潜入水神会編㉒〈資格試験に向けて〉
山神が提示した条件は以下であった。
「一つ、精製術師資格試験までの2ヶ月間、精製術の無断使用はしないこと。」
「二つ、試験までの2ヶ月間うちの隊員を1名、お前達と常に同行させる。」
「三つ、資格試験にはこの第二支部の推薦枠として受験してもらう。」
「推薦?」
「まずお前達は特殊精製術師資格(軍事)の試験の概要を知っておるのか?」
「いや、知らん。」
「まったく...凛、説明してやってくれ。」
山上の隣にいる付き人のような女性隊員が話し始める。
「はい、まず試験内容ですが、
学科試験と実技①実技②があり、概ねこの三項目にて合否が決定します。
フォースの各支部や、国軍、警察庁など、一定の組織には推薦枠があり、所属の見習い隊員などを推薦できます。
といっても推薦を行うのは、毎年ほぼフォースの各支部のみですが..
フォースでは各支部ごとに毎年3名分の推薦枠が与えられ、推薦者は学科試験が免除になり、実技①②のみとなります。」
「じゃあ楽になるのか?」
「試験科目は一つ少なくなるので、そういう意味では楽かもしれませんが、推薦者は毎年、あることに利用されています。」
「あること?」
「各支部の力を誇示することです。」
「力の誇示?」
「実技①②の成績上位優秀者のみで、精製術の軍事利用における代表戦が行われるのです。
代表戦に残る受験者は成績優秀者ですから、基本的に全員合格者です。そのため、試験という枠から少し外れ、各支部の推薦者(新人達)が代表戦にてお披露目され、その力量を競い、支部ごとの派閥争いの一つとなっています。
この代表戦には、フォース高官や要人も観戦に来られます。」
「ふーんよくわかんねーけど、代表戦は面白そうだな!」
「私達はこの第二支部の推薦で受験し、活躍しろということですね?」
「ははは、チアヤはレントと違って察しが良いな!」
「なるほど、じゃあとにかく強い奴と戦ってて勝てってことだな。燃えますねレントさん」
「おう、やってやろうぜ」
「話はそういうことだ。では..おいナツミ」
「はっ」
「お前に任務を与える。
ここにいる3名の通う学校に潜入し、常時監視すること。違反行為をするようならすぐに報告せよ。」
「は..はぁ」
山神は部屋の隅にいた女性隊員に任務を依頼した。彼女の名前は今井ナツミ、任務を受けた今井は困り顔である。
「あなたに向いているから山神さんはあなたを選んだのよ自信を持って。」
秘書の凛が今井に言う。
「あなたはこの子達と歳も近いし、それにあなたは入隊2年目で中位隊員になった優秀な隊員よ。あなたになら任せられる。ね、山神さん。」
「その通りだ」
「了解しました。精一杯がんばります。」
こうして白金、志野川、烈島の3人の違反行為は免除となり、解散となった。
支部の出口を向かう途中、ロビーで白金は落合に呼び止められる。
「おい」
「なんですか?」
「お前たち3人が水神会に乗り込んだ理由を考えていた。」
「理由?」
「お前たちと水神会の間に因縁があったとは思えねぇ。それに水神会は確かに裏で暗躍している組織だったが、お前たちが目撃するような表立った行動はしていなかったはずだ。」
「なにがいいたいんすか?」
「いや..水神会が雇っていた連中、アリとか呼ばれていた..そいつらも一度、連行した方が良いかと思ってな。」
それを聞いて白金の目つきが変わる。
「おい..今更出てきてしゃしゃってんなよ?」
それを聞いた落合はニヤッと笑う。
「ふ..からかっただけさ。俺はそんなに暇じゃねぇ」
そういうと落合は歩き出す。
「おっとそうだ、表に来客だぞ、じゃーな」
「・・・ちっ、なんだあのやろう」
白金はそう呟き、玄関口に向かう。
そこには志野川、烈島もおり、3人は合流し、支部を出る。
玄関を出るとそこには水野の姿があった。
水野は心配した様子で3人を見ている。
「あの..私、自分のことばかり..ごめんなさい」
「・・・何言ってんだ?
水神会の連中はむかいついたから潰しただけ、
あんたは自分の家族を守ろうとしただけだ。
人はみんな自分勝手に生きてるんだ。」
白金はそのままその場を離れようと歩いていく。
「本当に、ありがとう」
水野は歩いて行く3人の背中にお辞儀をして礼を言う。
「・・・おう」
水神会会長 水時、幹部 角田、桐崎は、フォースに捉えられた。3人は特殊精製違反 特別拘置所に投獄されることとなるだろう。
ウィスタリアは今後、フォースによる事情聴取のうえ、刑罰が科されるかどうかを判断されるが、有罪となったとしても情状酌量の余地があり、執行猶予がつくだろうとのこと。
こうして水神会は事実上の解散となり、一連の騒動の幕は閉じた。
次回より新章突入です。
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