにさまよっているようで気の毒だとも思った、しかし何かしてあげられるかと言われればなにもできない。
「それともうひとつですが…これ…奢ってくれません…?この方の財布をくすねるのはちょっと…」
えへへと笑う美緒を前に加奈子も苦笑して支払うしか無かった。
ーーーー
翌日加奈子の彼氏の自宅から最寄り駅の千提駅前広場で待ちくたびれていた、現在7時57分まだ昨日の幽霊は現れない、探そうにもどうせ違う姿だろうから探しようがない。
「はぁ…あと三分…全く一体何処なの?」
時計の針が58分を指そうとした時だった、後ろからちょんちょんと指先で肩をつつかれた。
「セヨム」と後ろから一言、加奈子は「メンゲシャ」と返す。
加奈子はなぜギリギリだったのか問いただそうと振り向いて全ての力を引っこ抜かれる。
「…なに…その格好…」
「えと…まあ…その…見ての通り…です」
振り向くと加奈子の胸ぐらいまでしかない小さな背丈の女の子…ただしゴスロリ
加奈子はこの手の方面は詳しくないが真っ黒なメイド服というのが加奈子の感想、ただ黒く艶のある髪の毛は羨ましかった。
かなり気まずそうに昨日の幽霊というかゴスロリが話だす。
「えと…憑依する身体は選べない…とは昨日言いましたよね…それで駅前で憑依したらこの通りでして…あまり身体から出たり入ったりすると今度は私の負担が大きいので…その…すみません…」
加奈子としてはギリギリとはいえ時間に遅れなかったので怒る気は失せた、というよりはまさかのゴスロリという衝撃のあまりなんだか怒ることすら馬鹿馬鹿しい。
「はぁ…にしてもまさかゴスロリとはね…思いっきり目立つわね…」
ゴスロリ幽霊はばつが悪そうに俯いている。
「まあいいわよ別にそんな縮こまならくても、よく考えたらあなたが見つかっても顔を覚えられる訳じゃないしね」
すみません…と小さく呟くと免許証を差し出してきた、この名前で読んでほしいと言うことだろうか。
「えーと…神埼穂野香…ほら、縮こまってないで適当なところに隠れるわよ」
「いや…その…は、恥ずかしい…です」
はいはいそうだねと引きずられて森ガール加奈子とゴスロリ穂野香は駅前広場の隅へとはけていくのであった。
ーーーー
暫く雑談をしてると加奈子が肩を叩いて小さく「あの人」と呟いた、加奈子の視線の先にはやや茶色がかった髪色に寝癖(穂野香にはそう見えた)見たいに跳ねた髪型、いわゆるツンツンヘアーそしてこれでもかと気合いの入った服装、まさか病院に行くだけでここまで気合いを入れる人はいるのだろうか。
加奈子も同じことを考えていたのか「…怪しい」と呟いた。
彼の名前は鬼無誠二と言うらしい、彼は改札を定期でさっと抜けるとそのまま病院とは真逆の方向へ向かう電車に乗り込んで行く、加奈子は隣の車両、穂野香は誠二のすぐ近くに座った。
駅を一つ二つと通り過ぎ三つ目の舞寒駅で降りた、舞寒地区は東京で言うところの原宿や渋谷のような若い人間が多く集う街だ。
若い人が多いせいなのかゴスロリのようなファッションも多い、千提駅では変な目で見られたりもしたがここではそういうこともない、なので舞寒地区に限ればゴスロリも目立たないらしい。
それはそうとここには大病院なんて無かったはず、誠二が病院に行くと言うのは嘘なのは明白だった、それを裏付けるかの如く誠二は駅から出てまもなくその辺の女の子に片っ端から声を掛けていくのが見えた、いわゆるナンパだろう。
こんな現場を目撃して加奈子さんもさぞや悲しいだろうにとふと目をやると般若の面のような顔をしていたのでその心配は無かった。
暫く誠二を観察していたが女の子に毎回突っぱねられている、最初はニコニコしていた女の子もそのうち笑顔が消えてどっか行けと手で払い除けるように誠二の誘いを断る。
何を言っているのか気になるところだが遠くにいる誠二の声は雑踏に踏み潰されていた。
「穂野香、行ってきて」
「はぇ?」
なんだかアニメキャラクターのような声で間抜けな返事をしてしまった。
「あんたかわいいんだからちょっと誠二のナンパ受けてあたしのところまで連れてきて」
「えっ、いや、その…」
「大丈夫よ、覚悟はできているから、あんたかわいいからほら、行って」
穂野香は覚悟できてない。
加奈子に言われるがまま背中を押されて穂野香は誠二の方へ向かう、途中加奈子の方を振り向いたがほら、行ってとジェスチャーで返された。
ーーーー
「お、君かわいいね~、そういうの何て言うんだっけ…え~と…まあいいや、ちょっとそこのホテルで休んでかない?」
ナンパとはどういうものか考えててみよう。
ナンパというのは大体女の子を誉めたり一緒にお茶に誘うとかではないのだろうか、誠二のナンパが不発続きの理由がよくわかった、そして加奈子も加奈子だ。
「え…いや…あ、あのー、道が分からなくってー、ちょっと一緒にー、来てくれますか~?」
穂野香精一杯の女口調、わざとらしいぶりっ子になってしまったかもしれない。
「お、いいよいいよ~お兄さんに任せなさい」
男という生物は悲しいものだ。
身体の持ち主が丁寧に整えたであろう美しい黒髪も誠二が遠慮なくわしゃわしゃと頭を撫でるせいで乱れてしまった。
身体が示す嫌悪感に耐えつつ加奈子が待っているところまで誘い込む、すると加奈子が泣きながら
「こんの…女ったらしっっ!!」
誠二に痛烈な蹴り、その場に倒れ悶え苦しみ苦悶の表情からはなぜ蹴られたのか分かってなそうだった、そんなことには目もくれず加奈子は泣きながら走って行くので穂野香も慌てて追いかける。
加奈子は泣きながら走って行き、路地裏に入ったところにある落内川に架かる橋から身を乗り出す。
「止めてくださいっっ!!」
橋の欄干から身を乗り出して飛び降りようとする加奈子を引っ張るが穂野香の身体は力が弱く思うように加奈子を引きずり降ろせない。
「止めてくださいっ!あなた自分で何してるのか分かってますか!?」
「離してよ!あんな男に騙される私なんて…私なんて!」
穂野香は引っ張られより強く加奈子が強く抵抗する、このままだと加奈子は穂野香を振りほどいて飛び降りてしまう。
「私を…私を見ても尚死にたいと思いますか!?自分がどこの誰かはおろか性別すら曖昧、私の力になってくれる人なんて誰一人居やしない、こうやって他人の身体を借りないと誰かに意志を伝える事もできない、こんな…こんな惨めな私を見ても同じ事を言えますかっっ!!」
穂野香は顔を歪め泣きながら叫んだ、この後のことはよく覚えていない、加奈子の力が抜けていたのか穂野香渾身の力が入ったのかどうにか橋の欄干から降ろせたらしい。
気がつくと加奈子は泣きじゃくってごめんなさいと何度も言っている。
「いや、全然いいんです、その、寧ろごめんなさい、手荒な真似をしてしまい」
穂野香は全然良かった、もし死なれて自分みたいになってほしくない、ただそれだけだった。
ただ…一番良くないのはこの身体の持ち主かもしれない、髪の毛がぼさぼさになるわ服は汚れるわと持ち主に迷惑をかけまくっているがまさか服を洗うために脱ぐわけにもいかない。
ーーーー
「はぁ…なんだか疲れちゃった…お昼ご飯…食べない?今日も奢るからさ」
暫く穂野香は話や愚痴を聞いてあげた、やがて吹っ切れたのか加奈子には笑顔が戻って奢ってくれると言ってきた。
「ふふっ、ではお言葉に甘えて」
その後二人は飲食店へ行きしばらく食事をした、加奈子が勘定を済ませて二人が店から出て行く、しばらくすると飲食店の近くでスマホで何度も謝罪をする女の子がいたという。
ーーーー
「あんた身体の持ち主にはなるべく迷惑をかけないいってるくせに思いっきり迷惑かけちゃってるじゃない…」
「あはは…配慮してるつもりですがころころと身体を変えられないもので…え~と…まだ何か…?」
頻繁に変えなければいい話なのでゴスロリとはお別れ、今は部活帰りの女子高生、依頼はあれで解決したらしいが加奈子がついてきてと言う。
「うん、実は家に来てほしいなって、昨日はね、何も力になれないと思ったけど」
「家…ですか…?」
彼女はそう、とだけ返事を返した。
阿日瀬駅から歩くことおおよそ10分、10階建てのマンションが見えてきた。
そこの四階、エレベーターから降りて三つ目の部屋、そこが加奈子の部屋だという。
玄関を開けるとすぐ右には洗面所とお風呂、左にはトイレ、扉を開けると6.5帖ぐらいのダイニングと右側にはキッチン、左の襖みたいな戸を開けると5帖ぐらいの空間にベッドがあった。
「一人暮らしでこの部屋…ですか…」
随時と広いなというのが最初の感想、一人暮らしなんて部屋一つあれば良い方だと思っていた。
「さ、ゆっくりして、今お茶を淹れるから」
「あ、いえいえいえ!お構いなく、この身体も早く返してあげないといけませんし」
「そっか…じゃあ…はいこれ」
加奈子が手渡したのこの部屋の鍵だった。
「幽霊?で記憶喪失てことは自分の居場所もないんでしょ?だからなにか…力になれることはないかなって考えたの」
「だからってこれは…」
女子高生が鍵を返そうとしたが断られた
「あれよあれ、友達に合鍵渡すようなものよ、別に憑依してなくても入ってていいからね」
というと彼女はお茶を淹れて持ってきた、結局一杯頂いたあと合鍵はメーターボックスの隅に合鍵を隠した。
女子高生の身体は返してそのまま加奈子の部屋にお邪魔する。
「ん?もしかしてそこにいるの?」
すると彼女はスマホのカメラを起動させ写真を撮った。
「おおーほんとに撮れてる…魂?だけの状態だとなにもしてあげられないけど、ま、ゆっくりしていきなよ」
そういうと彼女は喜々として今撮った写真をテレビ局に投稿するのであった。
もしかして少し長すぎたでしょうか…
駅名や川の名前…ややこしいようでしたらふつうの名前に差し替えておきますね。
以外と話…思いつかないものですね、削除はなるべくよした方が良さそうなのでこのままのこしておきますね。