第1話 着任、出撃準備完了せよ!
ある日、私は雇われた。今日から、私の人生が始まる。
私の名前はシーマ・マリノフ、新任の無線手だ。
今日から、この場所が職場になる。前方に居た軍人へ向けて、私は気を付けの姿勢をした。
「おはようございます。本日付けで配属になりました。シーマ・マリノフであります!」
私は兵長の階級章を付けた軍人に挨拶し、敬礼する。向こうも振り向き、答礼を返してきた。
「休め!新しい無線手か?」
「はい!そうであります」
「戦闘経験は?」
「まだありません」
「そうか、俺はハルコフ、おまえの乗る戦車の車長を務める」
「了解しました。よろしくお願いします」
「しっかり頼むぞ」
「了解!」
感じの良さそうな上官だ。これから彼の指揮下に入ると思うと、少し安心した。
周りを見渡す。ハンガーは広く、沢山の戦車が並んでいる。あちこちで工具や機械音が聞こえ、かなりうるさい。そこかしこに兵がおり、整備兵達が走り回っていた。
急にハンガー内にアラームが鳴りだした。
ジリリリリリリリ…
「出撃命令!出撃命令!KV1に出撃命令発令。直ちに出撃せよ!」
「配置につけ!出撃用意!」
「了解!」
「早くしろウスノロどもが!」
「了解!」
私も駆け足で戦車を目指す。KV1と呼ばれるその戦車は、訓練施設で乗ったものと同じだった。ダークグリーンの車体に登り、車体にあるハッチから乗り込む。ここまでは訓練通りだ。私が乗るのは車体の左前方部、車体前方機銃手も兼任する。ハッチを閉め、ヘルメットを着用、無線機を操作してスイッチオン。司令部に繋ぐ。
「こちらKV1、シーマ、司令部、応答せよ!」
「こちら司令部、シーマ2等、状況報告せよ!」
「了解!無線感度良好。全乗員搭乗完了。出撃準備完了」
「了解!直ちに転送プロセスに移行する。引き続き戦闘準備を継続せよ!」
「了解!シーマ、アウト」
次に車内通信に切り替える
「車長殿、転送プロセスに移行します。引き続き戦闘準備せよとの事です」
「了解した。各員持ち場を守れよ。各部点検報告」
「駆動装置異常無し、エンジン良好」
「主砲、徹甲弾、装填準備よし!」
「照準、砲塔旋回装置異常無し、砲稼働不備無し」
「無線感度良好!異常無し」
「出撃準備完了。転送プロセスに備え待機せよ」
「了解!」
「シーマ、初戦だ。気を張れよ?」
「は!了解しました」
兵長に指示を受け、一気に緊張が高まる。
「こちら司令部、転送先を特定、転送プロセス開始15秒前。健闘を祈る。初戦を華々しい勝利で飾ってきて下さい」
「こちらシーマ、了解。頑張ります!」
機械的な声で車内にアナウンスが流れる。車外で重厚な機械音が響き始めた。いよいよ戦闘開始だ!
「転送プロセス開始10秒前、係員待避、転送プロセス5秒前、4、3、2、1、転送、御武運を…」
ビーーーーブゥン
そして、私の初戦闘が始まろうとしていた…
第1話 完
本サイト初投稿小説です。書き上がり次第、次話を投稿します。
某有名オンライン戦車ゲームの舞台裏で動く乗員達の日常を描きます。矛盾点や誤字があれば報告お願いします。