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孤独な日々

両親の葬儀の後、身寄りの無かったアイリーンは孤児院に身を寄せた。そこでの暮らしは森の家の静かで穏やかで満ち足りた生活とは何もかも変わってしまった。粗末な食事に、固く冷たいベッド、それに騒がしい子供たちの声が始終響いていた。物静かで、引っ込み思案のアイリーンはその一つ一つに委縮し、それは周囲のいじめっこたちの格好の標的になった。特にアイリーンが文字を書けないとわかるといじめっこたちはここぞとばかりに馬鹿にした。


「おまえ、そんなに本読んでるのに文字も書けないなんて、どっかおかしいんじゃねぇの?」

「本だって読んでるふりだろ。嘘つきにはこんな本いらないよな」

「返して!」


アイリーンの叫びも虚しく、本を取り上げられた。


「やめて!」


少年たちはアイリーンの持っていた本をとりあげて、びりびりに破いてしまった。それは両親が最後にアイリーンにプレゼントしてくれた本だった。アイリーンは目に涙をいっぱい溜めてボロボロになった本のかけらを一生懸命集めた。一枚ずつ集める度に両親のことを想い出して涙が流れた。そして、その夜こっそりとノートに『本よ、元に戻れ』と書くと、本は元の姿を現した。それからアイリーンは迷いながらも、さらに一行言葉を足した。

 

 翌日、孤児院の皆で募金活動に出かけた。その場所は奇しくもアイリーンの両親が事故現場だった。アイリーンが真っ暗な気持ちで募金箱を抱えて俯いていると声をかけられた。


「もしかして、君はストウナーさんのところの娘さんじゃありませんか?」

アイリーンはハッとして頭を上げた。そこには茶髪の優しそうな男性が立っていた。


「本屋の店主さん……」

「やっぱり、アイリーンちゃんじゃないか! どうして孤児院にいるんだい?」

「両親が事故に遭って、死にました。それでこちらにお世話になってます」

「ストウナーさんたちが事故で? それは辛かったね。ちょっと孤児院の先生とお話してくるから」


そういうと男性は孤児院の先生の元に歩み寄っていった。


お読みいただきありがとうございます。


次回「救いの手」をどうぞよろしくお願いします。

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