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 『Bleessing*Element〜光が導く運命の恋〜』は、よくある学園モノの乙女ゲームだ。攻略対象の好感度を上げて恋愛するありふれたやつ。

 攻略対象は第3王子のセイラン・ヴィルフォード・エレメンツ、宰相の息子でジュリエッタの兄である公爵令息のルドルフ・ネフェルティーナ、騎士団長の息子で伯爵令息のダリル・バークライト、商人の息子で平民のリオ・フェンリース、侯爵家の息子で飛び級して学園に入学した天才魔術師のネイ・シェルディスの5人。

 そしてジュリエッタ・ネフェルティーナもゲームに登場する公爵令嬢で……誰のルートでも破滅の運命を辿る悪役だった。よくて追放、悪けりゃ処刑。それ以外だと金持ちの高齢貴族の後妻とかもあったかな?まあ、幸せにはなれないキャラだ。

 と、考え込んでいるうちにジュリはどこかに移動し始めていた。侍女は仕事に戻ったようで、たった一人で長い廊下を歩いている。俺はどこに向かっているのかとジュリに問いかけた。


(ジュリ、どこに向かうんだ?)

(話を聞いて居なかったんですの? 食堂に向かいますわ!)


 そうしてたどり着いた食堂にはとんでもなく長いテーブルと、一人分の食事。病院食とは比べ物にならないほど美味しそうで、食べ物も勿論だが皿だけでも高級だとわかる。


(美味そうだな)

(そうですかしら? いつも通りの朝食ですわよ?)


 生粋のお嬢様にとってはこの食事が普通らしい。テレビで見た三つ星レストランとかのフルコースみたいだけどなぁ。これが日常の食事とか貴族ってすげぇ。元の世界の社長とかもこんな感じだったのか??


(俺、質素なご飯しか食べたことないからさ。そんな豪華な食事は生で見るの初めてだよ)

(あら、庶民の出ですの?)

(そもそも病院から出られなかったからな)

(病院?)


 そういえばこのくらいの時代設定だと病院って単語はないのか? 多分、それに相当する施設はあると思うけど、単語は思いつかないしなぁ……。施設の役割だけ教えればわかってもらえるだろ、多分。


(えっと、病気を治すところなんだ。俺の場合は重い病気だったから、生まれてからずっとそこで暮らしてたんだけど……)

(ああ、治療院ですのね! 庶民はそこで病気を治療してもらうと聞きますわ!)

(貴族は違うのか?)

(お抱えの医者がいますもの、屋敷に呼び出しますわ。大きな病気でしたら医者の方が我が家に泊まり込みですわね)


 やっぱ金持ちってすげえ。日本にも往診みたいな医者が家に来るみ診療スタイルはあったけど、重い病気でも医者の方が屋敷に泊まるとか……。感心していたらジュリに声をかけられた。


(もうよろしいかしら? わたくしはお食事をいただきますわよ?)


 ジュリはそう一言告げて、器用にカトラリーを使って朝食を食べ始める。ジュリの目を通して見えるカトラリーの扱いは明らかに俺より上手い。

 というか、そんなことよりもだ。俺たちは五感が共有されている。当然、味覚だって共有されてるわけで、ジュリだ食べたものの味は俺にも伝わる。これは……、


(思った通り、めっちゃ美味い!! お肉はほろほろだし、肉汁もすごい……!)

(うるさいですわ!!)


 あまりにもテンションが上がりすぎて、聞こえるつもりがなかった俺の叫び声がジュリに届いてしまったらしい。ごめん。でも俺の味覚では味わったことがないような食事だったんだ。


(そんなに叫ぶなら自分で食べたらいいですわ。わたくしと交代なさい)

(いや、俺、テーブルマナーとか知らないし)

(誰もみていないのだから問題ありませんわ! さあ、早く!!)


 ジュリに急かされて俺は主導権を交代する。自分で身体を動かせるようになって、恐る恐る食事を口に運ぶ。……やっぱ美味しい。しかも、食べ方とか気にしなくてもいいからモグモグと食べ進めていく。あっという間に皿の中が空になった。満足して背もたれに寄りかかっていると、シェフらしき人に話しかけられる。


「ジュリエッタお嬢様、本日の朝食は美味しかったですか?」

「とっても!」


 思わず素で答えてしまった。そういえば、ジュリは貴族だから口調に気をつけないといけなかったんじゃ? ……まっず、ジュリに交代しよ。


(ごめん、俺が喋っちゃった。すぐ変わる)

(大丈夫ですわ。それに、シェフが話したいのは食事を食べた人間のようですもの。柚希がそのまま話しなさい)


 ジュリはそういうが、俺はお嬢様らしい話し方知らないんだがなぁ……。と、頭の中でジュリと話していたらシェフが再び声をかけてきた。


「私、お嬢様が美味しそうにお食事を召し上がっているのを初めて拝見いたしました。お嬢様はいつもお食事時の表情が乏しくいらっしゃるので……」


 ……これはジュリが答えた方がいいだろ。そう判断して強制的にジュリを表に引きずり出す。


(柚希、わたくしを前に出すのはおやめなさい! ただ人が違かったからですもの、わたくしも答えられませんわ!!)


 それもそうか。しかし、なんと伝えたらいいものか。まさか堂々と「中身が入れ替わってるからです」とかいうわけにはいかないし。うーん……。


「わたくし、いつもお食事の時は寂しかったのですわ。けれど、今日は一人ではありませんでしたから」


 俺が言い訳を考えているうちに勝手にジュリが答えていた。いや、元々ジュリに対する質問なんだし勝手にというと語弊があるかけど。一方でシェフはジュリが言ったことが理解できないようで、首を傾げている。そりゃ、ジュリは一人で食べたようにしか見えないしな。というか……


(いつもは一人で寂しかったって……)

(美味しく食べているのが顔に出たのは柚希が前にいたからですけれど、わたくしも今日の朝食はいつもより美味しく感じたのですわ)


 耳が熱くなっているように感じる。鏡がないから確認はできないが、ジュリの羞恥心で耳が真っ赤になっているのだろう。まあ、ジュリも美味しくご飯を食べられたならよかったということでこれ以上は追及しないでおこう。


*〜*


「ジュリエッタお嬢様〜? まもなく魔法の先生がいらっしゃいますよ〜? お早く屋敷内にお戻りくださ〜い!!」


 昼。俺たちはメイドから隠れていた。正確に言うと主導権がジュリにあるのだから隠れているのはジュリだが、いつでも主導権を取れるのに好きなようにさせている俺も同罪だろう。別にジュリの人生だから口出しをする必要はないのだが、生前は学校にすら行けなかった俺としてはなんで逃げるからわからないから興味本位で聞いてみる。


(なんで逃げてるんだよ、ジュリ?)

(……勉強をする意味がないからですわ。わたくしは所詮お父様の政略のための駒ですもの。勉学を極めたところでお父様が選べる選択肢が増えるだけですから、わたくしの自分の時間を浪費したくないのですわ)


 それで逃げまわることに時間を費やすなら結局浪費していると思うが。父親への反発心も事実ではあるのだろうけど、一番は単純に勉強が嫌いなんだろう。というか、俺としては先生という存在に何かを教えてもらうことには普通に興味がある。当然ながら学校に通ったことがないので。それに……、


(ジュリ、お前が受けたくないなら俺が代わりに受けてもいい?)

(……構いませんわ!)


 ジュリの許可が取れたから主導権を入れ替える。さあ、授業を受けに行こう!

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