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夢生  作者: 愚か者
3/3

車内にて


電車に揺られる最中、吊革に捕まりながら

目の前に居るやたら接触面積の広いカップルを

眺めていた。


そいつらは満員電車の中であるというにも関わらず互いの手を重ね合い、優しく相手を慈しみながら微笑みと接吻を交わしている。


きっと周りのことが一切見えてはいないのだろう

不快感が自身の腹の奥底から沸き起こってくる。


不快感は今にも僕の口から溢れてしまいそうだ。


ありとあらゆる罵声を浴びせかけて、こいつらを今すぐ僕の目の前から消し去りたくなっていく。


僕の憎悪と嫌悪感が臨界に達しかけたところで、老年の男性が落ち着いた口調で彼らを窘めた。


男性の声はしっかりと彼らに届いたようで、恥ずかしそうにしながら席を立ち、老年の男性に席を譲る


自身の恥ずかしさにきっと気づいたのだろう、と

心の中で笑っていると1つ気がついた。


彼らの座っていた席は優先座席だったということだ


なぜ僕は彼らが高齢者を差し置いで座っているという事実は認識せず、彼らがところ構わずに暑苦しい程に愛を振り撒き散らしているということばかりに不快感を感じていたのだろうか。


社会風紀的に考えればどちらも同程度に迷惑だと思うのだが…。


暫時考え、気がつく。


彼らは昔の僕と彼女に似ていた。昔僕と彼女も同じような行為に及んでいた。


当時はそれを互いに恥ずかしいとも思ってはいなかった、それ以上に互いに愛を記し合うことに酔いしれ、多幸感に包まれていたためだ。


きっと彼らもそうなのだろう、だから僕は彼らを不快に思ったのだ。


きっと、これは同族嫌悪というものだと

僕は思った。


周りを不快にして、自身が幸せになるのは悪だろうか?

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