潜入水神会編⑨〈ピンチ!志野川VSウィスタリア〉
場面は変わり、白金による決起棟の鉄壁のクラフトがなされた時、離れでは避難が行われていた。この離れには能力の持たない女性や、10歳未満の少女もいるため、有事の際には施設外への避難がすぐに行われる。
「早く行きなさい、落ち着いて門の外まで出るのよ。」
「はい。ウィスタリア様」
組員達はウィスタリアの号令の下、駆け足で避難していく。
「これで全員かしら?」
避難が完了し、施設内に残った者がいないか確認する。
「あら、どうしたの志野田ちゃん。」
離れの大広間には志野川の姿がある。
志野川は両手に投げナイフをクラフトする。
「申し訳ありませんが、少しお時間をいただきます。」
そういうと、戦闘体制に入る。
「んふ、やっぱりそうきたわね。
いいわ、相手してあげる。」
志野川はウィスタリアの気づいていたかの様な口調に少し驚くが、すぐにウィスタリアに意識を集中する。
(戦わなくてもわかる。この威圧感。相当強い!)
志野川は新たにクラフトした投げナイフを加え、4本のナイフをウィスタリアに投げる。
「んふ、クラフト!」
そういうとウィスタリアの目の前の地面から2本の大きな植物が生え、志野川のナイフを弾く。
「これは..」
「藤の花-wisteria flowerよ。」
2本の植物に藤の花が開花する。
「生き物のクラフトは不可能なはず..」
「それは少し古い情報ね。最新の研究では、比較的組織構成の単純な一部の植物はクラフトが可能になっているわ。」
そういうと、ウィスタリアは手を志野川の方に向ける。
「咲き誇れ、クラフト:藤樹林!」
志野川周辺の足元から木がいくつも生え、頭上までを覆うかの様に藤の花が咲く。
床から飛び出す幾つもの幹が視界を奪い、また、藤の花の蔦は志野川を捉える様に志野川に迫りながらクラフトされていく。
「その樹林の中じゃ、うまく動けないでしょう。捕まっておわりよ。....んふ?」
ウィスタリアの予想に反し、志野川は藤の木々が生い茂る中で、木々を上手く使い素早く動いている。
そしてウィスタリアの死角から、投げナイフを連続で投擲する。
(んふ、これは慣れ..かしらね。
こういう状況での戦いに慣れているんだわ。)
志野川は思い出していた。小さい頃から、白金らとバカラ山の木々の中で何度も行った模擬戦を。
「こんな木や植物、私にとっては弊害にならない。」
ウィスタリアの視界の左側から4本のナイフが飛んでくる。
「んふ、攻撃は単調ね。クラフト!」
ウィスタリアは藤の木をクラフトし投げナイフを弾く。
ウィスタリアが右側に目を向けると、そこには藤の樹林から飛び出してきた志野川がナイフを構え、ウィスタリアの目の前まで来ていた。
(早い..!)
そのままナイフをウィスタリアに突き立てる。
「んふ」
ナイフはウィスタリアが咄嗟に出した左腕にささる。
「!?」
志野川が突き立てたナイフはウィスタリアの筋肉を通らず皮先で止まっている。
「残念ね。あなたの力じゃ、私に付けられるのは擦り傷程度ね。
んふ、少し力を見せましょう。」
そういうと、ウィスタリアは右手の拳を握り締める。その拳には精製の光を纏っている。
そしてその拳を志野川に向けて振り抜く、志野川は両腕で受け止めるが、勢いよく後ろに吹き飛ばされる。
その威力は強大で、飛ばされる志野川は後ろにあった無数の藤の木を薙ぎ倒し、離れの壁を突き破り外に放り出される。
離れの庭には、倒れ込み動かない志野川の姿があった。




