6 どうやらあっさりとピンチ脱出らしい。
街巡り序盤2です。
「へっへ~、お嬢ちゃんオレらと一緒に遊ぼうよ~」
こら、お前ら!5歳児に何するつもりじゃ!!
ニヤニヤと囲みを縮める男達は正にクズと言えよう。
アレクとハンスが果敢にも私を庇うように前後に立った。
ここで5歳児にもかかわらず男達を切っては投げ切っては投げできるかというと、ハッキリ言おう!
そんなチートな能力は欠片もない!!
今の私にできることは
「「「た~しゅ~け~て~!!!!!!!!」」」
と大声で助けを求める事くらいだ。
自分の中から大きなモノが爆発したような気がしたが一瞬のことだったので良く分からないまま呆然と立ちすくむ。
……あれ?何でみんな耳押さえて地面に転がってるの?
路地に面した家々からワラワラと人が出てきてたちまち人だかりができた。
「なんだい?今の大音量は??何か大きな魔物が吠えたのかい?」
(あれ?)
「なんだなんだ?こいつ等どうして倒れてるんだ?魔物にでもやられたのか?」
(え?)
「魔物?騎士様達を呼ぶかい?」
(え?)
「何だ、悪童共じゃないか。騎士様達が来るならこいつ等も連れていってもらうか。ちょっと牢屋にでも入れば懲りるだろ。」
(え~~~~~~?なんか大事になってる??って魔物って何~~~~??)
ワイワイと言いながら徐々に集まってくる。
人だかりであたりが混乱しみんなが右往左往している間に目を回しているアレクとハンスの襟首を掴みみんなの足下をくぐり抜けて人波から遠ざかる。
あれが私のチートだとしたら嫌過ぎる~~
涙目。
だが私はこの場を離れようとすることに一生懸命で思い至ることができなかった。
普通の5歳児の女の子に年上の男の子2人をいっぺんに引きずっていくことなど到底無理だということに。
「…う~」
「~耳がガンガンする」
アレクやハンス達が気がつき、頭を振りながらあたりを見回す。
「??」
「変な男達に囲まれたような気がしたが………」
「……………夢?」
罪悪感いっぱいだがここはバックレる!
「アリェク、ヒャンス!おいてっちゃうよ。」
「あ、待ってよミーコちゃん」
「おかしいなあ~、何でこんな所で寝てたんだ?」
2人を追い立てて「1段目通り」に出て今度はメインストリートをゆっくり登ることにする。
ここは「1段目通り」の真ん中あたりだからアレクの家のある「3段目通り」の上の方までだいたい5キロくらいだ。通りの内部寄り側は日差しが入っても大丈夫な道具屋や加治屋、食事処が多く並び、通りの海側には日差しがあっては痛みやすい魚屋、肉屋、八百屋や布地を扱う洋服の仕立て屋が軒を並べている。
海側に客室をしつらえている宿屋も此方側。
この街の宿屋は基本素泊まり。勿論この世界の庶民の家や宿屋に風呂など無い。通りに面したちょっとしたロビーに男女別にタイル張りの部屋が続いていてそこに水や湯の桶を持ち込んで体を洗ったり拭いたりするのだ。トイレも同じようにロビーに面して作られている。
食堂など無いのでこの街に来た宿泊客は先ず自分の気にいりの食事処を見つけ、ソコに一番近い宿屋に泊まるのだそうだ。
通りには騎士団の詰め所もある。
1つの通りに1つ作られたそれには大概2、3人が詰めている。
王の私兵である近衛兵は所謂貴族の子弟で構成され約100人。主に王城での警備を担っている。
城下町にある学校で見いだされ魔力を持つ軍人である騎士団は約1000人。こちらは主に
周辺の魔物狩りや訓練が日常だ。部隊ごとのローテーションで詰め所の当番があるという。
まあ、日々のキツい訓練や野戦訓練を兼ねた魔物狩りに比べると非常時以外する事もないので丁の良い休憩所のようになっている。
そこから駆けだしてきたらしい騎士様達が私達が出てきた路地へと駆け込んでいった。
「騎士様達どうしたんだ?」
通りを歩く人々の話が嫌でも耳に入る。
「なんでも路地に魔物が出たってよ」
「本当か!?ヤバいじゃないか!」
「だがなぁ?なんでも姿がないらしいぞ」
「はぁ?何だよそれ。で、誰か襲われたのか?」
「それがな~~、ほれ最近悪さばかりしている悪童共がいるだろ?あいつらが皆倒れてたんだと」
「………………自分らでなんかやらかしたんじゃ無いのか?」
「それも含めて騎士様達が調べるんだと」
「そうか。じゃあ危ないようなら何か後で発表があるか。」
あちこちで噂をする街の人がちらほらと見える。噂は電光石火だ。多分騎士様達を呼びに行った人間がついでにあちらこちらで話したのだろう。
でも……チンピラ的兄ちゃん達が何かやらかしたんじゃと言われている。スマン。
魔物と言われた私に比べれば心の傷は浅かろう。
死にはしないが成仏してくれ。ナムナム。
「2段目通り」に入った私達だが
アレクが腹が減ったと言い出した。
困った子供だと思ったがどうやら私を遊びに誘うついでにうちのパンを買って食べるつもりだったらしく朝ご飯を食べてないらしい。
辛抱たまらんというアレクは私の手を引いたまま手近の食事処へと突入していくのであった。
なんかスルッとピンチ脱出です。
次はアレク視点話です。
読んで下さった皆様方有り難うございました~