清掃員クリア、少女と出会う。
評価とブクマありがとうございます!
うれしい!
ほれ、こんだけ聞きゃあオレがどれだけ希望にあふれてたかわかっただろ?
すごくね?
天にも昇るような気持ちから地の底へ叩き込まれたんだぜ。
さすがゴッドブレス。ゴールド級パーティはシャレが効いてるぜ。
ずっと地面と熱烈キッスもしてらんねってんで、なんとか仰向けにはなったけどよ。
魔力が切れたオレはこっからもう全く動けねえのよ。
ここまでなんとか頑張ってみたんだけどよ。あとは魔物の餌になんのかな?
なあ魔物、そこらへんどうなんだよ?
てかお前らもさっさと喰えよ。何やってんだよ。死の恐怖を味あわせると肉が旨くなる系のアレか?
獣が高尚な事やってんじゃねえってんだ。
まあこのまま時間さえもらえれば生き残る目もあるからありがてえんだけどな。
来るならさっさと来い!
来ないならずっと来ないで! お願い!
願うような憎むような、そんな視線を魔物へと向ける。
「って? あれ?」
あいつらいなくね?
さっきまで何頭もでオレを取り囲んでたのによ。どこいった?
オレの長話が嫌でいなくなったか?
これじゃ小声でブツブツ喋ってる変な小僧になっちまうじゃねえか。
「どこいったー?」
返事がねえ。
あれ? なんだあれ?
魔物どもの代わりに少し離れた場所にいるのは揺れるワンピースか?
視界の端でチラチラしか見えねえな。ワンピースだけが浮くわけねえから。ありゃ女か?
くっそ。魔力切れで首すら動かねえ、仕方ねえから、視軸だけを右に無理やり動かす。
あ、やっぱり女だった。
銀色の髪、透き通る白い肌。ちょっと見ない感じのワンピースを着てる。ありゃあ民族調ってやつか?
んー、もしかして……ありゃあレイスってやつかー?
レイスってのは霊体系の魔物の上位種だったよな。
そんなのが出張ってきてんだ、そりゃあ獣どももいなくなるわなあ。
「ま、獣にむしゃむしゃされるより、幽霊でも可愛い女にやられた方がイイかもな……」
そう、ひとりごちた言葉に。
レイスの頬が少しだけ赤らんだ気がする。
ん? と気になってその顔をしっかり見ると、思っていたよりもさらに可愛い。
通った鼻筋、薄い上唇と少しだけぽってりした下唇、目は前髪に隠れてよく見えねえけどタレ目な感じか。
視線だけで眺めてると、女が音もなくゆっくりとオレの方へ近づいてきた。
「お、ついにやる気になったか? さっさと魂でもなんでも喰えよ。間際までオマエの可愛い顔をしっかりと拝ませてもらうからよ」
オレの言葉に頬を染めた女の口が動く。
「……食べないわよ」
わ! レイスが喋った!
「わあ! レイスが喋った!」
心の声が言葉が一緒にでちまう位にびっくりした。
だってレイスが喋るなんて話は初めて聞いたもんな。
理性を失って魂をひたすら求める系女子じゃないのかレイスって?
「バカね、喋るわよ。だって私レイスじゃないもの」
「レイスじゃない? プルガダンジョンの最奥でゆらゆら浮かんだ幽霊っぽい女がレイスじゃない?」
「ええ、そうね。レイスじゃないわ。ここはプルガダンジョンの最奥で、私はそのダンジョンボスよ」
「もっとひでえじゃん!」
オレ死んだわ。
「そうね」
オレの素直な感想に女はフフッと笑った。
それはダンジョンのボスフロアには似合わない自然で可憐な笑顔だった。
かわい。
「かわいい」
また心の声と言葉が一緒に出ちまった。
「そんな事言われたの初めて」
今度は間違いなく女の頬が赤らんだ。
「そうか? 生前? でいいのか? その頃とかによく言われたんじゃねえか? 少なくともガルグの街じゃ滅多に見る事ない位には可愛いぜ?」
「……ん、覚えてないわね。私、ずっとここにいるから。もうどれ位ここにいるのかも、元々私がなんだったのかわかんない程に長く居るの。昔の事って何一つ覚えていない。覚えているのはたまにここに来る人間に襲われた記憶だけ。ここではみんな私を敵としてしか見ないわ。しかも最近はその人間すら全く来なくなったし。貴方、だいぶ久しぶりのお客さんよ?」
「あー、それねー。そうなんだよな。ダンジョンボスのフロアって立ち入り禁止になってんだよ。オレの生まれる前なんだけどな、ダンジョンを攻略したらダンジョンがなくなって塔になっちまったんだって。んで、ダンジョンがなくなっちまっちゃ飯が食えねえってんでダンジョンの完全攻略禁止になったらしいぜ」
だからダンジョンボスの部屋には誰もこねえんだ。
そう、オレは言葉をしめた。
「そうなのね」
オレの言葉に女は少しだけさみしそうに呟いた。
ダンジョンボスでもやっぱさみしいって感じるんかな?
まーたしかにコレからもずっと続く孤独を思えば孤独も感じるんかな?
お化けは死なないしな。
そっかーやっぱずっと一人はさみしいよな。
出来るなら助けてえよな。
どうしたもんかな?
自分の明日すらどうにもならねえような状況で、オレはいっぱしに頭を悩ませた。