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清掃員クリア、少女を助ける。

 ってそうだよ!

 オレはどうなんだ?


 女を助けるにはどうしたらいいか? とかって。

 バカなオレは足りない頭を悩ませているけどよう。

 ここはダンジョンボスの部屋だろ? 普通、こういう部屋ってデッドオアアライブ、殺して出るか、死んで出るか、みたいな場所じゃないのか? そもそもオレがこっから出れないなら女を助けるどころの話じゃないし。とりあえずこっからオレが出れるか出れねえかくらいは、ダンジョンボスだっていうなら知ってるかな?


 聞いてみよ。


「なあ、ところでオレはどうなるんだ? こっから出れるんか?」


 少しだけ魔力が回復して動けるようになったオレはヨッと力を込めて上半身を起こしてから、地べたにあぐらをかいて女にたずねる。


「どうって? 好きでいいわよ?」


 あらあっさり。


「えーっと、帰っていいって事?」


 帰れんのか?


「ええ」


 女はまた少しだけさみしそうな顔をする。

 オレが帰ったらまたコイツも一人か。それは後味が悪いんだよなー。

 んー、聞くだけ聞いてみるか?


「そっかー、じゃあお前もさ、オレと一緒に帰ろうぜ」


「え?」


「いや、だってよ、お前、なんかつまんなさそうじゃん。オレと一緒にこっから出てこうぜ」


 地の底でこうやって出会った奇妙な縁を感じるしな。

 オレはこういう縁を大事にする事で、今までなんとか生きてこれた。

 誰かに助けられて。代わりに誰かを助けて。ってやってよ。何とかここまでやってこれた。


 だからよ。

 こっから出て行っていいって言われて、はいそうですか。ってコイツを見捨てて自分だけ外に出るってのは、どうにもちょっと違うんじゃねえかって思うんだよな。


「いやか?」


 黙ったままの女の意思を確認する。


「嫌じゃない。うれしい、けど……でも無理なの」


「なんで?」


「出れないのよ。コレ、見て」


 女は空中に浮いた自分の足を少し持ち上げてオレに見せてきた。

 細く白くて綺麗な足。

 その足首には汚れているけど頑丈そうな足輪と、それに連なったぶっとい鎖があった。

 女の足飾りにしては物騒なそれにオレは苛立った。


「なんだよそれ!」


 女を鎖で繋ぐ。

 レイスだろうとダンジョンボスだろうとそれはダメだろうがよ!


「私はここに縛られているの。だから……出られないわ」


「マジか。女をダンジョンに鎖で縛りつけるとかクソすぎん? 誰にやられたんだよ?」


「覚えてないわ。ずっと昔だもの」


 確かに足の金輪も鎖もすっげえ汚れてんもんな。汚れが棘になって足に刺さって痛そうだ。


「そだよなーすげえ汚れてんもんな。うっし、ちょっと掃除するわ」


 職業病か。

 汚ねえの見ると掃除したくなるんだよな。


「え? 掃除?」


「おう、オレのスキルって掃除用のスキルなんだよ。魔力あんま残ってないからあんま綺麗になんないかもだけど、その足元だけは痛そうだからよ。そこだけでも綺麗にしてみるわ。ま、見てて」


 オレは戸惑う女に言ってスキルを発動する。


「パワーウォッシュ!」


 オレは足に触る事を軽く謝って、女の返事を待たずにその足をとり、足首にある金輪に向かって、パワーウォッシュのノズルを向けた。

 噴射口を小さく絞って、力を増したジェット水流で金輪の汚れを丁寧に剥ぎ取っていく。


 水の勢いでバリバリと長年の汚れが剥がれ落ちていく。


 気持ちいい。


 それでも棘になってる部分は相当頑固な汚れらしい。なかなか落ちねえ。

 落ちろ、落ちろ。

 夢中になってオレはパワーをあげる。


 いいぜ! ありったけの魔力をここにぶち込んでやんよ!

 また魔力無くなってもここならしばらく休めんだろ?


 落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ。

 せめてこの女が綺麗でいれるようによ。


 そんな願いを込めて水流を金輪に当て続けていると。


 パキン。


 軽い音を立てて足輪が割れた。

 割れた輪の破片は、女の足から外れ、地面に落ちて、そのままスッと消えた。


「あ、切れちった。え、消えた? ごめん! ん? いや、ごめんじゃねえのか? どっちだ!?」


 オレは慌てて謝ってから、足の輪は切れて良かったのかと思いなおして、それが正解か確認するために女の顔をうかがうように見た。


 女の顔はひどく驚いていた。

 きょとんとした狸顔だ。それでも可愛いってすげえな。ってそんな場合じゃねえか。


「ねえ、切れたの? この足枷が? 鎖が? 嘘でしょ」


 女はワケがわからないと言った様子で自分の足首を見ながら呟く。


「あー切れたみたいだな。ダメだったか?」


「ダメじゃない!」


 女は大きくかぶりを振った。


「そっか、なら良かったな」


「ね、これって夢じゃない?」


「お、おう。それはオレにもわからん。オレもさっきまで死にかけてたからな。オレの死に際の夢かもしんねえし」


「それもそうね。いい。夢でもいいわ。ありがとう! 私、解放された! 解放されたのよ!」


 そういう女の目からはボロボロと涙がこぼれていた。

 女泣かしちまったけど、でも笑ってるしよ、こういうのは多分セーフだよな?


「お、おう。良かったな? て事はこっから一緒に出れるって事でいいのか?」


「ええ! 一緒に行けるわ!」


「おう、じゃ一緒に行こうぜ」

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