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清掃員クリア、もおだてりゃ穴に落とされる。

「本日の最終ミーティングをしよう」


 マックさんの一声でゴッドブレス一同は、ダンジョンの奥、突き当たりにある場所に集まっていた。

 どうやらここには下層階へ通じる深い穴があるらしく。

 下から噴き出す風が唸っていた。


「さて、新規加入の二人。そこへ、前に出てくれるかい? 講評をしよう」


「はい!」


「うっす」


 トーイは元気よく、オレは何を言われるのかとドギマギしながら前に出た。

 だってオレは戦闘で何一つ役に立ってない。

 背後の大穴から噴き出す風が背筋を冷やす。


「まずはトーイ君」


「はい!」


「さすが天の称号を得た魔法系スキルだけあるね。麻痺系のデバッファーとして戦闘経験を積みつつ、電撃系の攻撃方面への成長を期待しているよ」


「は! はい! がんばりまっす!」


 隣のトーイを見ると頬を紅潮させて答えている。

 うれしーんだろな。

 オレだったらぜってーうれしーもんな。


「次は……えっと……」


「あ、クリアっす」


 まだ覚えてもらえてない。

 て事は評価も良くないんだろな。所詮雑用だしな。


「うん、クリア君。解体も早いし掃除も丁寧だ」


「マジっすか!?」


 予想に反してすっげえ褒められるじゃん!

 いやうれしいな。他人に認められるってこんなにうれしんだな。やっべえ泣きそ。


「ああ、あとは最期の役目を果たしてもらったら、君も名誉団員に正式に加入だ」


「さいご? まだ何かあるんっすか? でもそれで正式に団員になれるんっすか?」


「そうだよ」


「うっす! あざっす! がんばります!」


「そう言ってもらえるとうれしいよ。じゃあトーイ君、彼に君のスキルをかけて」


「え?」


「は?」


 オレとトーイ君から同時に息のような声がもれた。


「聞こえなかった? トーイ君、スキル発動だよ」


 マックさんの声がまるで呪文のようにトーイへ飛んだ。


「は! ボルトチェイン(天の雷鎖)


 トーイはまるで強制されたかのようにスキルを発動させ、そのスキルはまっすぐにオレに向かった。


「ガ! ッァ……」


 全身に衝撃が走ったオレの体は指先一本すら動かせなくなった。

 叫びすらあげられない。喉まで痺れて息も詰まりそうだ。


 なんで。


 トーイ君を見ると。

 何が起こったのかわからずに、自分の手を見てただ震えている。


 マックさんを見る。

 うんうんと頷いていた。

 意図した通りって顔だ。


 なんでだ。

 褒めてくれたじゃないか。

 戦闘以外では役に立ってたじゃないか。


 そんなオレの疑問に丁寧にマックは答える。

 以心伝心嬉しくねえ。


「うん、これはね、見せしめだよ。同時に新人の通過儀礼だね」


「通過儀礼」


 トーイが手から視線を上げ、マックさんを見てから、ひとりごとのように問いかける。


「ああ、我らゴッドブレスは天の称号持ちしか加入を認めていない。だけれどね、加入を希望する声は後を絶たないのだよ。正直いちいち会ってみてお断りしてっていう作業が実にめんどくさいんだ。そこで天の称号持ち以外は我らの戦闘についていけないとアピールするために定期的に犠牲になってもらっている。そうすればしばらくは有象無象は寄ってこなくなるからね。今回の犠牲がクリア君、きみだよ」


 犠牲。

 マジかよ。

 要は加入申請を断るのがめんどくせえって事だろ?

 そんな事のために人を殺すってのか?


 我ら冒険者は雑用嫌いとして有名だからな。存分に助けてもらえると思う。

 って言ってたな。雑用が嫌いってレベルじゃねえぞ。


 そんなオレの憤りは、言葉にも表情にも出来ない。

 オレは完全にトーイの魔法に痺れちまってる。


「そしてそれを新人にやってもらっている。新人にゴッドブレスの格を理解してもらうのと同時に、我らと同じ十字架を背負ってもらうんだ。わかるかい、トーイ君?」


「は……ははは、はい」


 クソが。

 お利口さんにわかってんじゃねえよ。

 お前逆の立場だったらぜってえキレてんだろうが。寄付を貰いにいく時にそんな金があるんだったら俺の小遣いにしてくれよ、あんなゴミどもいらねえよって言ってただろうがよ。


「じゃあ、トーイ君、そこの……えっと……彼を、そこの穴、地獄の蓋(パライソ)に蹴り落としたまえ」


「は……はい」


 オレを見るトーイの目は真っ暗になっていた。

 やっぱこいつオレの事なんてゴミとしか思ってねえな。


 トーイの足が見える。

 やけにゆっくりに感じるのはオレが死にそうだからか。それともトーイのヤロウがためらってんのか?

 それでもその足はオレに近づいて。

 ゆうっくりと。腹に当たった。多分当たった。痺れてて感触はない。


 次の瞬間にオレが感じたのは重力から解放される感覚だった。


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