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未開の虚像現実より  作者: 坡畳
虚像編
26/45

Scene_025_城下町

 城壁内、大きめのテーブルを椅子が囲った小さな会議室で、フアガ、ドラウス、ジャムル、アトク、それと猫背で細身の怪物、黒い長髪の男、茶髪の女、ボスベア、老婆が集っている。

 空席が四つほどあり、そのうち一つにフリックが座る。

茶髪の女とフリックがジャムルを睨む。


「とりあえず十人集まったな。案内人が四でその他が五……と。会議を始めるぞ」


 ジャムルが言い終えた瞬間、フリックは立ち上がりジャムルに向かって剣を振る。

ジャムルは椅子から立ちあがろうとするが、次には石像になったかのように固まる。


 縦線の衝撃波がジャムルに向かって飛ぶ。

そこへローブを着た小柄な人が現れ、ナイフを振り相殺する。


「……フリック。まずは話を聞くべきだとは思わないか?」

「聞く耳持たぬ。貴方には消えてもらう」


 ボスベアがフリックの目の前に現れてニヤリと笑い、フリックの腹に一撃入れる。

フリックはテーブルにもたれかかるようにして倒れる。

ボスベアの頭には、いつの間にか剣が貫いている。


「小細工を」


 ボスベアがふらつきながら手を組んで腕を振り上げると、ボスベアの腕が斬り飛ばされる。

ドラウスがボスベアの目の前に現れ、頭にチョップする。

ボスベアはまともに受けて地面に顎を叩きつけた後、動かなくなる。


「行儀の悪い奴らだな」

「グェ」


 ローブの人が茶髪の女から地面に抑え込まれる。


 フアガがいつの間にかジャムルの背後に周り、首元に爪を向けている。

猫背の怪物がフリックに回復魔法をかけ始める。


「こうなるのは分かっていただろう」

「まあな。しかし殺す前に俺の話を聞いてくれ。ああいった事態になるのは承知の上だったが、回避しようのないことだった。分かってくれ」


 フアガはジャムルの首から爪を離す。


「事前に話さなかったお前が、今更何を話すつもりだったのか。悪いが俺たちには興味がない」

「なら今後重要になることだけを伝える。もうすぐあの……何と言ったかな。あの子がこの世界の管理役に着く、俺の代わりにな。引き継ぐための時間が必要だ、それまで俺を殺すのを待て」

「だそうだ」


 フアガはジャムルから手を離し、椅子に戻る。

手首を気にするジャムルに、アトクがヘッドロックをかける。


「貴様はこれから地上の監獄に投獄され、執行猶予が経過したのち処刑となる。我らは助けてやれんぞ」

「この場で首を取らないのは以外だな」

「皆がこの世界の管理を一人で背負い込まなければならないお前を心配していたこと、気付いていなかったというのか?」

「ハハハ、あの斬撃はそんなもの吹き飛ばすほどの殺意だったぞ」

「その通りだ。心配していたと言っておいて何だが、今更もう遅いことなのだ」


 猫背の怪物がボスベアを掴み、上階へと連れて行く。

そこにフアガとドラウスがついていく。


「ボスベアくんはこれから装備を剥がして深海へ投げ返す。そこの子や貴様の他の手駒は貴様の処刑まで投獄しておく。つまり君を助けてくれる人はいないのだよ」

「では監獄からゆっくりと引き継がせてもらう」

「そうしたまえ。貴様を消すための策は万全だからな、貴様は完全な詰みなのだ」


 不機嫌そうなアトクの返事にジャムルは黙っている。

アトクはヘッドロックをやめ、その腕にリングを取り付ける。


 怪物とフアガ、ドラウスが戻る。


「片付いたぞ」

「三人とも、ジャムルとそこの子を監獄へと連れて行きたまえ」


 茶髪の女がローブの人を立たせ、ドラウスの方へと腕を引っ張る。

ドラウスはローブの人の腕を握り、城壁外へと連れ出す。

続いてジャムルが連れて行かれる。


 その様子をアトクたちは眺め、姿が見えなくなった瞬間にアトクが咳払いする。


「さて、我々も仕事に取り掛かろう」




 レヴララが倒れたあの日から半年が経つ。

俺はシイリッヒと一ヶ月鍛えた、すごく大変で尚且つ退屈だったけどレベルは100を超えて、ポネとは当然レベルが合わず雇うのをやめ、レヴララの仲間との同行は危険だという理由でナシになった。


 結局ソロでモンスターからの戦利品を集めて売り、色々な街を巡ることに。

そしてその間、レヴララの仲間のモンレアルがレベル300到達と同時に失踪し、意識不明だったはずのレヴララが姿を消したことが冒険者界隈で大きな話題となった。


 最初の方は、案内人ごと腐ってるから対抗組織を作ってギルド本部を滅ぼそうという話になっていたけど、転移者が案内人の世話になっていたこと。

また、転移者の死亡率とジャムルが世界の管理というよくは分からないことをしていることから、ジャムルが指名手配されるというところで落ち着いてる。


 死亡率とかいうのは直接見てないけど、この世界のログというのがあってそれを自由に閲覧できるらしい。

ホログラムからも見れるとシイリッヒは言っていたが、どうやったら見られるのかは教えてくれなかった。


 城下町に着く。

今日はここで案内人から話があるらしい。

……何か大きいものが城外へ投げ出される。

 ここではこういう風にゴミ処理でもするのか?

城下町の広場には冒険者らしき格好の人々で人集りができている。


「お久しぶりです。少年くん」

「あー、久しぶり。シイリッヒ」


 シイリッヒは心配そうに広場の中心を眺める。


「ようやくレベル300になるとどうなるのか、説明されるのですね」

「そうだね」


 正直なところそこに興味はない。

レアルの方はダンジョンで息絶えたって話もあるし、レヴララの失踪も普通に目が覚めたのかもって思う。

 過激な冒険者たちはジャムルと案内人は皆殺しにすべきと言って村を焼いたり色々勝手なことやってたけど、転移者の俺たちは元々コイツらの手中にあった割には自由に遊べてる。


 むしろ今回の件で出てきた過激な奴らを一掃した方がいい。

俺らは真っ当な意志を持ってる、とか言ってたけど、やったことには皆迷惑してた。


 猫耳やら尻尾が付いているわけではないが、猫っぽいピンクの前髪パッツン女が設営されたステージの上に立つ。

その後から黒い狼男やら死神っぽい猫背でよく分からんモンスターの黒骨やら、赤髪で耳の形が爬虫類っぽい女やらがジャムルとローブの女の子を連れて出てくる。


 捕まってる方逆な方がしっくりくるな。


「集まっているな。えー、我はアトク。レヴララの案内人をしていた。単刀直入に言う、レベル300になっても何も起きない。今回の件はジャムルが独断でレヴララ、モンレアルに手を出し起きたことだ。ジャムルは死刑とし、我々案内人は解体する。そしてそこの元案内人、フリックが他の案内人の育成を行う。君たちは前みたく冒険を続けてくれていい。以上である」

「おい、ジャムル! 冒険者レヴララとモンレアルを殺した理由は何だ!」


 冒険者の一人が怒鳴り声を上げる。

怒り狂ったような罵声が響くが、よく聞くと五人程度のものだ。


「俺の後継者を育成するために必要だった。聞け、この世界はお前たち冒険者にとってよりよい物になるぞ」


 死刑になるというのに調子良く笑うジャムルを、人集りの中の数人が気味悪そうに見る。


「やっぱり本当に殺したんだな! 見ろよあの様子、アイツは気が狂っていたんだ! よりよくなる? 余計悪くなるの間違いだろ! この世界はクソだ! 案内人は皆殺しだ!」


 ダサい皆殺しコールが始まる。

シイリッヒが前に出ていく。

やらかすとは思っていたが……格好いいぞーシイリッヒ。


「おやめください。こんなもの、亡くなったレヴララとそのお仲間が浮かばれません」


 皆殺しコールが止まる。

人集りの中から鎧の男が特大の剣を引き摺り、一直線にシイリッヒの方へ向かう人が現れる。


 ……レヴララとPvPしてた奴に似てる、というか同じだ。

それを水色の瞳で口元を襟で隠した、白髪の少女がどこかの屋根から降りてきて遮る。


 少女に向けて剣が振り下ろされ悲鳴が上がるが、剣が止まっている。

よく見えないけど怪我はないようだ。

人集りの一瞬の隙間から少女が残念そうに目を伏せているのが見える。


「冒険者よ、君の怒りはごもっともだ。これからジャムルを監獄まで連れていく。我々は死刑執行までジャムルを守る、もし無謀にも革命を望むのなら我々、そしてジャムルを殺しに来るといい」


 アトクがそう言うと、剣を振り下ろした男は武器をしまう。

それを城下町の警察が取り押さえる。

よく見えなかったが警察いたみたいだ。


 シイリッヒは少女に何か言っている、おそらく助けてもらったお礼だろう。

少女はシイリッヒに背を向けたまま人集りの中へと消える。

案内人の仲間だったのだろうか。

ちょっと気になる。


「待てアルブム。お前はなぜ」


 ジャムルが何か言っているが、赤髪の女が布を噛ませるようにして口を塞ぐ。

アルブム? さっきの少女に呼びかけていたようだが何なんだろう。


「気の立っていた者らは未だ気が済まないだろうが、これで解散したまえ」


 アトクの言葉で人集りは散ってゆく。

アトクたちがジャムルを連れて城下町の出口へと向かう。

それを警察たちが見送る。

両脇で行進とかはしないようだ。


 シイリッヒが俺のところへ歩いてくる。


「大丈夫?」

「ええ。しかし今後どうなるのやら不安です」

「今後……ね」


「どうも、嫌な予感がしてなりません。……そういえばエズメ様はご無事なのでしょうか?」

「知らない」


 エズメか。

すっかり忘れてたしあまり会いたくないな。


「ふむ、会ってみてはいかがでしょう。レヴララ様と少し揉め事はあったようですが、彼女が素直に話せるのは恐らく貴方ぐらいのものかと」

「そうかな」

「まあ一つのクエストと思って、会った後のお話ぜひお聞かせ下さい」

「分かったよ」


 シイリッヒには何だかんだ世話になってるし、ワガママを少し聞いてやるくらいいいか。

でもまずは腹ごしらえだ、ここのレストランはうまいらしいので一度来てみたかったんだ。

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