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未開の虚像現実より  作者: 坡畳
虚像編
31/45

Scene_101_三人組

「ねえ、何でねり兄弟は+なのにアタシは-なの? 悪いこと何もしてきてないじゃん」

「落ち着いてよリカ」

「……レアルに悪いことしたからじゃないの」

「あーもう、レヴララ嫌いだわ。こんなの絶対あの子の裁量で決められてんじゃん」


今、ウチらはアップデートで加わった評判システムについて揉めている。

ゲーム内の行動をAIが分析して−か+か、或いは0……という謎の表記を頭の上に表示させられる。

評判の影響するものとして深海には立ち入れないというのが書かれていた、他に主旨はないらしいけどレッテル貼られたみたいで不愉快。

レヴララに聞いてみると、深海フィールド削除に伴う城下町の刑罰変更が追加の理由ではあるらしい。


「あー、イライラする。レヴララ呼び出してボコろうかな」

「ボコれるの?」

「三体一なら余裕っしょ」

「ウチら兄弟まで巻き込まないでよ。パーティー解散するよ?」

「それだけはご勘弁を」


このヘレストリカ、通称リカは自分勝手なことばかり言うけどある程度聞き分けはいい。

練介の方はリカのこと嫌ってるし、実際にパーティーから追放してもいいんだけど。

一人にすると何し出すか分からないから、ルミェの傭兵所で会って以来そのまま一緒に旅を続けてる。


(もし良かったらパーティーに入れてくんない? アタシ、一人だと心細くてさ)

(クヒヒ……ウチらは姉弟で少し退屈してたしいいよ)

(わーいありがとー)


あの頃のリカは可愛げがあったものの、パーティーに入れた途端本性を露わにしてきた。

……本当に困る。

他の人をパーティーに入れるとリカが追い出すようなことしか言わなくなるし、マジめんどくさい。

今みたいなやり取りも、もう何回目だろう。


「……お姉ちゃん。ロール決めた?」

「ウチは練介に合わせるよ」

「僕は魔法使いの攻撃系で一撃特化。……にしたいのは山々だけど、ダメージ効率重視。お姉ちゃんは死霊術師にしなくていいの?」

「クヒヒ……ならそれの火力支援系でタンク寄りかな」

「……スキルの方はステータスと同じポイントを振り分けてビルドして、最大五つまで使えるみたい」

「練介はまた火炎魔法にするの?」

「うん」

「こだわるねー」


練介は少し照れ臭そうにしてる。

弟は火属性が好きらしい。

理由はゲーム上で最もダメージを出せるようになってることが多いからだそうだが、本当は水属性に弱いところとカナヅチの自分を重ねているところにある気がする。


「アタシは魔法使いの攻撃系デバフ特化! デバフが一番楽しいし」

「それじゃ、それぞれスキル作っておこうか」


こういうのって一番強いテンプレみたいなのがありそうだけど、どうなんだろう。

ノートのヒントには、ビルドから検出される役割に応じたステータスボーナスが付く。

ビルドできるスキルには様々な効果があり、発動効果を応用しやすいものや発動させる状況を作りやすいもの、使用頻度の高いものを選ぶのがいい、と書かれていた。

スキルリセットもできるらしいからまずはお試しで作っておく。


職業は死霊術師。

倒してすぐの敵を一体まで一分間だけ操れるらしい。

スキルは味方の火属性ダメージ上昇効果があるものと回復魔法。

あとはマナに少しとVITに全振り。

これでマナポーションが尽きない限りは永久に回復できるし、ウチが狙われて行動できなくなっても壁として機能する。

魔法詠唱が二秒と少し遅いけど、この辺は練介の耐久と合わせて調節するつもりだ。

役割としては特化じゃないけど安定して戦えそうな気がしてる。


早速、モートを出てモンスターと戦ってみる。

相手は歯のついた触手がうねうねのデッカいモンスターだ、かなり気持ちが悪い。

支援魔法をかけた後、練介は様々な炎魔法を連続で使う。

最初は相手の周囲を火の玉が囲んで一気に近付いて当たり、相手の周囲の地面から火が噴き出したかと思うと、練介から直線上に炎が伸びて相手は爆発する。

その後爆炎が相手の上に濃縮されてゆき、火を纏って落ちてさらに大きく爆発する。

なんかめちゃくちゃだけど強い。

相手は一切攻撃できないまま、焼き尽くされてゆく。


「よく分かんないけど、これが一番ダメージ効率いい組み合わせだと思う」

「強いんじゃない? 火球の倍くらい」

「そうだといいけど」

「待ってー、アタシまだ何もしてない」


影が差す。

雲って感じの暗さでもない影だ。

ウチが上を見上げると、そこには白いドラゴンが滞空していた。

初めて見るモンスター。

……すごく嫌な予感がする。


「皆、離れて」


二人には風の音で聞こえないらしい。

ていうか、これだけ風が上から来てたら見てほしい。

ウチだけその場から離れる。


ドラゴンは練介を踏み付けるように降り、その足でぐりぐりしながらもう片方の前足でリカを殴り飛ばす。

リカは転がった後起き上がるが、ドラゴンを見ると怯えて座り込む。


ヤバい。

ウチは死霊術師の効果を使ってモンスターを操る。

……練介を踏み付けてる足を持ち上げてほしいんだけど、モンスターは明後日の方向へ向かってしまう。

なんでだこのままじゃ全滅する……。

とりあえず練介に回復魔法使ってかないと。

練介は既にぐったりしてて、光に包まれたかと思うと消えていく。

もう手遅れらしい。

ドラゴンはリカの方に火を吹く。

確か盾があったはず、ウチは盾を呼び出してリカの方へ駆け寄るが、火の勢いが強くて飛び込めない。

リカも練介と同じように消える。


……ドラゴンと目が合う。

ドラゴンは縮んでいき、少女に姿を変えるとなんかバグっぽくチカチカした練介を従えるように出して、練介の炎魔法を浴びせられる。

HPがジリジリと削られる、回復魔法を使おうにも詠唱がキャンセルされて何もできない。

ドラゴンの少女はなぜか、ウチの方を悲しそうに見る。


「神様っていうのが本当にいるとはね」

「これを神と呼ぶのか、ふむ。レヴララ、願いの方は決めてきたか?」


瞬きすると、何故か目の前にはジャムルがいる。

もう一人の声はレヴララ? でも声色が違う、普段より高い。

場所は何だ?


「うん。後で言う」

「ほう。レヴララ、君に一つ聞きたい。なぜ俺は君に殺されなくてはならない?」

「ん……未来が見えるんだっけ。ボスベアと戦った時のことは酷いなって今でも思うけど、悪気はないみたいだし許すよ」


ジャムルは怪訝そうな目をこちらに向ける。


「牢屋で君から銃殺される未来が確定したのだが」

「そうなんだ。まあアプデの準備はできてるからジャムルが死んでも構わないけど、他の準備がまだだからこっちとしては少し困るし……。偽物じゃないの?」

「そうか、偽物か。まあ俺を殺すのは誰だっていい、話を進めよう」


目を覚ますとギルド本部にいた。

途方もなく広い部屋だが、出ようと思えばドアを出してギルド本部入り口に行ける。

近くにはリカと練助がいて、二人ともボケっとしている。


「僕ら全滅したの?」

「そうみたい」


リカは苦笑いした後、ため息を吐く。


「あんなのが出てくるなんて聞いてないんですけど」

「……復活ってのは件やな気分だね。なんか変な夢みたし」

「お姉ちゃん、どんなの見たの?」

「なんかね。レヴララの視点でジャムルと話してた」

「へえ。僕は何も見なかったよ」

「リカは何か見た?」

「何も」


リカは完全に凹んでしまっている。

しおらしくなってるとこは久々に見る。

こんな風にあまり喋らなきゃかわいいんだけど。


「何か変だ、デスペナルティがない」

「そうだね。付け忘れ……とか?」

「この特殊な敵っていうのに当てはまってたのかな」

「そっかー。とりあえずここ出てレベリングでもする?」

「レベル100のキャップ解放に職業テストとロールテストっていうのが増えたらしいから、二人ともそれに合格してほしい。僕は暇潰してる」

「あ、待ってよ練介」

「合格したら連絡して」


練介はふらっと出て行ってしまう。

……テストか。

ちょうどギルド本部で受けられるらしい。


「リカはどうする?」

「アタシもテスト受ける」

「それじゃ行こうか」


リカと共にテスト会場へ向かう。

テスト会場には行列ができていた。

最後尾ではフリックさんが待ち時間のタイマーを掲げている。

三時間待ちらしい。


「なっが……。あのさねり姉、アタシ職業とかロールとかよく分からないんだけど」

「ならソロでダンジョン行ってきなよ」

「無理無理。こっちの方が絶対楽そう」

「えー、死んでも復活するんだから行ってみたらいいのに」

「ねり姉が行きなよ」

「ウチは攻撃できないし無理」


……リカは先ほどと打って変わってイライラしてる様子だ。

早く合格してしまって練介と合流したい。




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