Scene_102_三人組その2
テストの行列に並んでいる最中、レヴララの偽物というのが頭から離れない。
あの映像を見せるために何かの条件があって、あのドラゴンがウチに見せたかったとか?
目的はさておき、嫌な予感がする。
レヴララの偽物はジャムルを殺してアップデートを早まらせたみたいだった。
……ジャムルが一部から恨まれていたのは事実だけど、死刑決まってたのに何で殺されたんだろう。
レヴララが偽物の存在を知ってるか知らないか、直接聞いて確かめておかないと。
もし知らないと答えたら、レヴララの気に入らないことをすると、ジャムルと同じように消される可能性が高いことになる。
不安だ、練介も実は何か見てて、レヴララを倒そうとパーティーから抜けたんじゃ……。
とりあえず練介に映像のことをメールで知らせる。
「あー暇だ。ヒマヒマヒマ、本当にここゲームをモチーフにした世界? クソゲーすぎるでしょ」
「リカ。他にも人いるから」
「あーあ。死んで帰るってのもできなくなったし強くなるには退屈な思いしなきゃならないなんて最悪、ほんと最悪だよ」
周囲からの目が痛い。
ウチはリカから少し離れてホログラムにあるノートを読み直す。
……順番が来た。
奥の受付にはベレリフで傭兵屋をやっていた女の子が座ってスマホをいじっている。
この子も転移者なんだけど、ツールの自作と商売以外にはかまり興味がないそうだ。
「らっせー。おっ、練子ちゃんとリカちゃんお久しぶり。ちな、テストは一緒に受けられないから」
「え、別々に受けるとかないでしょ。何でパーティー組んでるんだって話になるじゃん」
「まあルールだし。リカは一旦並び直して」
「……はいはい」
リカは入り口に戻る。
「そういえば呼び名なんだっけ?」
「ジョウでいいよ。で、テストの内容なんだけど。職業とロールは何?」
「死霊術師でサポート」
「へーえ。死霊術師の方の試験は練習みたいなもんだよ、どうやったら上手く操れるのかみたいな」
「ロールの方は?」
「アウゴ……じゃなくてフーって人と五分間戦ってもらう。別ロールのソロダンジョンクリア者が助っ人やるから、支援ロールの場合はそうだな……。助っ人がフーと一対一でやり合って出せたであろうダメージのニ倍以上か被ダメージ半分、或いは半々になればいいかな」
「それ合格できるの?」
「こっちも簡単だよ、助っ人が近接系ならずっと支援魔法かけてたらいいし、魔法系なら助っ人より敵の近くに行ってひたすら攻撃防いでたらいい。でも100レベ超えて職業やロールを変えたら99レベルに下がるからさ、変えるのは注意ね。あくまでもその職業とロールに限定したキャップ解放になるから」
「合格前提なんだね」
ジョウはケタケタ笑う。
「あんまり緊張しなくていいよ。制限ある分ソロダンジョンクリアより遥かに楽だし、最悪受け直せるから。二回目からお金はもらうけど。それじゃ、このドアの先に行って」
「オッケー」
「最初は職業のテストね。倒してある敵操って黒い骨のやつに攻撃当てたら合格だから」
「それだけ?」
「うんうん、すげー簡単だよ。それじゃ頑張って。ちな職業とロール、スキルのデータは保管して保護させてもらうからね」
「はーい」
ドアの先には倒れてるモンスターが何体かいて、黒い骨のモンスターが中央に突っ立っている。
操ったモンスターで攻撃を当てると、黒い骨のモンスターが親指の骨を立ててサムズアップを向ける。
「合格。次はロールね」
ジョウのマイク音声が部屋内に響くと、練介と同じくらいの男の子が隣に現れる。
モートでチラッと見かけたような気がする。
「クヒヒ……よろしく」
「よろしく。なんて呼べばいい?」
「レンコ。君は?」
「少年でいいよ」
「始めるよー」
少年かあ。
少年は大きなの剣を片手に握っている。
サムズアップしていた黒い骨が突然蛇腹のように伸び、上から倒れ込むように首が落ちてくる。
長いだけで大きさはあまりなく、細いはずだけどだいぶ大きく感じる。
少年はそれを切り払って跳ね返す。
フーは少し怯むが骨をカタカタ言わせて腕を伸ばし、少年に鎌を振り下ろす。
少年はフーの小さな鎌で思いきり切られるが、全然平気な様子だしHPもあまり減ってない。
ウチはとにかく支援魔法をかけ続け、前に出て壁とかやる間も無く終わる。
「んー、算出の結果ギリ合格。三人ともお疲れ様」
そう言われた直後に経験値が入り、レベル100になる。
ウチはつい嬉しくなって少年に握手する。
「ありがと、お疲れ様」
「うん」
少年は顔を少し赤くしている。
フーの方は元の大きさに戻り、またサムズアップをこちらに向ける。
試験を終えて外に出る。
ホログラムから練介を追跡する、まだこの近くにいるみたいだ。
練介を見つける。
杖を背のホルダーに納めている。
ちょうどモンスターを倒したところらしい。
「弟よ。クヒヒ……合格してきたぞ」
「おめでとう。随分早かったね」
「超簡単だった」
「それよりあのメールは何?」
「ちょっと引っかかってさ。とりあえずレヴララの偽物に注意だよ」
「了解」
ホルダーから杖が抜け落ちる。
待ってた時間でこれを作ってたのかな。
「あとリカのことだけど、いい加減外さない?」
「ええ、可哀想だよ」
「でもヒットアンドアウェイ戦術とか言って僕らを囮にしたり、全滅しそうになると座り込んで何もしなくなったり……足引っ張るだけだし。鬱陶しい」
確かにそんなことは何度もあった。
「でもパーティーを組んだ時、ここに来たばかりで。案内人のサポートは多少あったけど、お互い不安だったのはあるでしょ? 悪い気はしないの?」
「それはするけど、このままなのはストレスでどうにかなりそうだよ。お姉ちゃんは甘過ぎる」
練介は嫌そうな顔をしながら言う。
「……ごめん、我慢して」
「なら僕はパーティーを抜ける。リカが戻ったらすぐ言っておく」
「それじゃあ練介に合わせて職業とスキル組んだ意味が」
「合わせてたの? ……好きに遊んでると思ってた。それにそんなのいつだって変えられる」
リカが私たちのところへ、浮かない顔で走ってくる。
「練子ー、あ、練介もいるじゃん。テストなんだけど落ちちゃったよ。また受けるから金貸して」
練介はリカを睨む。
「リカさん、僕パーティーを抜けます。あなたといるとつまらない」
「へ? アタシたち付き合ってたりしたっけ?」
「リカさんの自分勝手さにはいつもイライラしてたんだ、お姉ちゃんも隠してるだけで不満だったんだろ」
「ウチは……」
こんな風になるのが一番嫌だったけど、今更そんなこと言えない。
いい人であり続けるか自分に正直にやってくか、決めてしまわなければいけないのだろうか。
「離れるべきだよ。僕らの手には負えない」
「いや、その。アタシは面白い冗談のつもりで色々言ってただけで」
「リカさんは本当に相手の気持ち考えられないんだね」
「練介、何かあったの? 急にこんなこと言い出すなんて」
「姉ちゃん……確かにきっかけはあったけど、邪魔しないで」
練介は俯いて拳を握り締める。
「とにかく、リカさんがどう心変わりしようと僕はパーティーを組まない。他のパーティーに入る。姉ちゃんも考えに整理がついたらこっちへ来なよ」
練介はこちらに背を向けて離れていく。
リカはこっちを見て苦笑いする。
「上手くやれてると思ってたんだけど」
「……そうだね」
ウチは上手くやれてるとは思ってなかったけど、今更言えることじゃない。
リカを教育してかないと。




