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ペンダント!~ツイてない私がとびきりの幸せをつかむまで~【電子書籍発売中】  作者: 守雨


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39  ローズ嬢     

 コルマ王国から帰国して、アリスは結婚式の準備に入った。

 ドレスは伯爵家が、アクセサリーは公爵家が用意することになっている。今日は仮縫いの更に前段階で、デザイン画のイメージ通りかどうかを見せてもらっているのだ。


「あら、お嬢様、お胸の辺りが少しきつくなっていますね」

「えっ! そうですか? あらぁ、どうしましょう」


 アリスは顔が緩んで戻らない。

 お祖母様が仰っていた通り、お胸の大きさは時間が解決するのね、と喜んだ。


 午後、お茶を飲みながら(この喜びを語りたい!)と思ってハタと気づいた。まさか弟のアランに胸の話をするわけにもいかず、両親に話すのも恥ずかしい。


「私、この手の話ができる友人がいないわ……」


 それほど外出を好んでいなかったことと、早くに婚約していたことから、女性同士でくだけた話をする友人が少ない。


「お母様はちゃんと女友達がいるのに。ううん、お母様を羨むのは筋違いだわ。私は積極的に友達を作る努力をしないで生きてきたのだから」


 そんな反省をしたアリスにある日、同年代の女性と知り合う機会があった。

 公爵が「公爵家は歌劇場に席を持っているのだから、二人で行っておいで」と勧めてくれたので、久しぶりに二人きりの外出をしていた。


 席を持っているというのは好きな時に観劇できるよう、年間通して確保してある、という意味だ。アリスは公爵家の経済力に感心した。

 ギデオン家も「そこそこの伯爵家」ではあるが、行くか行かないかわからないのに席を確保しておくほどの余裕は無い。たまに話題の歌劇を観に行くのが大きな楽しみ、という感じだ。



 劇場のロビーは客で混雑していて、レオンはアリスとはぐれないように手をつないで歩いてくれている。(嬉しい恥ずかしいやっぱり嬉しい)という乙女心で歩いていると、離れた場所から声がかけられた。


「レオン様? レオン様ではありませんか?」


 レオンとアリスが声の方を見ると、二十歳前後の美しい赤髪の御令嬢がこちらを見て手を振っている。

 すぐにレオンがアリスに「知り合いだ。少し挨拶をしなければならない」と耳打ちした。


「ローズ嬢、お久しぶりです。ローズ嬢も観劇にいらしていたのですね」

「ええ。この歌劇は今話題ですもの。あら、そちらは?」


 笑顔で目を向けられてアリスは挨拶をした。


「アリス・ド・ギデオンでございます」

「まあ、あなた様が」

「私の婚約者だ。今後顔を合わせることも増えるだろう。よろしく頼みます。アリス、こちらはアップルトン侯爵家のローズ様だ」

「ローズ・アップルトンですわ。アリス様、どうぞよろしくお願いします」


 アップルトンと言えば侯爵家でギデオン伯爵家よりずっと格上。しかし公爵家よりは下。婚約者のアリスは将来的にローズより上になるが今はまだ婚約者だから下。

 失礼にならないよう、かといってへり下り過ぎて公爵家に失礼にならないようにしなければならない。

 おそらく弟のアランなら楽にこなせる場面だろうが、アリスの頭はフル回転だ。


「レオン様が夢中になった御令嬢はどんな方かしらと、お会いするのを楽しみにしておりました」

「ローズ嬢、アリスが緊張しますので、その辺で」


 レオンがそう言って会話は終わり、もうすぐ始まる歌劇に備えてその場を別れた。

 (二人は親しげだったわ)と、アリスは歌劇を観ていても集中できない。レオンは時折アリスに微笑みかけながら手をつないだままで、どうもコルマ王国のお膝抱っこ以来スキンシップが増えている。


 (レオン様の元恋人とかだったら気を遣うわ)と思うが、まさか「あの御令嬢とお付き合いなさってました?」と聞くわけにもいかない。

 (その手の情報を持つ友人がいないって不便だわぁ)と己の社交下手を憂う。

 歌劇が終わり、帰ろうとするとローズ嬢が待っていた。


「あらあら、ずっと手を繋いでましたの? 仲がよろしいこと」


 ローズ嬢が微笑ましいものを見た、という顔で笑っている。あの様子ならレオン様に恋心は持っていないかな、とホッとしていると、ローズ嬢が驚きの提案をした。


「レオン様、わたくしアリス様とお話したいのですけれど、ご一緒しても?」

「あ、ああ、そうですねえ。しかし我々はこれからアリスが楽しみにしていた店に行く予定でして。また時間のある時に……」


 やんわり断るレオンの言葉をどう受け取ったのか、ローズ嬢が「あら!でしたら私もそのお店を見てみたいわ。ご一緒させてくださいませ」と粘る。


 (うわ、私なら絶対に言えないわ。おじゃま虫になるのはわかっているでしょうに、すごい勇気だわ)


 アリスはニコニコしながらさりげなくバッグの中の水晶玉を見る。何も出ていない。

 (よし、安全。たぶん)と思う。

 レオンの方を見ると(どうだ?)と目で尋ねてくる。(大丈夫!)とうなずく。



 ローズはすらりと背が高く細身の体なのに、お胸が豊かである。レオンと並び立つと実に見栄えがする二人で、通り過ぎる他の客たちも(おお!)と二度見したり振り返ったりしていた。


(むしろ他の人には私がおじゃま虫に見えるでしょうよ)


 少々意気消沈したものの、基本は打たれ強いアリスである。「それではお店が混む前に参りましょう!」と自ら二人を促した。

 ローズ嬢は嬉しそうな笑顔だが、なぜかレオンは渋い顔だ。


 

 

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