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万年「F」ランク冒険者、呪われた装備で最強を目指す  作者: 秋栗稲穂


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019話 鉱山の守護者と牛娘

鉱山の最深部――。

魔鉱石の輝きが渦巻く空間に、岩肌からせり上がる巨躯が現れた。

全身を黒鉄の鉱石で覆い、眼窩には蒼白い光を灯す存在――

魔鉱石の魔力の影響で自然発生したゴーレム。


「グオォォォォ……ッ!」


轟音と共に岩腕を振り下ろすと、大地そのものが爆ぜるように震えた。


「おい、牛野郎!突っ込むなって言ってるだろッ! まずは敵の動きを見ろ!」


アレフが叫ぶも、アスタロスは既に前に出ていた。


「俺様を誰だと思ってやがるッ! ゴーレム風情、俺様の拳で叩き割ってやるぜッ!」


だが、守護者の拳が振り抜かれると同時に衝撃波が走り、アスタロスは吹き飛ばされる。


「ぐっ……この、クソ岩野郎……ッ!」


そこに颯爽と歩み出るのは――執事のジェームス。

彼は懐から銀の香水瓶を取り出すと、指先で栓を弾いた。


「補助編――

ブースト・フレグランス!!」


ふわりと広がる芳香が、仲間たちを包み込む。

シノは身体が軽くなり、ライカは魔力の循環が速くなったのを実感した。


「これなら……いける!」


《香水一つでここまで強化できるとは……執事というのは、よほど優れた職業のようだ》


グラトニーが呪い以外のことに興味を示したことに、アレフは驚いた。


「いや、執事が優れてるんじゃねえ……ジェームスが圧倒的に有能なんだ」


アレフも筋肉が研ぎ澄まされ、口元に笑みを浮かべる。


「補助編ーーエレガント・アイ!」


ジェームスは目元を鋭く細めると、常人を超えた洞察力で罠や弱点を見抜く心眼を発動。

蒼く光る瞳が、守護者の全身を舐めるように観察する。


「……アレフ様! 右胸部の魔鉱石が、魔力の結晶核。そこが弱点のようです!」


「聞いたな!シノ、ライカ、胸を狙え!」


だが、またしてもーー


「俺様がぶち抜いてやるよォ!」


アスタロスは鼻を鳴らすと、ジェームスの分析に乗る形で突撃する。

咆哮と共に、アスタロス拳が結晶核に叩き込まれる。


ゴキッーー


「いってえぇぇ……っ!?」


全身を巡るような痛みに顔を歪ませながら、アスタロスはその場にしゃがみこんだ。


「……バカ」


シノとアレフが同時にため息をつく。


そんな彼らを横目に、ライカはグリモワールを開き、炎の矢を放つ。

シノがその影に身を潜め、疾風のように駆け抜ける。

ジェームスは銀のトレイで飛来する礫を弾き、アレフは強化された身体で間合いを詰めた。


「喰らえぇぇッ!!」


アレフの魔剣が、胸の魔鉱へ叩き込まれる。

轟音と閃光が鉱山を満たし、ゴーレムの咆哮が響き渡った――。


「グオォォォォ……ッ!」


胸の結晶を打たれたゴーレムが、怒り狂ったように暴れ出す。

巨腕がうねり、大地を抉り取るほどの衝撃波が放たれた。


「くっ、避けろッ!」


アレフの声も虚しく、飛び散った岩片が仲間を襲う。

ライカが咄嗟に結界を張るも、今の彼女の魔力では、自身とシノを守るので精一杯だった。


「アレフ様――!?」


ジェームスは咄嗟にアレフの前に出た。

銀のトレイを両手で構え、俊敏に身体を捻りながら舞う。


「エレガントサーブ編ーー

鉄壁…パーフェクト・レシーブ!!」


ガガガガガッ!!


飛来した岩塊が、ジェームスの優雅な捌きで次々と弾かれる。

彼の姿はまるで舞踏会でワルツを踊る貴公子のようで、だがその実、アレフを完全に庇っていた。


「助かった……ジェームス!!」


ライカとシノが、自分たちの危機を忘れて思わず見惚れる。


ジェームスは微笑んで片目を細めた。


「執事とは万能にして優雅、そうあるべきなのです」


だが守護者の猛攻は止まらない。

膝を沈め、両腕を大地に叩き付けると、亀裂が走り仲間たちの足場を崩した。

一瞬、動きが乱れる。そこを狙って、ゴーレムの巨腕が振り下ろされる――。


「――ここです!」


ジェームスの瞳が鋭く光る。

懐から取り出したカトラリーナイフを咥えると、彼は華麗に飛び込み、ゴーレムの関節部へしがみついたした。


「クリーニング編ーーエレガント・リフォームーーブレイク!!」


カトラリーナイフを握る手が滑らかに舞う。まるで壊れた道具を解体ように。

だが触れた瞬間、関節を束ねる鉱石の継ぎ目に亀裂が走り、パキン、と嫌な音を立てた。


ゴーレムの右腕が鈍く砕け、制御を失って地に叩きつけられる。

その隙を、アレフが見逃すはずがない。


「今だーー!」


黒炎を纏った魔剣が振り下ろされ、砕けた関節部をさらに叩き割った。

ゴーレムの動きが一瞬、完全に止まる。


「皆様、今が好機です! 一斉攻撃を!」


ジェームスの指示に、仲間たちは頷いた。

竜爪と黒炎の刃と魔力が集中し、ゴーレムの胸の結晶核へと殺到していく――。


「今だ――全力で叩き込めッ!」


アレフの号令に、仲間たちが一斉に駆ける。


シノの竜爪が結晶に亀裂を入れ、ライカの魔弾がそこへと重なった。

アレフは素早く憤怒の手甲を結晶の裂け目へ滑り込ませる。


「ラースーーッ!!」


アレフの叫びに応えるように憤怒の手甲ラースが脈打った。

そして、次の瞬間ーー


「獄炎ーーヘル・ファイア!!」


これまでアレフが募らせた怒りを残らず絞り出すかのように、レイジは黒炎を一気に吐き出た。


「ガァァァァァ……ッ!!」


ゴーレムの胸核が悲鳴のように軋みを上げる。


「どけぇ! 最後は俺様がぶっ壊すッ!!」


アスタロスが突進し、巨大な岩石を両手で持ち上げた。

砕けた関節を利用して跳び上がり、そのまま結晶核へ叩き込む。


ゴガァァァァァン――ッ!!!


轟音と共に、ゴーレムの胸核が粉砕された。

光が弾け飛び、巨体を支える力が失われる。


「グ……ォオオ……」


崩れ落ちるゴーレムの巨体は、やがて鉱石の山へと変わり、ただの瓦礫と化して沈黙した。


静寂が戻る鉱山。

仲間たちはしばし呼吸を整えながら、その光景を見つめた。


「ふぅ……まさか、アスタロス様が最後の止めとは……」


ジェームスはタキシードの裾を整え、苦笑してみせる。


「ですが、皆様の連携あってこその勝利です」


「おいおい、俺様の一撃で決まったんだろーが!」


アスタロスが胸を張ると、アレフが苦笑交じりに呟いた。


「はいはい、牛娘のおかげで助かったよ」


「……牛娘って言うなッ!」


照れ隠しのように叫ぶアスタロスに、場の空気は一気に和らぐ。


そんな中、アレフは崩れた瓦礫の山を見つめ、眉を寄せた。


「自然発生したゴーレムかと思ったが……あの結晶核、ただの魔鉱石じゃない。強力な魔力を蓄えていた……」


ジェームスが頷き、指先に残った結晶の欠片を拾い上げる。


「これは……また、“神殿の手の者”の仕業でしょうか?」


「可能性は高いな。けど、ま…やつらが何をして来ようと、全て返り討ちにしてやるだけだ!」


皆がアレフに信頼の眼を向ける。


「そんなことより、さっさと魔鉱石を持って帰ろうぜ……俺様に相応しい武器を作ってもらうんだからよ」


「お前なぁ……ちょっとは空気を……」


アレフは言いかけてやめる。

無頓着に笑う牛娘の姿に呆れながらも、なぜか皆、笑いが込み上げるのを押さえられなかった。

神殿の影を感じつつも――仲間たちはひとまず勝利の余韻を分かち合った。

次回タイトル:020話 鍛え直されし戦斧――ミノタウロスの証

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