表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/67

Episode4 空属性

空属性は くうぞくせい とよみます そらぞくせい じゃないです

属性鑑定の日の夜、私は眠れずにいた。

あのコアに現れた、三属性の象徴の色。

どれも、記憶どおり。

私は、ヴァイト公爵家の血筋、つまりは王家の血筋、三属性は確定。

そして、消えゆく光に示された、白でも、黒でもない、色彩がない曖昧な光。

でも、私には見えた。


言葉にできない。けれど確かに、私には見えた…んだ。


まるで、空気自体が光っていたかのように。


考えてもわからない。


そのことを誰にも話せず、私は一人、夜の回廊を歩いた。

「―――風属性という、設定はなかった」

この乙女ゲームは、普通のゲームとは違った。「風属性」がなかった。


通常、火、水、土、風、光、闇という設定が普通のはずだった。

でも、この世界には風属性が存在しない。


考えてもわからない。


「こんなことになるなら、他のルートもやっておけばよかったなぁ」

そう、私はクリスルートしかやっていない。そして、RPG的な感じのをメインにやっていたので、内容はどうでもいいと思っていた。恋愛的な感じの。セリフとか、スチルとかはタップとスキップボタンでやって飛ばしてたから。


突然、風もないのに、ふわりと伸ばしている髪が浮いた。

首元を冷たい空気がかすめる。


なんでかわからないけど、少しだけ魔力をめぐらしてみる。

大事なのは、イメージ。

魔力をイメージする。体の奥底の。


みつけたものを、体に巡らせる。

体が温まっていく。と、同時に冷たくも暖かい、不思議な風が私を囲む。


指先に集中。

得体のしれない属性の魔力、認識していない魔力を指先に。


そうすると、また、澄んだ、青色のような、水色のような、透明な純粋魔力の小塊が現れた。



「ねぇ、これ、なに?」

虚空に話しかけた。

理由は特にない。直感?第六感とでも言うのだろうか。


『魔力の塊だな。小さいが』

どこからが声がした。


驚くも、努めて、冷静に。

あと、囁くように。

夜だから騒いだら近所迷惑だし、ベッドに押し込まれちゃうしね。


「あなたは、だれ?姿を見せて?」

そういうと、狐の姿をした白銀の何かが、私の前に現れた。

    

『私は、空属性の精霊だ』


空属性?


『風を操る類の属性の精霊だ。いろいろと能力がありすぎて、人間界には知る人ぞ知る、という感じだ』

思考が読まれるのか、何も発していないのに返答した。


「空属性?」

それはなんぞやと、思っていると精霊が前足で私の肩を叩いた。


よく見ると、飛んでいる。


「え、とんでる!?」


『まあまあ、落ち着け。説明するから』


精霊に言われて、大人しくすることにした。


「わたしの部屋まで来てくれない?父と母にバレたくないから」


『む?私は、自分で姿を表さない限り、誰も見えないぞ?見える人間も限定できるし』

なにもわかっていないご様子だ。


「とりあえず。私がここにいることがバレたくないの。それに、ベッドのほうが、落ち着けるっていうか」


身振り手振りで力説していると、

『なるほど、嘘ではないみたいだな。では、行こうか。ここの城の場所把握もしたいしな』


浮かんでいた狐姿の白銀の精霊は、地面に降りて、私の足を触る。

「どうしたの――って、えっ?」

私と精霊が見えないような、見えるような、透明な光に包まれた。


驚いて目をぎゅっと閉じると。


『もう大丈夫だぞ』


先程の精霊の声が聞こえて、目を開ける。


そこはいつもの、見慣れた自分の部屋だった。


「どうして?瞬間移動?」

『御名答』


声が聞こえる。だけど、どこから聞こえたかはわからない。


『ここだ、エルーフィア』


何かが通った。

なんとなく、肌をかすった方向を見る。


ベイウィンドウの窓台に座っていて、月光で、眩しい。


『おお、魔力の流れも感知できるのか。優秀だぞ、エルーフィア』

 違和感。


「なぜ、私の名前を知っているの?」


『それは、私が、お前を知っているからだ』


「まえから、知っていたの?」


『もちろん、エルーフィア、お前は、ヴァイトの13代目当主となるのだから』


「なぜ?弟がいるわ?」

普通、公爵家の令嬢と言ったら、公爵家同士か侯爵で結婚するか、王家に嫁ぐかだ。

クリスは私よりも年下だけど長男だ。


『お前は空属性の保持者だ』


それじゃわからない。この精霊の意図も。

『ああ、それなら少しばかり昔話をしよう。

ヴァイトはなぜ王家の血筋なのに、公爵家なのか。それは、空属性を持って生まれた王子がいたからだ。空属性は正直手に負えない。王家は手放した。軍事利用もできないほどに強力だった』


「それで?」


『手が負えないからという理由で、王家はその王子の成人後に、公爵という地位を叙爵する、ということを決めた。王位継承件を放棄するということを公表をした。王子の意志も関係なく』


「そのうち滅びるだろうと思って?」


『おお、そなた、察しが良いな。おおむねわかっただろう。私からの説明は以上だ』


「私は空属性を保持している。で、なぜ、あなたは出てきたの?」


『契約をしてみたいと思ってな』


おどろいた。契約できるの?


『見たところ、そなたの魂は面白い作りをしている。空属性の保持者として興味を持ってはいたが、ついこの前くらいか、魂が混ざった感じがする』


ぎくっ…


『まぁ、どちらにせよ、空属性の保持者だ。どんな属性も使える、全属性の精霊も見えるぞ。一応』


「え、でも、火属性と光属性は出なかったよ?」

『あれは、特化している属性だろう。魔力があれば、基本のレベルは使える』

あ、確かに。

もしかして、全属性の魔法、全レベルつかえたりして!


『契約したいか?』

深刻そうな声を出した。

「うん」

『いろいろと副作用が伴うが』

「どんな?」

『魔力暴走、私との意識同化や主導権の入れ替わり、社会的孤立、精神負荷、―――存在の希薄化、その他もろもろ』


「存在の希薄化、って?」

もっと深刻そうな雰囲気を出した。

『濫用した場合だな。誰かの記憶から抜け落ちる。エルーフィア・ヴァイトの記憶が』


「濫用の頻度は?」


『んー。こんな感じだな』

そう言うと、また飛んできて、今度は頭に前足を乗せた。

「どんなって」


途端に情報が流れ込んできた。


 状態  使用量(基準) 結果/ペナルティ

通常使用 1日3〜4回の軽度行使(浮遊、気配遮断など) 問題なし。身体に小さな疲労のみ。

中度使用 1日2回の中規模魔法(空間遮断、瞬間移動など) 頭痛・軽いめまい。魔力量が3割以上消費される。

限界超え① 1日1回の大規模魔法(空間崩壊・因果干渉など) マナクラッシュ発生率50%。意識混濁。

限界超え② 短時間に複数回行使 or 大魔法の連発 精霊の制御が不能に近づき、存在の希薄化が進行

臨界状態 魔力量50%以上を消費した状態で再使用 精霊が自律的に動き出す。契約者の記憶・存在の一部が周囲から消える可能性あり。


「そっか…」


『あ、一応、色々と対策できる。その方法も教える。だから』

精霊は一回言葉を切った。


「うん、だから?」


『契約、して、私に名前を、くれないか?』


「―――」


『だめか?そうだよな、こんな危ない契約、しない方が――』

「いいよ」

『え?』

「だって、空属性でしょ?無詠唱が可能かもしれないし、さっきみたいに、瞬間移動とか空中歩行とかできそうじゃない?他属性の無効化とか!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ