表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペンダント!~ツイてない私がとびきりの幸せをつかむまで~【電子書籍発売中】  作者: 守雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/42

38 第一夫人アリネアとイリア     

 晩餐会の後で、アリスはレオンに注意されていた。


「アンドレアス王子とシンディーが第二王子にイリアのことを報告する手はずになっている。アリスはイリアに絶対に近づくな。そこから先は僕たちが下手に動けば国家間の問題になる。それはわかるね?」

「ええ、わかります。イリアには近づかないし近づけさせません。私に出来ることはありませんし」


 レオンはホッとしてアリスを腕の中に閉じ込めて、アリスのふわふわした髪の中に顔を埋めた。

、我が国へ無事に連れて帰ることだ。絶対に一人で勝手に動かないと約束してくれるね?」

「ええ。約束します」


 そこから先は徹底した警護がなされた。アリスにはどこへ行くにも三人以上の騎士が付き添い、口に入れる物は全て毒見がなされた。

 アリスは王宮のコルマの料理を食べられるだけでも良しとして、楽しみにしていた王都見物は諦めた。


 相変わらず水晶玉にはイリアの顔が浮かんでいて、何かしていないと落ち着かない。(もしかしてシンディーではなく自分がイリアに狙われるのだろうか)と繰り返し考えてしまう。


 レオンは「アリスが夜眠る時は同じ室内で警護をする」と言い始めたが、「流石に結婚前にそれはまずいです」と騎士団の仲間に止められていた。結果、警護はドアの外で交代制で続けられた。


 水晶玉から突然イリアの頭部が消えたのは、シンディーたちの結婚式の前日だ。

 レオンは安堵したがアリスは嫌な予感がした。



 結婚式は音楽と花と踊りに満ちていた。

人々は歌い、身体を揺らし手を叩き、クレイン第二王子とシンディーの結婚を祝った。


 シンディーはクレイン第二王子の隣で幸せそうに笑っている。

 第一夫人は完璧な笑顔でそれを見ていて、第三夫人は控え目な雰囲気の影が薄い人だった。


 アリスが一番驚いたのはアンドレアス王子の夫人である。

 王子よりも五歳くらいは年上の夫人は見るからに気が強そうな、殿下を尻に敷いていそうな人だったのだ。彼女は屈託のない笑顔で結婚式を楽しんでいた。


 結婚式は二日間続けられた。

 第四夫人ともなるとここまで盛大に式を執り行うことは珍しいらしく、アリスは「シンディー様はご寵愛を受けているから」と王宮の人たちにこっそり説明された。


 結婚式が終わるとレオンは「予定を早めて帰る」と言い、その旨を国王陛下と第二王子に告げた。

 するとクレイン第二王子の第一夫人から「帰国の前に話をしたい」と連絡があった。


「これはもはや失礼なのでは?」とアリスが思うほど護衛を配置した部屋に、第一夫人が、侍女を一人だけ連れてやって来た。


「ゆっくりお話しするのは初めてですわね。第一夫人のアリネアです。イリアがシャンベルでご迷惑をおかけしたとアンドレアス殿下から聞きました」


 会話はコルマ語である。

 そうですとも言えず、アリスは固まっていた。レオンは固まってはいないが黙っている。


「シンディーが旅行している間、たまたま私は里に戻っておりました。里で、私は熱を出しましてね。イリアが留守にしているのに気づきませんでした。私の不注意ですわ」


 アリスは(気づかない? 国と国を往復だけでも二週間かかるのに?)と思ったが「そうでしたか」とだけ返事をした。


「イリアは十五年間、私によく仕えてくれましたが、暇を出しました。もう誰にもご迷惑をかけることはありませんのでご安心ください」


 アリネアはそう告げるとお茶にも手をつけず、出ていった。


「どういうこと? 何をしにいらっしゃったのかしら。イリアを首にしたって、わざわざ言いにくる必要あった? 誰かに伝えさせれば済むことよね?」

「第一夫人は、本当は何を伝えたかったんだ?」


 アリスとレオンの疑問の答えはその夜、クレイン第二王子から伝えられた。


「シンディーから聞きました。アリス嬢はシンディーと間違われて酷い目に遭わされたそうですね。申し訳ない。もう、あなたにもシンディーにもこんなことは起きません」

「それは、イリアさんに暇を出したからですか?」


 暇を出しても危険人物には変わらないだろう、そもそも第一夫人は責任を取らないのか、とアリスは納得していない。

 クレイン王子は知的な顔に微笑みを浮かべた。


「イリアは暇を出されて実家に帰る途中、事故で亡くなりましたので、二度とご迷惑をかけることはないのです」


 アリスもレオンも言葉が出ない。それが事故ではないことくらい、アリスにだってわかる。


「妻のアリネアにとって、イリアは侍女でありながら姉のように頼りにしていた存在でした。さぞかしつらいだろうと慰めているところです」

「そうでしたか。それはお気の毒に」


 感情のこもらない声はレオンだ。アリスがチラリと見るとレオンの顔は声と同様、何の感情も浮かんでいなかった。

 クレイン第二王子が出て行き、部屋には二人だけになった。


「アリス、大丈夫か?」

「なんだか寒くて。南国なのに寒いなんて変ですね」


 レオンは向かい合って座っていたが、アリスが座っていたソファーに自分が座ってアリスを横向きに膝に乗せた。


「ち、近すぎるのでは?」

「もうすぐ俺たちも結婚するんだ。このくらいいいさ。それにしても恐ろしい話だったな」


 アリスはレオンの肩に顔をくっつけた。


「第一夫人のアリネア様もクレイン第二王子も怖い人でしたね」

「そうだね」

「偉い人はどこの国でもあんな感じなんですか?」

「いいや、違う。少なくともうちの王女殿下はいい人だよ」

「そうですか。よかった」


 しばらく部屋は無音になった。


「全部忘れたほうがいい」

「はい」

「つらい時は俺を頼ってくれ」

「はい」

 

 レオンがアリスをギュッと抱きしめた。


「明日には出発して帰ろう」

「はい。おうちに帰りましょう」


 レオンはアリスを膝の上で抱えたまま話を続けていた。

 隣の部屋に控えていたリリーは、このままこの場に居ていいのか、それとも静かに廊下に出るべきか迷っていた。


「お屋敷に戻ったら侍女頭さんにどうすればいいか教えてもらわなくては」


 リリーは気配を消しつつそっと後ずさった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

5qe0c38vlojn53ykjavdbi657uaz_if4_ic_px_2jtu.jpg
 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ