第4章 腸閉塞手術(2)7日目
そして朝が来て、入院7日目である。午前中に腹部レントゲンの指示が来た。隣の住人も同行する。二人で車椅子に乗り、ナースに押されて地下1階へ行く。
先にオレがレントゲンを撮る。隣人が終わるのを待って、エレベーターに乗った。寿司屋の大将はかなり辛そうである。オレは会釈しただけで、話はしなかった。
午後になると山田先生が回診され
「明日、閉塞部分にドレーンを繋ぎます。これで強制的に排出させ、腹を元通りにしますよ。手術時間は昼からです」
話すだけ話すと、行ってしまった。医師は患者の質問を聞き、答える義務があるのじゃなかったかな。でもこのときは半ば、他人事のように考えていた。
腹の痛みで、思考が停止してしまうのが恐ろしい。何も考えなくなると、フッと思いつくのは後悔の深い海の闇である。なんで、これまで大腸検査をしなかったのかと。ポジティブ思考は四散して、ろくなことしか思いつかない。ではどうしたら良いのだろうか。
経験者は語るである。必ず上手くいくと信じること。自分の未来はまだまだ先があり、神様により生かされている。
何よりも神様から頂いた使命は、アルコール依存症という恐ろしい病気を社会に伝えることだ。まだ何もできていない。
ここで挫折するはずもなく、オレは神様から一本釣りされて選ばれているのだからね。信じることにより、潜在意識に訴えて、これを活性化させる。
眠っている潜在意識は目を覚まし、身体の各所に指示を与えるだろう。免疫細胞がガン細胞の増殖を阻止するのだ。転移なども許さない。
あちこちから免疫細胞が集合し、ガン細胞の力を奪う。増殖を止められた基幹ガン細胞は悪さができなくなる。滅亡させることは難しいが、健康体には戻れるだろう。
これが潜在意識の力である。薬も使わず自分の精神で治してしまうなんて、どこの誰がやったのだと思うだろう。
この話は『短編小説の書き方』のテーマで、教えて頂いた講師の方である。先生はアレルギーをこれで克服された。彼の知人はガンも治癒したとか。医療のない時代は自助努力のみで、病気に打ち勝つことしか方法はなかった。潜在意識の復活がいかに大事かがわかる。
あのトランプ大統領の兄上がアルコールと薬物依存症だった。その兄がジュニアハイスクールの弟ドナルドに
「ドナルド、薬はむろんのこと、アルコールとタバコは絶対に手を出すな。うちの家系は依存症だ。手を出せば、俺みたいに野垂れ死にするぞ」
と言い残した。ドナルドはこの兄の遺言を頑なに守り、未だに手を出していない。これこそ、潜在意識に訴えた絶酒法であり、意志の力だけでは難しいだろう。
いかがであろうか。信じることから始めるのがポイントである。白人はキリストを唯一の神として信じている。オレは依存症となり、アルコールを止めるために神を信じるようになった。
オレの神は5柱いる。その内3柱は日本武尊、帝釈天、天使ミカエルだ。
神道、仏教、キリスト教から1柱づつ来て頂いた。神道はオレのご先祖が桓武平氏なので、日本武尊も遠いご先祖様となるから。
仏教の帝釈天はインド神話でも、インドラ神として最強の武神だから。本当の理由は寅さん繋がりである。そしてキリスト教のミカエルは最強の天使であり、度々拙作に登場して頂いているため。
オレは己を信じるために、神様を信じるようになった。別に神でなくても構わないようだ。人間でも、物体でも、己の信じるものを仮の神とすればよい。要するに信じることを放棄しなければよいのである。
そして寝る前と朝起きたときに、黙想から始めよう。わずか1,2分で構わない。自分が将来どんなことをしているか、考えてみよう。当然だが願望でもよい。
それが実現することを信じて、黙想を終える。1ヶ月も続けると、変化が起きるかもしれない。それは内面であって、心が穏やかになっているだろう。
人により差が出るのは致し方ない。また自分では気がつかないようだ。今日からオレも毎日黙想を続けてみたい。
なに!?作者はまだ、朝晩の黙想を未経験なのか。なんて言われてしまうだろう。その通り、人間追い詰められないと、なかなか行動しないもの。黙想を1年実行すればベテランである。
今はガンと共存することで、己の生命力を延ばしたい。目に見えないガン細胞はあちこちにいるはずだ。このため再発を防止するのに、自己細胞を攻撃する放射線治療や抗ガン剤投与を受ける方は多い。
オレは自己細胞を自らの意志では殺さない。だから放射線治療や抗ガン剤はしないつもりだ。再発したらどうするのだ?
簡単である、潜在意識に賭けるのだ。放射線治療だって再発するのだから、一か八かの勝負である。