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ロボティクスメイカー|#01:プロローグ

……………、


「プシュッ!プシュッ!ゴッ!」


船外活動(EVA)宇宙服を身に纏った船外活動員が独り、

漆黒の宇宙の闇の中を駆け抜けていた。


訓練用に構築された宇宙建造物の中を訓練生500名の中、

最も速いタイムで、 まるで猛禽類のタカのように鋭く、素早く、

華麗に駆け抜けていく。


船外活動(EVA)宇宙服には推進器、ワイヤー射出機などの船外活動を

効率よくこなすための装備が満載だ。

その重量はおよそ100kgほどになるが、無重力環境と卓越した推進器や

ワイヤー操作をする「彼女」は、 その重量、質量による慣性が

発生していることをまったく感じさせない、まるで自由人とも言うべきか、

何物にも束縛されない、そんな存在に彼女はこの宇宙で成っていた。


「もうひとつ…、あのチェックポイントを越えれば…、私は…、」


そんな時、彼女の宇宙服へ雑音交じりの無線が入った。

しかし彼女は訓練コースをクリアすることに熱中するあまり、

他の事への注意がおろそかになっていた。


「…訓…生02…!聞…え…か!聞こ…てい…応…し…っ!」


「彼女」が訓練用構造物の最後のチェックポイントをクリアしようとした、

その時…、


ドォォオオォンン………!


本来宇宙空間では音は伝播しないが、もし大気圏内ならこのような

大きな音がしたに違いないと感じるほどに、 大きな「ソレ」は

激しく衝突した。


「訓練地区A204で巨大デブリ衝突事故が発生!訓練生024の消息が不明!

バイタル反応無し!」


訓練地区の全域を監視していた管制塔のオペレータースタッフ全員が

激しく狼狽している。 管制塔の現場は騒然となった…。


……………。


「あとひとつ…、あとひとつだったんだけどな…。

目の前が真っ白だか真っ黒だかになってしまって…。」


「私…、どうなっちゃったんだろう…。」


「みんなは…、無事なんだろうか…。」


「ほんとうにあとひとつ…、だったのに…。」


……………。


時と場所は移り変わり…、 ここは極秘開発エリア0Xゼロエックス


その敷地内の基地格納庫には全高15メートルの鋼鉄の巨人、

「ロボティクス・ワーカー」が1機、佇んでいる。


型式番号:RW-07A

ペットネーム:BURNING ATTACKER NEOSIS

      (バーニングアタッカーネオシス)


全身に推進器を備えた、三次元戦闘活動を可能にした最新型の

「ロボティクス・ワーカー」だ。


「ロボティクス・ワーカー」とは、 主に人型の作業機械で

全高15メートル程度のものを主流とした上で、

作業目的に沿って様々な形状、 大きさのものが存在する。

また、汎用性、整備性を高めるために、胴体と四肢を接続するパーツが

共通化されており、 同サイズのロボティクス・ワーカーであれば容易に

胴体や四肢のパーツが組み替え可能となっている。

高い汎用性と整備性のため、機体そのものの製造コスト、

運用コストが下がり、その結果、 従来の建機(重機)以上の存在となり、

瞬く間に世界中に普及していき主にインフラ建築に活用されていった。

そして、ロボティクス・ワーカーの軍事転用も積極的に推し進められ、

各国の軍隊にも普及していった。


型式番号:RW-07Aは、完全に最初から戦闘用に開発されたもので、

様々な兵装を取り扱うことができるように独自の規格や仕組みが

機体の随所に施されていた。 それは基本的に人の姿をしているが、

やや人体のプロポーションから外れた外見をしている。

胴体から四肢は伸びているが、いわゆる人間で言う「頭部」が存在しない。

胴体のパーツに直接カメラアイが据えられた全体的に鋭利な角張った

デザインをしている。


現在はすべての各種兵装は取り外された状態で、

機体のみが格納庫に安置されていた。

ただその機体の背中には、機体の身の丈の半分ほどにも迫る板状のモノが

バックパックとその横のサブアームで取り付けられていた。


そして、その機体には既に搭乗者が居た。


ノルティス・ガーランド


RW-07A バーニングアタッカーネオシスの専属パイロットだ。


「どうだ?機体は今日も【馴染んでいる】か?」

呼び掛けた声の主は【馴染む】という言葉をやや特徴的に発した。


ノルティスはコクピットの計器類に素早く目を走らせ、

機体の状態に異常がないことを確認したあと、こう答えた。

「えぇ。よく【馴染んで】います」

機体の搭乗者も同じように【馴染む】という言葉をやや特徴的に返した。


「【あの事故】は大変だったな…」

ノルティスに再度、重苦しい雰囲気で声を掛けたのは、

極秘開発エリア0Xゼロエックスの基地司令 兼 新型機の開発主任を

勤める、 イグニス・ローランド その人だった。


「いえ、またこうして【活きる】道を与えてくださった貴方には

感謝しかありません」

ノルティスは答えた。


「それでは復帰して間もないところで申し訳ないが…、

本日もRW-07Aの機体性能試験を実施する。

機体各部のチェックは終わっているか?」


「それはこの子に搭乗した【瞬間に】終わっています」


「そうか、機体との【同期】には問題無いようだな…。

それでは試験を開始する!」


イグニス司令の開始の合図とともに、ノルティスはスロットルを

最大出力まで【やさしく】叩き込んだ。

すると計器類が狂ったように反応したかと思うと、

ある一定の数値を指し示したところでピタリと落ち着く。

ヒュゥゥゥンッッ……!とカン高い、それでいてなんとも言えない

モーター音が機体から静かに鳴り出したかと思うと、

【まるで人でも入っているかのような】挙動で巨大な格納庫のハッチから

瞬く間に宇宙空間に 「ロボティクス・ワーカー」と「彼女」は

飛び出していった……。


プロローグ ━完━


【次回エピソード予告】

訓練宙域に華麗に飛び立ったRW-07Aとノルティス。

実はロボットの搭乗席には「もう二人の」相棒が操縦席のコンソールに

小さく鎮座していた。


「お散歩!お散歩!嬉しいなっ!」

「お散歩じゃない、これは訓練よ。ねぇ?ノルティス?」


次回、ロボティクスメイカー|#02:訓練宙域

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