潜入水神会編⑭〈水没〉
白金が大量の水に飲み込まれ何分程が経過したであろうか。
波に飲まれた白金はその水流に流され、回転し、上下もわからなくなっていた。
ふと、流された先を見ると光が差し込んでいる。
この地下室は10〜15m程の高さのある深い地下室であったが、その全てが浸水したわけではなく、天井から数mの隙間が存在しているようだ。
白金が見た光は水没していない天井の光だった。
白金は光に向かって浮上し、ようやく顔を出す。
「ゴホッゴホッ」
「生きていたか、まぁいい」
先程まで天井近くまで伸びていた柱の上に水時が立ち、白金を見下ろしている。
「この無数の柱は水が溜まることを想定した足場だったのか」
そう言いながら白金は別の柱の上によじ登る。
「この足場の上だけでは身動きが取れないが、それはお前も同じこと」
「同じ?何を言ってる。
言ったはずだ、お前はこの地下室に入った時点で終わっていると」
そういうと水時は柱から水の中へ飛び込む
(自ら水の中へ?)
白金は姿を見失った水時を警戒していると、徐々に水面が荒れ始め、白金は不意に背後から訪れた津波に水の中に落とされる。
水中に落とされた水時は周りを警戒していると、水時が人間離れした速さで水中を泳いでいる。
白金は驚きながらもあることに気づく
水時は鱗だけでなく、手足の指の間に小さな水かきのようなものがついている。
(これも実験によるもの..?)
水時は素早い動きで白金の背後に回ると、取り出したナイフで白金の背中を切り裂く。
「ウガッ」
その後も白金は水時のスピードに手も足も出ず体中を切り裂かれていく。
(このままでは..岸に上がらないと..)
白金が柱に手をかけると、水中から勢いよく飛び出した水時が柱の上に乗り、白金の足を踏む。
「水中ではお前は何もできない。」
そういうと、白金を蹴り飛ばし、手をかざす。
「クラフト:渦潮」
白金の周囲の水が渦を巻き始める。
白金が泳いでその場を離れようとするが、渦に巻き込まれていく。
「その渦潮に引きずりこまれれば、もう水上にあがることはできない。」
「なんだこれ、くそっ」
白金は身動きが取れなくなり、徐々に渦の中心に引きずり込まれる。
そして渦の中心まで行くと、水中へと引きずり込まれていく。
「ふっ終わりだ。」
白金の姿が水中に消えたかと思ったその時、
水中から一本の四角い鉄柱が勢いよく飛び出し、天井に突き刺さる。
その鉄柱から枝分かれするように大量の鉄の柱が一本目の柱から伸び、ドンドンと天井に増殖する鉄の柱が突き刺さっていく。
天井付近は一気に入り組んだ鉄の柱の足場が出来上がる。
「大クラフト:鉄柱吊足場」
天井から吊られた足場の上に白金の姿がある。
「貴様、いつのまに..」
白金は不敵に笑うが、その手は震えている。
「ははっその震え、精製力欠乏症になりかけているな?おまえにはもう精製力が残ってねぇ」
精製力を使いすぎた場合、精製力欠乏症という症状が現れ、クラフトができないうえ、身体の不全や体中の激しい痛みが生じる。
手の震えは精製力を使いきり、欠乏症になりかけているサインであった。
「ははは、残念だったなぁ、どっちみちお前は終わりだ。」
そういうと、水時はかざした手から水流弾を白金に放って行く。
白金は柱に身を隠しながら耐える。
(くそ!どうする..。もう大クラフトは使えねーし、普通のクラフトもあと一回が限度か..)
そんなことを考えていると水時はさらに追撃をかける。
「クラフト:津波」
大津波ほどではないが大きな波が鉄骨の上にいる白金を襲う。
白金は鉄骨に捕まり耐えているが、徐々に水かさが増し、鉄骨の足場も浸水していく。
水は天井近くまで増え、白金はまたしても水に浸かってしまった。
「これで終わりだ!クラフト:渦潮」
先程よりも大きな渦潮が白金を巻き込む。
「くそ、万事休すか」
大クラフトが使えない白金にはこれを防ぐ術がもうない。渦潮は白金を水中へ引きずり込み。
またしても白金の姿は見えなくなった。




