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未開の虚像現実より  作者: 坡畳
レヴララ編
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Scene_000_レヴララ

学校の教室はガヤガヤと騒がしい。

それに馴染み込むかのように私は友人と会話する。

私と同じ髪色の子で、私より少し背が高い。

ニックネームはタオ。

ハンドルネームはクッキーで、一緒にVRMMOで遊んでる。

下校の時間になり、帰りのホームルームが終わる。


「ツグ、今度一緒に私の彼氏の家行かない?」

「……私も行くと変な感じにならないかな」

「それもそっか」


最近のタオは何だか暗くなることが多い。

チャットでもあれはヤダとかツラいとか、そういうことばかりだ。

私たちは仲良しのつもりだったけど、最近はマンネリ気味っていうか一緒にいても退屈に感じることが多い。

さっきのフリからしても、それはタオも感じていることなのだろう。


「ツグ。暇だね」

「別のゲームでもやる?」

「いやいいよ、オンラインはチーターとか変なやつ多いし」

「それもそうか」


タオは急に私の胸を背後から揉んでくる。

男子からの目が割とツラい、タオに彼氏がいるのを知らない人らから二人はレズとか噂されることも稀にある。


「やめろォ……」

「暇ひまヒマー、なんか面白いこととかないの〜?」

「なんだっけ、この動画とか」


私はスマホ画面でタオに動画を見せる。


「アハハハハ、これおもしろーい」

「気に入った? これ8話まであるよ」

「マジ? 全部見るー」


タオは私みたく硬い感じなくて、すっ飛んで明るい時があるからか男子からの人気は高い。

男友達もわりかしいて、タオ経由でカラオケに誘われた時は合コンみたいになったが、歌えなくてイジられるし恥ずかしい思いをした。

そんなことが印象深いがまあ悪い思い出ではない、タオと一緒に遊べて楽しかった。


「ねえツグー。私ツグのこと好きだよ」

「こっちはそうでもないよ」

「でもズットモでしょ?」

「そりゃ、うん」


タオはこのーとか言って私の頬を突く。


「あ、彼氏から着信来た。先帰るねー」

「ああ、うん。あれできそう? ベルセルクオンライン」

「あれかー。もう飽きてきたんだけどなあ、彼氏も入れていいならやろっかー」

「やろやろ。それじゃまた明日」

「うんー」


タオの彼氏は、この高校の同級生でタオから告白して付き合ってる。

今までは彼氏から来て少し付き合っては振ってたみたいだが、今回は珍しく長続きしているらしい。


私は一人、帰路に着く。

今は下宿で暮らしている。

将来社内寮に入ることを考えているので慣れておきたいと希望したら学校と親の双方からOKを貰えた。

実家の方は友達入れるのが苦な場所だけど、ここでならタオを好きなだけ呼べる。

と思っていたのだが、最近タオは彼氏とのことで忙しいらしく、二度三度遊びに来ただけだ。


私は一人でゲームを始める。




翌日。

タオは学校に遅れてきて、ひどく落ち込んでいる様子だ。

心配だが……こういう状態のタオに話しかけたことは今まで一度もない。

タオから私に相談してくるのをひたすら待つ。

詮索は絶対にしない。

そんなドライな関係の友達なのだ。


帰りのホームルームが終わり、タオがようやくこちらに話しかける。


「ツグ……」

「何?」

「地獄ってさ、あるのかな……」


またか。

別に私に答えられるようなことなんてない。

タオには自傷癖があって、腕に沢山の傷がある。

別に秘密でも何でもない、クラスみんなが知ってることだ。

私はただ、自信のあるふりをして答える。

それを続けてきた。


「私さ、綺麗なまま死にたいんだよね……」


でも最近は返事に詰まる。

どう答えるのが正解か悩んでしまう。

そんな関係、私は望んでないのに。

どうしたの? とか聞くのが普通なのだろうがそんなの彼氏が散々返した言葉だろう、他の友達が返した言葉だろう、などと考えてしまう。

私が友達としてできる最善の行動は何だろう。


「……分からない」

「じゃあ天国ってあるのかな」

「分からないよ」


今まではどっちだろうね、とか言って先延ばしにしてきたけどこの際はっきりと言うべきだろう。

きっと……突き放さないと彼女とのこの繰り返しが延々と続く。

私にはもう懲り懲りだ。


「そっか。……教科書とか置いて帰ろっかな」

「いいんじゃない? 誰もイタズラとかしないだろうし」

「……やっぱ持って帰るよ」

「タオ。明日の休みゲームしない?」

「……明日カウンセリングだしやめとく」

「そっか。……」


タオは黙って帰ってゆく。

私も帰る。


下宿先に着く。

……今日の言い方悪かったのかもな。

でも仕方ないか、私もそろそろ限界なんだ。

これからは受験とかもあるし、そっちに集中してかないと。




翌朝。

タオからの着信履歴を見つける。

夜中にかけてきてるけど、何のつもりだったんだ。




三日後、私は学校へ向かう。

……タオは欠席のようだ。

まあこういう日があってもその次の日は来てくれるだろう。

朝のホームルームが始まる。


「えー、田尾さんは急遽転校されることになりました。……」


……転校? ってことはかなり深刻な悩みでもあったのだろうか。

友達として素直に聞いておけばよかっただろうか。

……。

学校が終わり、下宿先に着く。

とりあえず、三日前のこと謝っとくか。

三日前はああ答えて悪かった。転校先の高校では元気でな、……と。


それから二日後、悲しいお知らせがありますとか言ってタオの死が知らされた。

死亡推定時刻は五日前の夜中、私への着信履歴の時間の少し後だった。

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