第4話 如何なる時も、注意せよ!
砲口がこちらを…それは経験者にしか分からない絶望的光景、そして、死の知らせだ
「うわ~!」
思わず悲鳴を上げ、衝撃に備えて体を引っ込めたが、数秒経っても敵は撃たなかった。
「イワン!撃て!」
「食らえー!」
ドン、ガン
そうしている間にも兵長達は撃っていた。私の左側からエンジン音が近づき、T1が撃とうと車体を出した。
「全速後退!急げー!」
「了解!」
何故だ?一瞬そう思ったが、次の瞬間にはギヤが変わり、ガクンと前の壁に頭を打ち付けた。いきなり後退を開始したせいだと思ったが、その後、一瞬全ての音が消えた。
ドーン
『こちらT1、土手っ腹に榴弾貫通!HP損耗40%、グワー…ぶつっ』
『こちらウルヴァリン、配置に付いた。撃たれたようだが、大丈夫か?』
右耳の無線から声が聞こえる一方、左耳からは依然音が聞こえず、耳鳴りがしていた。意識がもうろうとし、座席に倒れるようにして座り込んでいる私を、兵長が蹴りながら何か叫ぶ…
「おい、シーマ、シーマ、聞こえるか?しっかりしろよ!おい!」
だんだん声が遠くなり、視界が暗くなり始めた。右手をゆっくり動かし、左耳に触ると、左耳から何かでている。生暖かい、どろっとした物だった。右手を視界にもってくると、手が血塗れだった。視界の暗さが増し、そのまま私は意識を失い……
死んだ
「負傷情報、T1操縦手、KV1無線手、負傷、及び死亡」
第4話 完
第4話です。たった4話でいきなり語り部死亡、なんという小説だ…
次回、彼の身に何が起こったかがわかります。