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冒険者クリア、おおいに浮かれる。

「はー! オレってば、冒険者なんだよなー!」


 オレはライラさんから受け取ったギルド証を天に輝くお日様にかかげてみる。

 そのカードは後光が差して神々しいまである。

 ランクは最低のブロンズだけど。それでもオレには最高に憧れのギルドカードだ。


 憧れて憧れて。

 一度は諦めかけたこの冒険者の証! ギルドカード。

 それが今、オレの手の中にある!


「もーさーサイコーなんだよなー」


 ニヤニヤが止まらない。

 道を歩いている間もこの調子だから何人かの人にぶつかっては謝ってを繰り返してる。

 でもやめられん。


「もう、さっきから何度目なのよ、それ」


 隣でテラがからかうようにオレに言う。

 はん、十を超えてからは数えてないぜ。


「いやー何度やってもカッケーだろこれー。なあなあ見ろよ、これ、すっごくね?」


 語彙が消えちまってるけどかまやしねえ。

 オレは自慢のギルドカードをテラに見せつけてやる。


「だから私も同じの持ってるって、さっきから言ってるじゃないのよ」


 テラは目の前に差し出されてオレのカードを軽く押し返しながら言う。

 なんだ、これを見飽きたってのか? 贅沢なやつだなー。


「テラも自分のをよくみてみろーカッケーぞー」


 オレは押し返されたカードをまた自分の目の前に戻して見つめる。

 鈍く光る銅色だけどよ、オレには金貨の色よりも綺麗に見えるぜ。


「はいはい、わかったわよー。それよりもさっきのお金で装備を揃えに行くんでしょ? ルーキー冒険者さん?」


 冒険者? なになに? 冒険者なんてどこにいんのよ? んー周りには普通の人しかいませんけどー?

 えー? 待って待って、もしかして、それって、オレの事? あーオレ冒険者になったもんなー。

 ふーすっげえいい響き。


「テラさん、それ、もっかい言ってくれませんか?」


 人差し指を立ててテラにお願いする。

 そんなオレにテラは意味がわからんって顔を返してきた。


「何をよ?」


「いや、冒険者さんってやつ」


 オレの言葉にテラは呆れたように笑う。


「はいはい、ルーキー冒険者さん、さっさと武器と防具を揃えに行きましょ」


 くはあ、すげえ嬉しいぜ! 他人から言われるとマジで実感が湧いて溢れて煮立って溢れちまう。

 そうだな。武器と防具だな。冒険者といえばそれだよな。バックパックも必要だしランタンや薬草やなんかも必要だよな。ギルド長からもらった金があれば、贅沢しなければ一式揃えられるんだぜ。

 なんだこれラッキーすぎんか?

 ダンジョンの大穴の底で悪態ついてた時とは大違いじゃねえか。あー! 防具とか憧れすぎてやべー! テラに言われたら余計に欲しくなってきちまった。こんなとこでぐだぐだしてる場合じゃねえよな。

 全くオレはバカだな。さっさと向かうぜ。


「おう! 武器と防具の店、アルゴス屋はこっちだ! いくぜ相棒!」


 オレはそう言って武器屋へ駆け出した。


「私もダンジョンから解放された時、あんなだったのかな?」


 少し遅れてオレの後ろを駆けてくるテラの呟きは、もちろんオレの耳には入らなかった。

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