Scene_114_覚悟
ケーキは私が戻った先とは違うパラレルワールドから来た可能性もあるが、もし私の未来が……そうなるのだとしたら。
レアルが次の管理人にはならないのか、リャウの持つ矢でレアルが貫かれてしまうのか、或いはまた別の事象が起こるか。
私にとっては悪くない知らせだけど、レアルのことが心配になる。
一応どうなるのかアルブムと会って調べておこう。
ケーキはジットリと私を見つめてくる。
……こういう見た目も中々可愛いかも知れない。
ただ髪とか生え際どうなってるのか気になる。
ケーキは徐々に顔を赤くする。
「レヴララさんって実物は本当に可愛らしいですね」
「ん、こっちって何されたの?」
「犯人から家族を皆殺しにされた後誘拐されて、産まれる前の子供を何度も殺されました。見つけられた時は口を縫い付けられ、手足を切断された状態でありながらも生きていていましたが、警察に逆上した犯人に殺されたそうです」
ケーキは興奮気味に話す。
「この事件を受けて犯人の人格分析が行われ、犯人と近い境遇の犯罪予備軍と見受けられた者はレヴララさんの事件当初の体験や痛みを追体験させられるようになり、凶悪犯罪は激減。誘拐先の家の近くにはレヴララさんの裸体像が作られました」
「何で裸体像なの」
「見に来た人に犯罪予備軍がいたら捕まえるためだそうです。近代史で最も悲惨に死んで社会を良い方へ変えた偉人ですよ」
ケーキは私の手を握ってくる。
世の中に影響与えてるの嫌だし裸体像もやだな。
「しかし、もっと純粋そうなイメージでしたが。とても不機……知的な感じで良いですね、いあ、失礼致しました」
「けどさ。犯罪者に追体験させるってのもだけど、こっちの人権が世の中にまで踏み躙られてるし。人の死に方を理由にした取り組みをするならもっとデリケートに扱うべきだと思うよ」
「そうですか。例えばどういう考えなんです?」
「……まず人格分析は世の中で色々な人がお互いうまく過ごせるように受けるもので、犯罪予備軍を見つけるとかそういうことの為ではないし。私が死んだ原因は犯罪者がそこにいたからっていうより安全面の問題や偶然もあったんじゃないの。……あと死に方理由にするんなら自殺はどうなんの。自分で自分を殺したから悪いのは追い込まれたソイツ? 追い込んだ誰か? 死ぬまで重大視しなかった周囲の人間?」
少し得意げだったケーキの顔が怯えたようになっていく。
それでも私はケーキに詰め寄る。
「激減したから何。誰が悪いとか言っても悪循環になるんじゃないの。許すのが難しいことほど許さないと、永遠に終わらないよ」
「でもそれあなたの中だけで解決することで、問題がある人は減りませんよね? 明確な優劣が付く以上、改心や成長を促すことは必要でしょう」
問題がある人って何だ、優劣って何だ。
……何か分からなくなってきてるな。
「あなたは綺麗事を言ってるだけなのでは? 現実を見てくださいよ」
この子めちゃくちゃ言ってくる……。
これ以上揉めると今後の関係が悪くなりそうだからやめとくか。
「さ、さっきまでの威勢はどうしたんですか? 黙ってないで何か言ったらどうです」
「悪い、少し熱くなってた。とりあえずこの話はやめよう」
「謝るならちゃんと謝ってくださいよ」
「ごめん」
私は頭を下げる。
「……いいでしょう、許します。でもあなたは殺されるべくして殺された、そんな気しますよ」
「……それじゃ町まで向かおうか」
ケーキと別れ、アルブムの元へ向かう。
椅子に座るとまたアルブムは少女の姿になり、私を見つめる。
……良かった、レアルはこの世界から消えるということはないようだし、レアルの望み通り次の管理権はレアルに移る。
ケーキと話した時ことが頭から離れない。
あっちも熱くなってたし、気にし過ぎても仕方ないけど。
自分の嫌な感情に左右され過ぎないよう気を付けなきゃな。
レアルのことをまた傷つけたくないし。
そのためにも、私のやるべきことをやらないと。
「アルブム。頼みがある」
アルブムは首を傾げる。