Scene_109_誤解
少年さんも同じ映像を見たらしい。
もしあの映像がレヴララさんの記憶なら、レヴララさんが転移者以外の時間を三年前に巻き戻した時点でレヴララさんの未来は凄まじく酷いものへ塗り替えられたようだった。
少年さんとたくさん話した。
レヴララさんがやったように次の管理者が工夫すれば代償を取り除けるのではないか? と聞くと、それでは次の管理者が前の管理者の代償を帳消しにする必要があるし、永遠とそれを繰り返さなければ誰かがやめるとその前の管理者は犠牲になる。
そもそもできることなのかも分からない。
次の管理者をレヴララは決めているようだったし、私たちが立候補してなれるものでもないだろう、ということを言われた。
少年さんも案を出してくれた。
レヴララさんのこと知ってる人を集めて皆で説得する、それから私が考えるようなことをしたらいい、と。
ただ転移者だけでは不十分かもしれない。
三年前に戻された人たちと共にあの白いドラゴンを倒し、レヴララと交流があったことを認識してもらわなければならない。
それは現実に起きていたことなのか分からない虚像で、確かめる術はない。
でも本当だとしたら放ってはおけない。
とりあえずレヴララの知り合いである転移者に、レヴララは実は苦しんでいるので助けたい、協力してくれる方は城下町外のジャムルの形の家まで。
時間は明日の夜20時。
ディナーの用意あります。
というメッセージをヘレストリカ以外に投げる。
練子という方から返事が来る。
よく分かんないけどいいよー、弟も連れてくると書かれている。
二つ目はカルシウムという、昔レヴララさんがPvPしたらしい相手だ。
レヴララが勝てば全財産から半分貰う、カルシウムが勝てばカルシウムのパーティーにレヴララが入るという取り決めだったと噂で聞いている。
色々と苦労している様子の子だったが、あの時負けた以上合わせる顔はない、そうだ。
しかしあの男はもういないのに、なぜ苦しんでいると言える? と書かれている。
私はありのままの起きたことを文章にして返信する。
分かった、俺は行かないが他の転移者たちに声をかけておく、と書いてある。
……リビングには十人集まる。
テーブルに料理を並べ、周りに椅子を置く。
「本日は集まって頂きありがとうございます」
何人かは私の方を睨んでいる。
……PvPで殺した四人パーティーだ。
「まさかお前だったなんて」
「すみません、無差別PvPのことは保留にさせてください」
「……はあ。カルシウムさんから話は聞いてる、お前のことは一切信頼しない、でもレヴララのためにだ! 協力してやる」
「ありがとうございます」
無差別PvPされたからって怒るなんて。
少し気に入らないけど仕方ない。
レヴララさんのために集まってもらっている訳だし、主催してる私がまとめるため我慢できるところはしないと。
「俺も無差別PvPでその子に負けたけど、保留か。分かったよ」
「練介あの子と戦ったの?」
「隠れて奇襲を仕掛けたけど、コンボ外したし隠れ場所見つけられたしダメだった」
「へーえ。まあレベル300になってるくらいだし強いよね。それと、説得だっけ? すぐ行くの?」
「いえ。説得の前に転移者以外のレヴララさんの知り合いに、レヴララさんのこと思い出してもらおうかと。その為に白いドラゴンを誘き出して倒すつもりです」
「倒して何になるんだ」
「それは倒した時に、何故かは分かりませんがレヴララさんの記憶が頭に流れ込んで参りまして」
玄関の扉が開き、誰かが入ってくる。
フリックとフーとドラウスだ。
案内人と城壁の人たちが何の用だろう。
「悪いけど。レヴララに何かしようとするのはやめてくれないか?」
ドラウスが元気良さげに言う。
「なぜですか」
「案内人の中にも転移者がいてね、深海フィールドが消えて暇になったオイラたちも色々と事情を把握させられてる。ジャムルは死ぬ前に捕まっていたし、ジャムルは捕まる数日前にレヴララに何故俺を殺したのかと聞いてきていたそうだ」
ドラウスは大きなホログラムを出してこちらに見せる。
「音声は切ってあるけど、ジャムルが刑務所へ送られる時の映像だ。なかなか過激だったぞ、まあそんなことより転移者の一部が革命を起こそうとしていたようじゃないか? その転移者たちがレヴララの変えたこの世界に納得していないとするなら、ジャムルを殺したのが転移者なら。こういった集会はちょっと見過ごせないのだ」
「でも、レヴララが自分の幸せを捨ててまでこの世界をよくしようとしてるのは……」
「自分を犠牲にして、この世界をよくしようと努力してる人間。偉人ともなり得る所業、それを君らは邪魔するつもりなのかい?」
「解釈違いです、そこまでやってほしいなんて誰も頼んでない。私たちはレヴララの助けになりたいんです」
「何で君はそこまでレヴララに執着する? レヴララ本人は君とは仲良くないと言っていたぞ」
「それはレアルさんとかと比べると全然ですけど、私にも信念があるんです。だから話だけでも聞いてほしいのです」
「レヴララに行動を変えるよう求めていないか? まあレヴララのことはオイラたちが全力でサポートしてるから、邪魔しないでやってくれ」
それは無理だ。
黙って見ていることなんてできない。
権限を与えたジャムルさんが悪く思えるのが嫌だし、それに
ガレイさんのこともある。
「もし邪魔をしたらどうするのですか」
「君たちを殺してこの世界から追放する。……脅したくはなかったんだけどね、オイラたちはジャムルみたく、また仲間を失いたくはないんだ」
「じゃあな」
三人は家から出ていく。
「案内人がああいうなら、俺たち帰るわ。じゃあな」
四人パーティーやらが帰っていく。
残っているのは私と少年さんともう二人だけだ。
「練介、やめとかない? ウチらが首突っ込むようなことじゃない気がするよ」
「白いドラゴンがどうとかっていうの、お姉ちゃんは気にならない?」
「気になるけどさ。案内人たちに任せといた方がいい気するよ。ジャムルさんは例外だったけど、他の人たちはレヴララが苦しんでるところを見逃さないと思う」
「とりあえず話を聞いてからにしたい」
「そう……ですね。まずは詳しく話します」
私はレヴララが言った未来のこと、白いドラゴンを倒した後見た映像について伝える。
女の人の方は困惑している様子だ。
「それを何とかする方法を知りたいんだ」
「そうです。ただこのまま説得しようとしてもまた時間を巻き戻されると思うので、それを阻止するためにレアルさんとかにレヴララのことを思い出し……いえ、記憶し直してほしいのです」
「いいとは思うけど強引だと思う。それにレヴララって幸せになろうとはしてないかもしれないし、助けを求めたことなさそうだけど。無理な相手に付き纏わられた時は殺したりしてるし、ドライなところある。多分、死亡後復活のシステムじゃなくてモンレアルさんを生き返らせるため時間を巻き戻したからそういう代償が付いたんじゃないかな。やりたいことをやった結果な気がする」
「なるほど」
つい納得してしまう。
「でも、レヴララのことを強引にでも助けるのも悪くないと思う。レヴララ自身、自分らしく生きるべきか、自殺した友達のことで苦しむべきか悩んでそうだし」
「自殺のあたりは難しくてよく分かりませんが」
「俺は友達をそんなふうに失った経験ないけど、多分責任感じるよ」




