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家族が失ったモノ


あちこち旅していたペトとイエス。歩くのにも慣れてすでに弱音を吐かなくなったペトにイエスは突然こう言った。


「そろそろ行こうか。あの家へ。」


「あの家ですか?」


しかし家と言っても今まで色んな家に泊めてもらったりしたのでイキナリあの家と言われても今一ピンとこない。

そんな考え込むペトを見てイエスは苦笑いをしながら背伸びをした。


「十年前のあの家だよ。」


「ああ!あの心優しい家族の家ですね!!行きましょう!!実のところアレからどうなったか気になってたんですよ。」


そして長い道のりを歩いていく。


三日ほど歩いて何もなかったはずの道のりに遠くでも分かるようなドデカイ立派な館が建っているのを珍しそうにペトは眺めた。三階建てでいかにも大金持ちの気品ある家だ。何十億するのだろうか。


「今日はあそこに泊めてもらえるか聞こうか?」


「えっ...本気ですか師匠?」


聞き返したものの、イエスはただ単に悲しく笑うだけ。ペトには訳が分からなかった。だいたい、あの家族のところへ行かなければいけないと言うのにこんな寄り道をしていていいのか。


しかしながらこの師匠は全てを考えているのだから、無駄じゃないだろう。


そう思いながら彼は大きな門へ行き、インターホンを鳴らした。


『はい、どなたでしょうか。』


老いた老人の声がして、慌ててペトは聞き返す。


「大変にすみませんが、長旅で疲れていて食料ももう殆どない状態なんです。あわよくば寝床を用意してくれませんか?」


しばし老人は考えて、そして言いずらそうに答えた。


『旦那様に聞いてみます。もし、貴方様に失礼な事をしてしまった時は、どうか旦那様をお許しください。』


そういって一旦インターホンが切れた。


「どう言う事なんでしょうね?どう思います師匠?」


「そのマンマだよ。ペト。その時は許してあげたらいい。」


とイエスはまたも悲しそうに優しく笑う。


しばらくして門を開く音が聞こえ、一人の執事の老人がやって来た。どうやらインターホンのあの老人らしい。


「すみません。館には入れるなと旦那様がおっしゃるので、どうしてもと言うのなら大変申しにくいのですが、家畜小屋にならいいと...」


その言葉を聞いてビックリするペト。まあ、怪しい奴だと思われているだろうが、まさか家畜小屋にならいいなんて言われるとは...


「ええ、いいですよ。」


と師匠がニッコリ笑いながら答えてしまい、二人は結局その日の夕方、そこでお世話になる事になった。


「師匠!何であんな事をいったんですか!」


家畜たちに囲まれ、その者たちを撫でながらイエスは答えた


「怒ってるようだね?君はあの老人が誰なのか分からなかったのかな?」


え?と言いながらペトは考えた。そしてフ...と思い出したのだ。でも、そうだとしたら...本当にそうなら...とても気分が悪くなる。


「まさか、あの老人は十年前のあの―――...」


「そう、気前がいい、優しかった家族の大黒柱。あの貧乏だった家族の父親。」


「どうしてその父親があんな執事なんて―――...」


その時、途端に家畜小屋の扉が開き、例の旦那様とその執事がやってきた。


「ふん。汚らしい奴等め。何か盗んだら承知しないからな。ムチで十数回打ってやる。」


どうやらこの丸々太った男がこの館と、大きな土地の主らしい。荒々しい口調に人を冷たく見る目。着ている服はとても高そう。太ったこの男がシャキっと見えるのはどうやら服のおかげらしい。


「ここに一晩泊めてやるのはいいが、何もやらないで晩飯にありつけると思うなよ。まずはこの家畜小屋と庭の掃除、その後動物どもに餌を与えろ。それが終わり次第、お前らの晩飯、考えてやる!」


偉そうにいいながら彼は出て行った。


「すみません。昔は優しい、思いやりのある子だったんです。」


「貴方は昔に我々を出迎えてくれたあの貧乏だった人でしょう?」


ペトは単刀直入に聞いた。


「はい。そうでございます。あの後アナタ方が去って行った後、家の近くで宝箱を掘り当てたんです。そこには色々な宝石、金貨などがあり、お金に困らなくなりました。我が家は幸せになれる、そう思って土地を買い、家を建て直し、子供達を学校へ送ることも出来ました。しかし...段々と彼らは私に対して冷たく接してくるようになり...終いにはこのような扱いをされてる始末です。」


「気にする事じゃない。さあて、そろそろ頼まれた仕事をしようか?じゃないと晩飯に会えなくなるかもだよ?ペト。」


そう明るく振舞うイエスを見ながらペトはため息混じりに仕事をこなす。どうやら老人も手伝ってくれるらしい。


しばらくして夜になり、任せられた仕事を終えた三人は少し休憩をしていた。


「旦那様にお食事について聞いてきます。」


「あ、俺も行きます。」


「私はここでユックリしているよ。」


そう言いながらまたしても家畜たちを撫でるイエス。よく見るととても良く懐いているではないか。


「分かりました。」


そう言いながら二人はその場を後にした。


「君らはどう思う?あの老人とその変貌してしまった家族...」


イエスは誰もいないその小屋で一人言葉を放つ。聞いているのは家畜たちだけ。


「そろそろ...潮時だと思うかい?」


メ~

モ~

ワオ~ン

ニャ~

動物達はそれぞれ鳴いた。それをフム。と聞いているイエス。


「わかったよ。あの老人のためにあの子に試練を与えよう。君達の協力の下実行するよ?」


しばらくしてペトが慌てて帰ってきた。


「イエス師匠!大変です!!家畜たちが館の中へ入ってきたんです!!」


にも拘らずイエスはマッタリとペトが持ってきた晩御飯を受け取りながら食べようとする。


「そう。それで?」


「それであの亭主がお前らも手伝え!と...」


モグモグとパンを食し、ミルクを飲み、スープを飲むイエス。


「ふーん。」


「師匠!!」


「まあまあ、ほら、君もお腹空いてるだろう?食べたまえ。まずはそれからだ。」


そういい終わるかしないかの間にペトのお腹が鳴った。渋々目の前の食事に手を伸ばす事にしたペト。


「追い出されたらどうすんですか?」


「できたらの話だね。」


またしてもペトは師匠が何を言ってるのか分からない。


やっと晩飯を終え、二人は館へと歩き出した。その距離は結構長い。無駄に広い敷地だ。


館まで来ると、家畜たちが好き放題にしていた。


「この脳無し共!!何故遅れたんだ!!見ろこのありさま!!早くこいつらを何とかしろ!!これは命令だぞ!!」


その言葉にムっとしたペトが文句を言おうと口を開いた時だ。イエスが自分の手を前へスッと出した。


「人に頼み事をする時はどうやって頼むのかな?」


穏やかにそんなことを言うイエスに亭主は顔を怒りで赤くしながら怒鳴った。


「泊めてやっているんだ!その間はこの俺様の召使も同然だろうが!!いいからさっさとこの状況を何とかしやがれ!!」


これにより、ペトは怒りをあらわにした。この人間は腐りかけている。そうに違いない。しかし、イエスの方を見た彼はギョッとした。

何故なら師匠が笑顔だったからだ。だが、目は笑っていない。


「そう。ならいいや。頼むことも出来ない人は自分で何とか出来る人だからね。私達はそろそろ寝るとしようか。」


そう言ってイエスはスタスタと行こうとする。それに慌てた亭主が叫んだ。


「わ、分かった!!こいつらを何とかしてくれ!た、頼む!そしたら館の中の部屋を一つ貸そう!!お願いだ!!何とかしてくれよ!!」


その言葉を聞いて振り返ったイエス。


「聞こえないな~。なーんて言ったのかなぁ~??」


ここから少し遠くに移動してしまったがあのキンキン声が聞こえなかったなどとありえないのだが。


「くっ!こ、こいつらを何とかしてくれませんかお願いします!!」


殆ど棒読みの大声だったがイエスは引き返しながら笑顔で家畜たちに言った。


「ちゃんとお願いされたから、君たちもういいヨ~!戻ろう!」


するとどうだろうか。今まで言う事を聞かなかった家畜たちが素直にイエスの方に歩いていくではないか。


「な、何者なんだ...あいつ...」


亭主は驚きと恐怖でいっぱいだったが、老人は笑っていた。



ペトは慌ててついて行く。


「し、師匠...コレは一体...?」


「気にしない、気にしない!」


次の日に何を思ったのか亭主が朝のうちに現れた。しかも怒鳴りながら。


「おい!貴様何者なんだ?!何故に家畜どもはお前の言う事を聞いたんだ?!」


すでに朝ご飯を食べ終わっていたペトはイエスの代わりに答えた


「ただの旅をしているものです。」


「嘘をつけ!ただの旅のモノにあんな芸当出来るものか!!どうせ魔術師か催眠術師だろう!!どうなんだ!!」


「いえ、ですから...「いいかげんにしないか!」...あ」


それはあの老人だった。


「な、亭主に向かって何を...「黙れ!わしはお前の父親だ!!せっかく招いた客人に失礼な事を言うでない!!」す、すんません。親父...」


態度が十分酷かった亭主が急に活気を取り戻した老人に押された。


「今日でお別れじゃが、貴方達には勇気をもらいました。どうもありがとうございます。」


「いえいえ。必要と思ったまでですよ。」


そう言いながら二人は荷物をまとめる。


「旅路に必要な物は色々とこのリュックに入れました。」


「おや、気が利きますね。ありがたい。」


「お、親父!そのはみ出している毛布は俺の高級な毛布...「何か文句でもあるか金坊主?」いえ...ありません...」


あっという間に時間は過ぎ、ペトとイエスはその館を後にした。


「いやぁ~何があるか分かったものじゃないですね。」


「ふふ。そうだね。でも、もしもあの二人が変わらなかった場合は...もっと凄い事になっていたけど...」


「そ、そうなんですか...」


あえて何も聞かないことにするペト。

苦笑いしながらペトはイエスと共に今日も行く。



人生と言う名の旅路を。


一応これでこの話を中断させていただきます。

続編は後アイデアが現れ次第書く予定ですので。

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