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第6話 時には自分で行動せよ!

足下に広がる人の畑、少し前まで、私もあそこにいたのか…

目の前の光景に驚き、思わず後ずさると、後ろの床に穴があき、アームに吊られて兵長が出てきた。他の乗員達も同じ方法で出てきた。すぐに出口のドアから看護婦達が走ってくる。私がそうであったように、兵長達も直後はうまく動けないようだ。身体の表面から水気がなくなる頃には、全員自力で上体を起こしており、兵長に至っては半分も拭かれない内に看護婦を下がらせ、立ち上がってロッカーの方へ向かっていた。着替え終わったタイミングを見計らい、兵長に歩み寄る。背筋を伸ばして敬礼すると、気怠そうに答礼を返してきた。


「どうだ、生き返った感想は」

「まだ実感がわいておりません。変な気分です」

「そうか、窓側にいたな、タンクなど眺めて楽しかったか?」

「いえ、ただただ驚いておりました」

「正直な奴だ。さて、私は上官へ報告に向かう。お前は兵舎へ行ってカレル上等兵を探してこい。奴は無線手の経験があるからお前の師匠にぴったりだ、ただし気をつけろ?本職はBTシリーズ専門の車長だ、階級上口調は問題ないだろうが、奴は質問責めを嫌う。あれこれ聞き過ぎると対応が冷めるぞ」

「了解しました。一つ質問をよろしいでしょうか?」

「早速だな、許可する」

「兵舎はどちらでしょうか?」

「フハハハ、出口を一歩出て見ろ。独野郎やアメ公にも分かるようになっている」

「失礼しました。それでは兵舎へ向かいます」

「うむ、しっかり学べ」


敬礼をした後、私は部屋を出た。確かに、壁に大きく、様々な言語で案内の文字が書かれた看板があった。それに従って、兵舎へ着いた。兵舎のドアを開けると熱気が押し寄せてきた。あちこちからしていた話し声が一気に止み、私に視線が集まるのを感じる。対応に困った私は、とっさに背筋を伸ばし、敬礼して自己紹介を始めた。


「失礼します。先日ソ連赤軍戦車隊に配属になりました。KV1無線手、シーマ2等兵であります!カレル上等兵はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」

「フハハハ、おいみんな、ひよこが敬礼してるぜ」

「ハハハハハ」

「hahahaha」

「ワハハハ」

「おい坊主、タバコ支給されたろ?俺にくれたら教えてやるぜ?」

「おい待てよジェームズ、お前禁煙中だろ?」

「俺によこせよ。俺が一番偉いんだからよ。なあみんな」


この問いかけに10人くらいが一斉に食ってかかる。冗談だと笑い飛ばす者から、対抗心むき出しで迫っていく者まで、様々だった。最終的に迫ったものと腕相撲が始まり、みんなそこへ集まっていく、呆気に取られて見ていると、輪の外を私へ向かって近付いて来る小男が目に入った。私は敬礼を一度辞めて向き合うと再度敬礼したが、彼は我々とは別のやり方で敬礼らしき行動をすると、片言のロシア語で一言、


「付イてコイ餓鬼」


と言って腕相撲で盛り上がる兵舎を後にした。彼の後について、私もそそくさとその場を立ち去った。

第6話です。兵隊は娯楽に飢える。これは偏見ですかね?

カレル上等兵、容姿については身長しか書きませんでしたが、小男の方が戦車兵には向いてます。これが彼が推薦された理由?

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