Scene_104_家
ダンジョン巡りを始めたらすぐレベル300になってしまった。
レヴララからテストに使うということで、俺のデータというのを提供したお礼の経験値が主だけどまさかこんなに早く到達するとは。
エズメは経験値公平化で弾かれてレベル1のままだ。
レヴララのいた拠点をこっそり買って使ってて、エズメはそこに引きこもってる。
こういうのこそ分かち合う仲間が欲しかったんだけどな。
全然思い通りにはいかない。
レベル300になったのでパーティー募集掲示板で気になっていた、リャウという子の募集に参加申請を出す。
会ってみて女の子じゃなかったらどうにか逃げ出すつもりだが、果たして待っているのは女の子だろうか。
リャウから指示された場所に到着する。
……小柄も小柄だけど、薄いピンクの髪で顔は可愛い。
ただ着ている服が襟巻きの太く長い上着で口元は隠れているし、厨二臭い。
明らかに厨二よりは下な見た目ではある。
でも隣で歩いて欲しくないファッションだ。
「君が少年? おじちゃんぐらいかと思ってたけど、私のちょっと上ぐらいですね」
「ああ、うん。君がリャウなんだね」
リャウは頷く。
「これからよろしくお願いします。あの、クラフト機能でおうちを作っているのですが少年さんはシナリオクリア済みですか?」
「まだだよ」
「そっかー。……なら何しよう。シナリオ手伝いましょうか?」
「いいよ。それよりどうやって300まで上げたの?」
「無差別PvPです。少年さんは?」
無差別PvPって、エズメよりもヤバいやつなんじゃ。
いやでも、話してる感じだと普通だし……大丈夫かも。
「……テストに使うって言うから俺のデータ渡して、そのお礼で経験値貰ってこうなった」
「あ……それ私も声かけられました。なんか嫌だったので断りましたが」
「そうなんだ」
少しの沈黙が流れる。
……こんな調子じゃ女の子がいてもハーレムなんて程遠い。
「いやあ、一人だと寂しくて募集かけてしまいました。でもレベルが上限に達してしまうとやることがありませんね」
「熟練度システムは見てないの?」
「何ですかそれ」
「武器を使うとその種類の武器の熟練度が上がっていって、ダメージとかが強化されるんだよ。しかも熟練度に上限はないからどこまでも上がる」
「そうでしたか、ふむ。ちょっとノート見直します」
リャウはホログラムを開き、眺め始める。
そうだ、どうせ現実とは違うんだし告白して付き合えば……こんな感じでも進展あるんじゃないか?
「リャウはリアルで彼氏とかいるの?」
「いませんよ。少年さんは?」
「いない。それなら、ねえ。良かったらその」
「何ですか?」
言葉に詰まる。
付き合わない? って言うだけなのに他にいい言葉がないか考えてしまう。
「付き合いたいならいいですよ。すぐにレベル300になった者同士、気が合うような気がします」
「ほ、ほんと?」
「ホントです。お望みなら同じシャツだって着ますよ」
や、やった。
上手くは出来なかったけど言い出してみるものだな。
「んー、見つかりません。どこに書いてあるか教えて下さい」
リャウはべったりくっついてくる。
俺はリャウのホログラムを見る、人のホログラムを見るのなんて初めてだ。
「この下の方、そう。この熟練度システム押したら表示されるよ」
「おお、ありがとうございます。……キスいります?」
「く、ください」
「やっぱりやめます。そういうのは気軽にしちゃいけないってパパとママが言っていました」
「そうなんだ」
「また別の形でお礼しますね」
なんかドキドキしてきた。
すぐ付き合っちゃうけど子供相応な感じでしっかりしてる感じ、なかなかいい。
でも無差別PvPか……。
無差別PvP……。
もしかしなくても俺より強いのだろうか。
「……どこ行きましょうか」
「ああ、ごめん。とりあえず君のやりたいことを手伝うよ」
「では城壁から外へ出ましょう」
「うん」
城壁の外では何も無い平らな土が無限に続いている。
空は澄んでて綺麗だ。
……地面にチョークで囲まれている場所がある。
「ここが私の土地らしいです」
リャウは四角いブロックを手に持ってポイポイチョークの上に置き並べ、同じようにその上へ柵を並べる。
「ここにジャムルさんの形をした家を建てます」
「どうして?」
「尊敬しているので」
リャウはホログラムを見ながら少しずつブロックを置いて行く。
俺はその様子をただ眺める。
……下水管とかも引いてて本格的だ。
外装は今の所普通に家だけど、ジャムルは付け足すのだろうか。
「何か食べ物買って来ようか?」
「……アイテムストレージにあるので大丈夫です。あ、シナリオ進めてきてもいいですよ。私数日はここにいるので」
……俺は言われた通りシナリオを進めに行く。
エズメの所へ食べ物を届けに行ったりしながら、二日でクリアした。
戻ってきた頃にはジャムルが出来上がっていた。
……かなり本物感がある、立体の写真を目にしているようだ。
中に入るとまだ家具は置かれていない様子だ。
部屋の隅でリャウは毛布にくるまって寝ている。
少し歩いたところに階段がある、鉄製でなんかオシャレだけどやはりというかどこか厨二臭い。
……三角柄のパジャマに着替えていて口元が見えている。
かわいい、付き合ってるんだし添い寝とかしても許されるだろうか?
俺はリャウの隣で横になり、近付いて体を触る。
……起きる様子はない。
勢いで胸を触る、見た感じレヴララよりあるし柔らかい。
……リャウがこちらを横目で見ているのに気づく。
リャウは俺の脇腹に肘を入れてくる。
い、痛い。
「次触ったらこの矢で刺しますよ」
「ごめん……」
「それより外装はどうでした?」
「すごく……リアルだった」
リャウはフフッと笑い、少し誇らしげに俺を見てくる。
「あとシナリオはクリアしましたか?」
「うん。武器と防具貰った」
「どんなです?」
「武器はスナイパーライフルで、当てると大ダメージ。すごく吹っ飛ぶらしい。防具は盾で……特殊効果はないけど桁違いに性能がいいよ」
「なるほど。少年さん、あなた用に空き部屋用意してあるので自由にコーデしてください」
「いいの?」
「はい、別の土地で家を作るおつもりだったのなら余計なお世話かもしれませんが」
「いやいやありがとう、作ってみるよ」
……三階の空き部屋のコーデを始める。
タワマンの一室みたいなところだが、どう変えられるだろうか。
絨毯と壁紙とベッドと机と、ソファと、カーテンと。
……広い部屋にポツンと家具が置かれている部屋が出来た。
一階に降りると、リャウはホログラムを見ながらリビングのようなものを作っていた。
奥にまた部屋がある感じで、最初来たより狭く感じる。
……この世界にもテレビとかあるんだな。
「もうできたのですか? 早いですね」
リャウは三階へ上がっていく。
追いかけると、リャウは部屋の中を呆然と見ていた。
「……おー。また後で見にきます」
リャウは一言そういって一階へ戻る。
感想を聞いてみたい気持ちが少しはあるが、自分でも出来が悪い気がして聞くに聞けない。
「もう少し部屋整えてみるよ」
「分かりました」
俺は三階に戻り、カタログから酸素生成装置やら立ち鏡や洗面所やらを呼び出して置いた。
まだ随分と広さがあるので奥に仕切りとドアを付け寝室を作り、その手前を廊下にしてパソコン部屋を作った。
即席だけどなかなかにいい感じではないだろうか。
俺はベッドで横になる。
目が覚めると隣ではリャウが寝ていた。
最高かも知れない。
リャウは仕返しのつもりだろうが全く仕返しにはなっていないぞ。
でもまた怒らせるのは嫌なのでベッドを離れる。
二階にはなにもないみたいで、一階はリビングが出来上がっていた。
観葉植物とか置いてあり、キッチンのカウンターがオシャレな感じする。
隣から何かが服を引っ張ってくる。
びっくりしたけどリャウだった。
音もなく近付いてくるとは。
「おはようございます。ここ、現実での実家と同じにしてみました。屋上にはお風呂作ったのですが、そちらは現実での雑誌で見た高級ホテルをそのままです」
「よく覚えてたね」
「まあ記憶力はいいので」
リャウは欠伸して、リビングのソファで横になる。
「でも二人だけというのは余計寂しい感じもしますね。子供が欲しいです」
「こ、子供?」
「……作りませんよ。まあ親でもいいのですが」
リャウはテレビを点ける。
テレビでは現実と同じかのように、朝のニュース番組が流れる。
「んー。このまま夕方までゴロゴロして……夕方になったらバイト行ってきます」
「バイトしてるの?」
「はい。冒険もしたいけど……また……明日」
リャウは眠る。
よく眠る子だな。
俺は椅子を呼び出してテレビを見る。
……。




