第14話 反応には注意せよ!
S51はでかい。しかし、上には上が居るものだ
『こちらS51、〈レースに参加する戦車は一列に並んで下さい。壁役は配置について下さい〉』
『こちらPz1c、了解!』
『こちらAMXELC、了解!』
『こちらBT7、了解!』
『こちらMaus、了解!』
「S51より、配置について下さいとのことです」
「了解した。スタート地点近くの分岐路をふさごう。全速前進」
「了解!」
「こちらKV1、了解!」
「11時の方向の分岐路、左側の道をふさげ!」
「了解!」
『こちらAMXELC、〈コース説明をするので参加戦車は付いてきて下さい。壁役もそれに合わせて配置して下さい〉』
『こちらMaus、了解!』
レースに参加する戦車がELCに付いて動き出した。私たちの周りを次々に追い越し、快速の戦車達は分岐路の右の道を進む。
「配置よし、停車します」
「後ろ向きじゃ意味ないだろうが!旋回しろ、信地旋回右90°急げ!」
「了解!」
戦車が一瞬きしみ、右に回り出す。
「土手っ腹を向けるのですか?」
「そうだ、今回は壁になるのが任務だからな、面積は出きるだけ広くしよう」
「了解!」
私達が配置に付く間に、コースの下見に行った戦車達はスタート地点に戻っていた。
『こちらKV1、配置完了!』
『こちらMaus、トラップ配置完了、楽しみにしてな』
『こちらS51、了解!』
『こちらAMXELC、〈スタート時刻は?〉』
『こちらS51、〈15:00を予定、準備して下さい〉』
『こちらBT7、了解!』
「S51より、レース開始は15:00だそうです」
「了解した」
「こちらKV1、了解!」
時間が来るまで待機する。エンジン音だけが響く中、唐突に砲手が兵長に聞いた。
「Mausの仕掛けるトラップって何でしょうかね?兵長」
「Mausと言ったらあの壁のような巨体だろう?なら、アイツが動くだけで十分トラップだ」
私や装填手は笑ったが、兵長と操縦手が真顔だったことで、笑いはすぐに消えた。冗談を言ったわけではない。という事だ。
「おかしいか?俺は冗談を言ったわけではないのだがな」
もはや誰もクスリともしなかった。操縦手が震えだしているのに気が付く。
「こいつらは知らないらしい。場所を移動する。3時方向に進んで道をふさぎつつMausが見える場所に再配置しろ」
「り、了解…」
「どうしたんだ?」
「別に…」
操縦手の異常にみんなが気が付いた頃、レース開始の時間が迫ってきた。
「は、配置完了です…」
「了解した。お前ら、Mausをよく見ておけ」
私達のいる分岐路の坂を下ったところに、2本の道をふさぐ巨大な壁があった。S51よりもさらにでかいそれを戦車だと認識した時、後方で凄まじい砲声が鳴り響いた。
ドドドーーーン…
慌てて振り返ると、S51の砲口から水蒸気の柱のような白煙があがっており、レースの戦車達が一斉にスタートした。
第14話です。体調不良で更新滞ってます。15、16話はちょっとグロイので、想像力豊かで心臓の弱い方はお気をつけ下さい