鎖縛のサーカス
「いやぁ、君を取り逃したのは痛手だったよ。鎖縛のサーカスとしても、君は目玉商品だったから」
きゃらきゃらと笑いながら赤毛の男は歩き回る。
「鎖縛のサーカスとは如何なる組織だ? 答えろ」
ギルバードが剣をすらりと抜き出した。
「何々、自分の事は教えたくないけど、相手のことは知りたい~なんてアンフェアなんじゃない? 一つの質問には一つの問いを。はい、自己紹介どうぞ」
「オリバー・ブライアントだ」
「嘘つき」
赤毛の男が銃を撃つような真似をした。それに合わせて後ろに控えていた男の一人が銃でギルバードを撃ち抜いた。
「ギルさん!?」
ギルバードの胸からはおびただしい血が流れている。止血しようとアイリーンが駆け寄ろうとすると銃口がアイリーンに向けられる。
「それでは、お嬢さん、自己紹介して頂けますか?」
「……アイリーン・スタンフォードです」
「うん、お嬢さんにぴったりな美しい名前だね。僕はレギー。鎖縛のサーカスは異世界の魔獣を保護している慈善団体です。お客様のニーズに対応して様々な魔獣を召喚しつつ、封印を施してお渡しする。需要と供給ってやつだね」
「この小鳥たちが目的でモーリアンを呼び出したというわけですね?」
「そう。モーリアンもその手の人たちには需要はあるんだけど、それより綺麗な羽根と美しい声を持つ幼鳥の方が高く売れそうだなって。へへ、これはお嬢さんが可愛いからサービスね」
さてとレギーはスキンヘッドの男に声をかけた。
「そろそろ仕事をしますか。モーリアン、子供たちを呼び出してくれるかい?」
「貴様の指図など受けるわけがなかろう……! 下郎め」
「いいのかな、そんな口叩いて。封印が、ほら、足ちぎれちゃうよ?」
モーリアンが膝をついた。鉄の輪が鈍く光り、モーリアンを痛めつける。
「悲鳴一つあげないなんて、流石だね~。でもやせ我慢はおススメしないよ?」
アイリーンは後ろ手に魔導書とペンを持ちながら、オスカーに尋ねた。
「オスカー、一瞬時間を稼げますか?」
「もちろんだとも、魔女よ」
「それじゃあ三人は幼鳥の回収をして。シャキシャキ働こうね! モーリアンは戦の勝敗を支配するって伝承だったね。ギャンブラーに売ったら大儲けだぞ。名前は『愛吟鳥』とでも呼ぼうかな」
レギーの言葉に二人の男が弓を構える。弓矢は真っすぐ銀色の小鳥を射抜く。
「出来る限り、傷付けないようにね~」
スキンヘッドの男が小鳥を受け止めて、鳥籠に入れていく。モーリアンは歯を食いしばって、苦痛と屈辱に耐えている。
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次回「反撃」をどうぞよろしくお願いします。




