幼馴染みとなら結婚しても幸せに暮らしていけそうだなと思っていたのですが……? ~個性的で楽しい日々は幸せを与えてくれますね~
「おはよう、アインズ」
「ああ、おはよう。マリー。今朝も元気そうだな」
私マリーと彼アインズは婚約者同士。
幼馴染みから今の関係になった。
付き合いは長いのでいちゃつくことは滅多にないけれど、仲が悪いことはなくて喧嘩もない、それなりに良い関係を築くことはできている――と思っていた、のに。
「実は話があるんだ」
「そうなの?」
「ああ。大切な話だ。……今ここで話しても構わないか?」
「ええ」
「では話させてくれ」
少し間があって。
「君との婚約だが、破棄とすることとした」
彼はさらりと言ってきた。
「え……」
「実はな、君よりもっと魅力的な女性と出会ったんだ。俺は彼女が好きだ、そこは決して変えられない。もう二度と。変えることはできない、なぜならそれが真実の愛だからだ」
「ほ、本気なの?」
「もちろん」
「ええーっ……」
「そもそも、俺たち、愛し合っていたわけではないだろう? 幼馴染みで何となく婚約しただけだ。その状態で本当に愛せる人と出会ってしまったら……誰だって同じような気持ちになると思う。俺だけがおかしいわけではなくて、な。君だって、今の俺と同じ状況に出会ったなら、間違いなく俺を切り捨てるはずだ」
そんなことはしない。そう言いたかったけれど、無理だった。なぜなら彼は私が言葉を発する間を一切与えてくれなかったから。彼は明らかに、私が言葉を発せないようにしてきていた。言い返すことは許さない、といったような空気を作り出して、静かに圧をかけてきていた。
「俺たち、ここまでとしよう」
「そう……」
「では、さらばだ」
……こうして私たちの関係は終わりを迎えてしまったのだった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
そんな風に思いながら。
もやもやを抱えたままで、それでも、孤独だとしても、ただひたすらに歩んでゆくしか道はなかった。
その後まもなくアインズはアンリエという女性と婚約した。
◆
アインズとアンリエは婚約後少しして破局したようだ。
聞いた噂によれば、アンリエに明かしていない借金があったそうで。
そのことが明るみに出たことによってアインズは激怒したらしく、そこから関係が崩れていってしまったそうだ。
完璧だと思っていた、理想的だと思っていた、そんな女性が自分を騙していた――その事実を受け入れることがアインズにはできなかったようである。
それは甘い匂いのする幻のようなもの。
彼が本物だと思っていた愛、それはとても脆かった。
アインズはアンリエに対して婚約破棄を突き付けた。
だがそれが彼の命を奪うこととなる。
婚約破棄の際にアインズが発したアンリエへの侮辱の言葉、それが原因となり、彼は落命することとなってしまった。
というのも、アンリエの父親がアインズを刃物で刺したのだ。
娘が彼を騙していたことは父親も知っていたようで。けれども父親は娘への侮辱をどうしても許せなかったらしく。父親は彼を襲った。そして、復讐といわんばかりに暴言を吐き出したその果てに、彼の命を奪ったのだ。
アインズは襲撃により死亡。
アンリエの父親は逮捕され後に牢屋内にて病気にかかり死亡。
そして、すべての原因を作ったアンリエはというと、後に酒場で働く青年に貢ぎ過ぎたためにお金の面でどうしようもなくなってしまい自ら命を絶った。
◆
「いい貝あるよ!」
「美味しそうね」
「前さ、マリー言ってたよな。貝、好きだって。だから持ってきたんだ、一緒に食べようぜ」
「ありがとう、嬉しいわ」
私は今、夫となってくれた彼エヴァンダンスと共に、少々個性的で楽しい日々を満喫している。
エヴァンダンスは海産物が大好きな青年だ。それゆえ関わり出した頃は戸惑うこともあった。想定外の物を贈ってくれたり、珍しいものを食べさせてくれたり、といったことがよくあって。慣れるまでは戸惑いに包まれることも少なくはなかったのだ。
けれども彼はいつだって優しくて。
だから一緒にいられて幸せ。
「どう?」
「……すごく美味しいわ!」
「いい味だろー?」
「ええ! とっても! 臭みもないし、新鮮な感じね」
「よく分かってるな! そうなんだよ。めちゃくちゃ新鮮なやつなんだ。美味しいって言ってもらえて嬉しい!」
これからもこんな感じで穏やかに楽しく暮らしていけたらいいなと思う。
過ぎ去った影に囚われている暇はない。
人生には限りがあるから。
だからこそ、常に今という時間を大切にしながら、楽しいと感じられる生き方を選んで生きていきたい。
もう何も恐れはしない。
大切な人と共に、生きていく。
◆終わり◆




