表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/67

Episode2 属性鑑定の日

王都でも有数の魔道具師によって作られた「属性認識水晶(エレメント・コア)」。

この魔道具は、触れた者の魔力を読み取り、内在する属性を最大四つまで浮かび上がらせる。

鑑定結果には、各属性の「適性割合」が表示され、今後の魔法教育の方向性を決めるための、極めて重要な儀式だ。


今日は、私――エルーフィア・ヴァイトの五歳の誕生日の数日後―――属性鑑定の日。


五歳になった貴族の子どもは、この儀式を受ける。

特にヴァイト公爵家は、王家の血筋があり、その血を引く子どもには三属性が宿ることがほぼ確定している。


私には「水」「闇」「土」があることが確定している。


これは、転生前の私――前世でプレイしていた乙女ゲーム『聖約の魔術師』の知識による。

私はあのゲームに登場する悪役令嬢。

攻略対象の一人・クリスの姉であり、ヒロインのミアに立ち塞がる存在だった。


「エルーフィア様、お支度が整いました」


メイがやさしく声をかけてくれる。

淡いラベンダー色のドレスに袖を通し、姿見の前に立つ。


この顔、この身体……もう、慣れたけど。


それでも、ときおり思う。

この人生をやり直す意味があったのだとしたら、前と同じ過ちは繰り返してはいけないと。


魔力干渉を避けるために厳重に設計された、公爵邸の地下室。

そこに設置された属性認識水晶が、静かに私を待っていた。


透明な球体の中央に、そっと手を添える。


「……!」


球体の中に魔力が流れ込むと同時に、光が走る。

次々と色が浮かび上がった。


最初は透き通るような青――水属性。

次に、深い漆黒の黒――闇属性。

そして最後に、あたたかみのあるオレンジ――土属性。


それぞれの色が静かに揺らめきながら、明確な数値となって表示された。


水属性:38%

闇属性:34%

土属性:28%

「……やはり、三属性」


母がそっとつぶやく。

父は深く頷き、誇らしげに私を見る。


「素晴らしい。三属性にして、このバランスの良さ。将来が楽しみだ」


ふふ、予定通り……だけど。


私の内心は、ほんの少しだけ、ざわついていた。


ゲーム通りの属性。ゲーム通りの結果。

でも、それなら――この先も全部、同じように進んでしまうのでは?


この瞬間はまだ知らない。

今は表示されなかった「第四の属性」が、自分に宿っているということを。


空白の場所に、やがて浮かび上がる異端の色。

そして、それが私の運命を、物語を、大きく変えていくことを――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ