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未開の虚像現実より  作者: 坡畳
到達者編
12/45

Sence_012_現実生活

 ソファから身体を起こして時計を見ると、朝の9時だった。

帰ってからすぐ寝たのに、まだ身体がだるい。

一緒に寝ていたはずのレアルが、テーブルに水の入ったコップを置く。


「おはよう」

「おはよ。……こっちの身体、ちょっとだるいな。頭の中がふわふわしてて調子悪い」

「もう少し寝る?」

「そうする。レアルはテレビでも見ててくれ」


 水を飲み、テレビの電源を点け映画の録画でノンフィクション系をいくつか選び、連続再生にする。

ちょっと音はするけど、レアルが暇だろうからそのくらい我慢だ。……


 再び目を覚ますと、テレビの音が聞こえる。

時計を見ると13時だった。

相変わらず身体の調子は良くなくて、今度はいつも通り頭が痛い。


 起きてあたりを見渡すと、レアルがテーブルに寄り掛かって眠っている。

しかし、私が起きたことに気付いたのかすぐに目を覚まし、微笑んでくる。


「おはよう。ええっと、映画を観るんだっけ?」

「そうだな。ロケ番なんかの方が近場を知るには向いてると思ったけど、あれは取材してる人らの立場が優遇されてるの前提で、金払う所映すことがあまりないし。見たまま真似すると変人扱いされるどころか警察に捕まるんだよな」

「そういうのもあるんだ」

「うん。カメラを向けて直に録画したヤツだから現実的だけど、現実で同じシチュエーションにはならないんだよな。映画は映画で作り物だけどさ、世界観を現実に寄せてるヤツは常識を取り入れてあるから、まだ分かり易い……」


 そう言いながら、冷蔵庫にあったものをレンジで暖め終えた訳だが。

映画よりも児童向けの教育番組やそういう傾向の絵本を見せた方が、効果的なんじゃないか?


 でもあれはあれで、真面目に見てたら悪いヤツには何してもいいみたいな考えになる気もする。

理解が浅ければ……の場合にはなるし、レアルは大丈夫かも知れないけど、何せレアルに教えるということが初めてだ。

慎重に進めないと。

 レアルはソファに座ったかと思うと、寝転がって縮こまる。

私はレンジから天丼の弁当を取り出し、テーブルに置く。

最近の教育番組がどんなか知らないけどまあ、今映すのは映画でいいか。


「そういえば、ジャムルさんの言ったこと。私とレヴララとでどうして違うんだろ」

「それ自体に何か特別な意図があるようには思えないし、別人とか二重人格なのかもな。ジャムルの言ったことを都合よく捉えれば、レアル自身の意志で元の世界には帰れないってだけかも知れない。あっちで私が半年目を覚ましていないのも、何かカラクリがあると言えなくもない」

「うーん」

「続けて今後のことも言わせてくれ。……思うにだな、この世界で過ごす時間が長ければ長いほど、過ごす時間としてのリスクは減る。ただし、エズメのこと忘れないうちに戻るべきだ」


 レアルはどこか納得いかない様子で首を傾げ、テーブルを眺める。


「レアルのアーカイブにジャムルが映ってる映像と音声があれば、そこから何か分かるかもな」


 祖父は心理学者で、私にも多少の学がある。

今回のこととの多少の繋がりくらいは分かるだろう。


「アーカイブにはエキシビジョンの直前のと、ボスベアと戦ってる時のがあるよ」

「ジャムルが映ってるとこだけでまとめられる?」

「ええっと、はい。できました」


 元々あちらの世界にいた人たちは、パソコンが一台頭の中にあるような感じらしく、視覚を映像化して記録し、私たち転移者に送信することができたりする。

 ただ、レアルたち同士ではそういったやり取りができないよう制限がかけられてるそうだ。


 そんなことはさておき、レアルから映像が送られてくる。

再生すると、映像内でチラチラ端に映るジャムルが節々で欠伸をしたり、しばらく目を瞑ったままボーっとしていた。


「眠たそうだな」

「そうだね。……夜遅くまで何かしてたのかな」

「情報は少し取れたけど、これじゃ足りない」


 レアルが唸る。


「ダンジョンでジャムルさんから聞いた分もアーカイブに残ってるはずなのに」

「ん、ダンジョンに行ってたのか?」

「うん。ジャムルさんがレヴララを目覚めさせたければ、って」

「そっか。とりま、材料が集まるまでこの話は置いといて、まったりと過ごそうじゃないか」


 少し気になって、ホログラムを情報表示モード……ゲームフィルターに切り替えモンレアルのレベルを確認する。

レベル300。

ダンジョンクリアのために長らく鍛えていたのだろうか。


「随分と頑張ったみたいだな」


 レアルの頭を撫でる。

猫みたいに嬉しそうな目をするが、口元はしっかり閉じていてどこか不安そうだ。

それを見て手が止まる。


「うん。でもこれで良かったのか分からない。おじいさんの車壊しちゃったし」

「大丈夫だって。パワーダウンする装備付けたんだろ? ああいった事故はもう起きないさ」

「うん」

「それよりこれ、食べていいよ」

「では頂きます」


 レアルは蓋を開けてフォークを取り、天ぷらを刺して口に運ぶ。

テレビの方に目を向けると、夜に車を運転してる四人組の男が楽しそうに会話している。

 レアルは天丼もテレビの方も見ずに、何か考えている様子だ。


「あっ……レヴララ。私のいた世界ってゲームと似てたんだよね? 一番近いゲームにヒントがあったりしないかな?」

「一番近いゲームね、探してみるよ。……よし、食い終わったら大学行こうか」

「行きたい、でも早くないかな? それに耳と尻尾がバレてしまったら大変なことになるんじゃ」

「寝ながら秘策を考えといたから大丈夫。レアル、人間の耳の衣装持ってたろ? それをアバター枠で装備してだな……」





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